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2014.01.06

張成沢事件に見る金正恩と軍の関係

張成沢の粛清に関し、金正恩第1書記が主導したか、軍がそうさせたか。金正恩が年若く、経験が浅いだけに一人ですべて指導したとは常識的に考えにくいことからありがちな疑問であるが、軍の影響力が強いことを示す材料は比較的少ないと思われる。たとえば、12月25日発行のラジオプレス『北朝鮮政策動向』(No492)は、北朝鮮当局による同事件の発表ぶりおよび事件前後の諸事情を詳細に分析しており、軍の関係では次のような指摘(私の言葉で言い換えてある)を行なっている。
○今回の事件についての北朝鮮の発表は、金正恩の主導を強く印象付けるものである。同人の指導のもとで労働党が行動したことが強調される一方、軍が特別の役割を果たしたという説明は見られない。
○張成沢の罪状のなかに軍事に直接関係することは入っておらず、張成沢が軍の利益を害していたことを伺わせるような記述もなかった。軍としてとくに張成沢を不快視していたというわけではなさそうであった。
○張成沢は何人かの古参の軍人と親しかったと言われており、むしろ張成沢に続いて追求される可能性がある軍幹部がいるかもしれない。
○なぜ通常の裁判でなく、軍事裁判となったかよく分からない。張成沢は職業軍人ではないが、国防委員会副委員長であり、また「大将」の肩書を持っていた関係では軍事裁判となったことは不思議でないが、適用された法律は軍法でなく、一般の刑法であった。
○最高司令官、すなわち金正恩の命令に服従しなかったことを指摘しているが、同時に労働党の方針のそむいたこともあげている。
○今回の発表は「先軍」にも、また、2013年の春から言い始めた「核開発と経済建設」の「並進」路線にも触れていない。一方9月、10月の北朝鮮メディアは経済建設重視を強調していた。
○張成沢と関係が深い朴奉珠首相は無事に残っている。一時期うわさされていたように張成沢の累が広く及んだ形跡はない。北朝鮮当局はむしろ抑制しようとしている節もある。
○崔竜海軍総政治部長の存在感が増しているのは事実であるが、つねに金正恩第1書記をたたえる発言を行なっている。今回どういう役割を果たしたか、検証が必要であろう。

金正恩第1書記と軍の関係については、以上の他、高級軍人の人事を異常なほど頻繁に行ない、また2年の間に総参謀長を3回代えたことなども注目する必要があることを付言しておく。


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