中国
2021.03.24
訪台を計画しているのは、上院議員約20人が参加する「台湾交流・研究グループ」。関係者によると、訪台は今夏の予定。グループ代表のリシャール議員は社会党出身で国防相などを務めた。現在は、マクロン大統領の与党「共和国前進」に属している。
これに関し、仏外務省は3月17日、「フランスの国会議員は、自由に訪問先や会談計画を決められる」として、いったんは不介入の方針を示した。
しかし、中国外交の研究者アントワーヌ・ボンダズ氏が自身のツイッターで、フランスの上院議員団の台湾訪問計画に抗議する中国大使館を批判したことをきっかけに両国間の緊張は高まった。
中国大使館は2月19日、大使館のアカウントでボンダズ氏のツイートを引用しながら「ごろつき」と書き込み、さらに「我々を『戦狼(せんろう)』と人が呼ぶのなら、それは研究者やマスコミという『狂ったハイエナ』が多すぎるからだろう」などと攻撃したのだ。
また訪台を計画中の上院議員に対しては、中国が対仏制裁に出る可能性があると示唆したという。
これは公の立場にある中国大使館としてあまりにも過激な言動である。フランスのルドリアン外相は22日、ツイッターで「フランスにおける中国大使館の発言や、選挙で選ばれた欧州の当局者や研究者、外交官に対する措置は許容できない」と批判し、盧沙野・駐仏大使を呼び出して抗議した。
最近、中国とEU諸国と間でもめ事が増えており、盧大使は2020年4月にも、新型コロナウイルスを巡り中国大使館が自国の対応を擁護し、西側諸国の対応を批判する投稿を行ったことを受けて仏外務省に呼び出されていた。
昨年8~9月、チェコの上院議員団が台湾を訪問した際も中国側は強く反発し、当時、欧州歴訪中だった中国の王毅外相が「高い代償を払わせる」と報復を示唆したことがあった。
中国がEU諸国と対立するのは、台湾・香港問題と新疆ウイグル自治区での人権侵害問題の二つが主要な原因である。ウイグル問題については3月22日、EUと英国、米国、カナダが中国政府当局者に対する制裁を発動し、これに反発した中国は先頭を切ったEUに対し直ちに対抗措置を取った。
また、中国と米国の間でも激しい摩擦が生じていることは周知のとおりである。トランプ政権時代、米国は中国と対立したが、EUとも関係はよくなかった。バイデン政権は中国に対してはやはり厳しい姿勢であるが、またその一方で、EUとの関係を修復している。中国は米国およびEUの双方と対立する形になってしまったのだ。
中国が米欧から制裁を受けたこと自体は過大に評価すべきでない。初めて制裁措置を受けたのは1989年の天安門事件の際であり、今や中国はその頃とは比較にならない強大な国に成長しており、制裁措置の影響は限定的であろう。また、中国はロシアとの友好関係を再確認するなど、反米欧保守勢力の結集も試みている。世界を見渡すと、民主化と人権問題に関し胸を張れる国の数は少数であり、中国を支持する国はかなりの数に上るはずであり、その意味では中国の立場は弱くない。しかし、中国の「わが道を行く」式の外交がはたして適切か、中国自身にとっても不利益となるのではないかと思われてならない。
仏議員団の台湾訪問
盧沙野・駐仏大使は、フランスのリシャール元国防相が率いる上院議員団が台湾を訪問するのは「一つの中国」に反するとしてさる2月、リシャール氏に抗議し、抗議文を発表した。訪台を計画しているのは、上院議員約20人が参加する「台湾交流・研究グループ」。関係者によると、訪台は今夏の予定。グループ代表のリシャール議員は社会党出身で国防相などを務めた。現在は、マクロン大統領の与党「共和国前進」に属している。
これに関し、仏外務省は3月17日、「フランスの国会議員は、自由に訪問先や会談計画を決められる」として、いったんは不介入の方針を示した。
しかし、中国外交の研究者アントワーヌ・ボンダズ氏が自身のツイッターで、フランスの上院議員団の台湾訪問計画に抗議する中国大使館を批判したことをきっかけに両国間の緊張は高まった。
中国大使館は2月19日、大使館のアカウントでボンダズ氏のツイートを引用しながら「ごろつき」と書き込み、さらに「我々を『戦狼(せんろう)』と人が呼ぶのなら、それは研究者やマスコミという『狂ったハイエナ』が多すぎるからだろう」などと攻撃したのだ。
また訪台を計画中の上院議員に対しては、中国が対仏制裁に出る可能性があると示唆したという。
これは公の立場にある中国大使館としてあまりにも過激な言動である。フランスのルドリアン外相は22日、ツイッターで「フランスにおける中国大使館の発言や、選挙で選ばれた欧州の当局者や研究者、外交官に対する措置は許容できない」と批判し、盧沙野・駐仏大使を呼び出して抗議した。
最近、中国とEU諸国と間でもめ事が増えており、盧大使は2020年4月にも、新型コロナウイルスを巡り中国大使館が自国の対応を擁護し、西側諸国の対応を批判する投稿を行ったことを受けて仏外務省に呼び出されていた。
昨年8~9月、チェコの上院議員団が台湾を訪問した際も中国側は強く反発し、当時、欧州歴訪中だった中国の王毅外相が「高い代償を払わせる」と報復を示唆したことがあった。
中国がEU諸国と対立するのは、台湾・香港問題と新疆ウイグル自治区での人権侵害問題の二つが主要な原因である。ウイグル問題については3月22日、EUと英国、米国、カナダが中国政府当局者に対する制裁を発動し、これに反発した中国は先頭を切ったEUに対し直ちに対抗措置を取った。
また、中国と米国の間でも激しい摩擦が生じていることは周知のとおりである。トランプ政権時代、米国は中国と対立したが、EUとも関係はよくなかった。バイデン政権は中国に対してはやはり厳しい姿勢であるが、またその一方で、EUとの関係を修復している。中国は米国およびEUの双方と対立する形になってしまったのだ。
中国が米欧から制裁を受けたこと自体は過大に評価すべきでない。初めて制裁措置を受けたのは1989年の天安門事件の際であり、今や中国はその頃とは比較にならない強大な国に成長しており、制裁措置の影響は限定的であろう。また、中国はロシアとの友好関係を再確認するなど、反米欧保守勢力の結集も試みている。世界を見渡すと、民主化と人権問題に関し胸を張れる国の数は少数であり、中国を支持する国はかなりの数に上るはずであり、その意味では中国の立場は弱くない。しかし、中国の「わが道を行く」式の外交がはたして適切か、中国自身にとっても不利益となるのではないかと思われてならない。
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