カレント
2014.05.12
実は、これまでの再検討会議はほとんどすべてが似たり寄ったりであり、実質的な進展があったのはわずかに1995年と2000年の2回くらいに過ぎない。こう言うと、一生懸命核軍縮を進めようとしている人たちから異論が出るかもしれない。私自身も2005年の再検討会議で日本政府の代表の一人として努力したつもりであったが、気持ちの問題と客観的にどうなったかは区別しなければならない。その時も核軍縮は進まなかった。
またその翌年には北朝鮮が初めて核実験を行なった。NPTの主要な目的は核の拡散、つまり、非核兵器国が核兵器を取得したり、実験したりするのを防止することにあるのだが、北朝鮮はそれを無視し、核兵器を開発・実験したのである。
今回の準備委員会においてはウクライナ問題が注目を集めた。クリミアの独立をめぐって、ウクライナを支持する人のなかには、ソ連邦が解体した際、ウクライナが核を放棄したことは誤りであり、もし現在でも核兵器を保持していればロシアといえどもウクライナに兵力を送り込むことなどできなかったという意見があるが、このような意見にはあまり説得力はない。
問題はそれより、ウクライナが核を放棄し、NPTに加盟するに際して、ロシア、米および英の3ヵ国が、ウクライナの独立と主権を尊重し、ウクライナに対して武力の行使や脅威をしないことを合意していた(ブダペスト覚書)のにロシアが違反したことであった。もっともこれは米欧諸国が主張したことで、ロシアは反論していたが、客観的にはロシアに分はなかった。
今次準備委員会では、中央アジア非核兵器地帯条約に米ロ英仏中の核兵器国が署名したことが発表された。「非核兵器地帯」とは世界的な核廃絶が実現するまでの間、部分的に核兵器のない地域を増やしていこうとするもので、中央アジア非核兵器地帯条約によりカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタンおよびウズベキスタンの6カ国から核をなくすことになる。これらの国に現在核兵器があるという意味でなく、将来も保有、取得、開発などをしないという約束をしたことに意義がある。中央アジア非核兵器地帯条約は長い経緯を経て作成され、今回核兵器国がそれを支持することになったのであり、非核兵器地帯条約には核兵器国の支持が必要であるが、実際には支持していない条約もある。
中央アジア非核兵器地帯条約にウクライナは含まれていないが、将来はウクライナの加盟問題が出てくるかもしれない。
今次委員会のもう一つの注目点は、米ロ英仏中の核兵器国が初めて核軍縮の報告書を発表したことであり、核兵器国は非核兵器国から核軍縮の取り組みが弱いと批判されがちなので、核兵器国として一方的に報告書を発表することで批判を和らげる意図があったのであろう。
米英仏はそれぞれの保有核弾頭数を発表したが、ロシアと中国は発表しなかった。とくに中国は、軍事力に対する透明性が低いことは以前から指摘されていたが、今回もそのような姿勢は改善されなかった。
米国が発表したのは2013年9月時点での4804発であったところ、NGOのなかには、米国の保有核弾頭数を4650発と推計していたものもあった。国務省は、冷戦下のピーク時の3万1,255発(1967年)から85%の削減になると発表しており、FAS(Federation of American Scientists)はこの85%削減という数字から4,650発という数字を推計していた。これを比較的正確と見るか、不正確と見るかは考え方次第であるが、核問題を専門にフォローしているNGOの推計はかなり正確である。
米国政府が前回発表した時(2010年)には、前年の9月で5113発だったので、これより309発削減していたわけである。
核不拡散条約の準備委員会
5年に1回のNPT(核不拡散条約)再検討会議は2015年に開かれる。このための準備委員会第3回会議がさる5月9日閉幕したが、来年の会議に向けての勧告は合意されなかった。再検討会議は議題が多く、約1か月も開催される大会議なので準備が必要であり、5年の間に3回も準備委員会が開かれるのだが、核兵器国と非核兵器国との隔たりが大きすぎるため大事な勧告であるが、合意できなかった。実は、これまでの再検討会議はほとんどすべてが似たり寄ったりであり、実質的な進展があったのはわずかに1995年と2000年の2回くらいに過ぎない。こう言うと、一生懸命核軍縮を進めようとしている人たちから異論が出るかもしれない。私自身も2005年の再検討会議で日本政府の代表の一人として努力したつもりであったが、気持ちの問題と客観的にどうなったかは区別しなければならない。その時も核軍縮は進まなかった。
またその翌年には北朝鮮が初めて核実験を行なった。NPTの主要な目的は核の拡散、つまり、非核兵器国が核兵器を取得したり、実験したりするのを防止することにあるのだが、北朝鮮はそれを無視し、核兵器を開発・実験したのである。
今回の準備委員会においてはウクライナ問題が注目を集めた。クリミアの独立をめぐって、ウクライナを支持する人のなかには、ソ連邦が解体した際、ウクライナが核を放棄したことは誤りであり、もし現在でも核兵器を保持していればロシアといえどもウクライナに兵力を送り込むことなどできなかったという意見があるが、このような意見にはあまり説得力はない。
問題はそれより、ウクライナが核を放棄し、NPTに加盟するに際して、ロシア、米および英の3ヵ国が、ウクライナの独立と主権を尊重し、ウクライナに対して武力の行使や脅威をしないことを合意していた(ブダペスト覚書)のにロシアが違反したことであった。もっともこれは米欧諸国が主張したことで、ロシアは反論していたが、客観的にはロシアに分はなかった。
今次準備委員会では、中央アジア非核兵器地帯条約に米ロ英仏中の核兵器国が署名したことが発表された。「非核兵器地帯」とは世界的な核廃絶が実現するまでの間、部分的に核兵器のない地域を増やしていこうとするもので、中央アジア非核兵器地帯条約によりカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタンおよびウズベキスタンの6カ国から核をなくすことになる。これらの国に現在核兵器があるという意味でなく、将来も保有、取得、開発などをしないという約束をしたことに意義がある。中央アジア非核兵器地帯条約は長い経緯を経て作成され、今回核兵器国がそれを支持することになったのであり、非核兵器地帯条約には核兵器国の支持が必要であるが、実際には支持していない条約もある。
中央アジア非核兵器地帯条約にウクライナは含まれていないが、将来はウクライナの加盟問題が出てくるかもしれない。
今次委員会のもう一つの注目点は、米ロ英仏中の核兵器国が初めて核軍縮の報告書を発表したことであり、核兵器国は非核兵器国から核軍縮の取り組みが弱いと批判されがちなので、核兵器国として一方的に報告書を発表することで批判を和らげる意図があったのであろう。
米英仏はそれぞれの保有核弾頭数を発表したが、ロシアと中国は発表しなかった。とくに中国は、軍事力に対する透明性が低いことは以前から指摘されていたが、今回もそのような姿勢は改善されなかった。
米国が発表したのは2013年9月時点での4804発であったところ、NGOのなかには、米国の保有核弾頭数を4650発と推計していたものもあった。国務省は、冷戦下のピーク時の3万1,255発(1967年)から85%の削減になると発表しており、FAS(Federation of American Scientists)はこの85%削減という数字から4,650発という数字を推計していた。これを比較的正確と見るか、不正確と見るかは考え方次第であるが、核問題を専門にフォローしているNGOの推計はかなり正確である。
米国政府が前回発表した時(2010年)には、前年の9月で5113発だったので、これより309発削減していたわけである。
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