中国
2017.12.05
また、同大会では習近平総書記の権威が高められ、改正された党規約の総則に「習近平強軍思想」が記載された。習氏の権威を高めることは今次党大会全体を通じる特徴であるが、軍においても習近平総書記の指導体制が顕著に強化されたのであった。
習氏が示した国防の基本方針は「十六文字方針」と呼ばれている。その内容は、党の指導性の強化、軍事力の強化、科学技術力の向上および法に基づく統治、と全面的なものであるが、このような形で示された国防方針から見えてくることは多くない。
しかし、中国軍が抱える弱点はすでに明らかになっている。まず、去る8月の、現役の総参謀長の拘束である。中国の総参謀長は、日本では統合幕僚長、米国では統合参謀本部議長であり、軍のトップである。このような人物が拘束されたことは中国が近代的な軍事建設を目指すようになって以来なかったことであり、国際的に比較するまでもなく中国軍の権威を著しく失墜させる醜聞であった。
習近平主席は、それ以前に中央軍事委員会の副主席であった郭伯雄・徐才厚の両氏を失脚させていた。これら両人は反腐敗運動の標的としては大物(虎)とみなされていたが、胡錦涛主席時代の副主席であり、習近平政権では現役でなかった。これらの者が訴追されたからといってただちに中国軍の規律全体が問われることはなかった。
房峰輝の失脚には、また、権力闘争の面があった。房峰輝は、胡錦濤主席が任期を終える直前の2012年10月に、次の主席となる習近平に断りなく総参謀長に任命したのであり、郭伯雄・徐才厚の両副主席が引退した後の胡錦濤系の代表と見られていた。
しかるに、習氏はこの人物を排除するのに5年近くかかったのである。房峰輝は胡錦濤の代表であることもさることながら、軍人の代表でもあった。習近平といえども、簡単に排除できなかったのは理解に難くない。
房峰輝はすでに拘束されており、中国の常識では同人が失脚することは間違いない。そして第19回党大会となったのだが、房峰輝の系列の人物は軍内にまだかなり(多数?)残っているようだ。そのことを示唆するのが、房峰輝の腹心の部下である中央軍事委員会政治工作部元主任の張陽が11月23日、自殺したことであった。つまり、軍内には房峰輝の拘束に関係する緊張が残っているのである。
軍内で反腐敗運動を進める機関である「中央軍事委員会規律検査委員会」は第19回党大会で中央軍事委員会の直属機関として格上げされた。旧制度では、規律検査委員会は政治工作の一部としての位置づけしか与えられていなかったので、大幅な格上げであった。
その理由は、今後も軍内で反腐敗運動を、また、表には出ないが権力闘争を強力に進めていかなければならないからであろう。今次党大会までに習近平主席が行った人事異動は近年まれにみる大規模なものであったが、習氏が問題と考える軍人を排除し去るにはまだ遠い道のりが残っているのである。中国軍の兵員数は、削減計画が2017年末に完了すると約200万人となる。これだけの規模の軍内に房峰輝が築いてきた人脈が多数残っているのは何ら不思議でない。
軍の改革は2020年までに完了するというのが当初からの目標である。その達成に向けて今後も努力が続けられるであろうが、権力や利権と結びついた中国軍を浄化できるか、常識的には考えられないような事態が今後も発生するのではないかと思われる。
中国軍内の権力闘争
中国軍内の権力闘争は、さる8月の現役総参謀長、房峰輝の拘束により大勢が決し、習近平総書記は10月の中国共産党第19回大会で、軍の最高権威である中央軍事委員会の改編、全国における軍の編成替え、大幅な人事異動など改革の成果を誇り、同時に軍における共産党による指導の強化を強調した。また、同大会では習近平総書記の権威が高められ、改正された党規約の総則に「習近平強軍思想」が記載された。習氏の権威を高めることは今次党大会全体を通じる特徴であるが、軍においても習近平総書記の指導体制が顕著に強化されたのであった。
習氏が示した国防の基本方針は「十六文字方針」と呼ばれている。その内容は、党の指導性の強化、軍事力の強化、科学技術力の向上および法に基づく統治、と全面的なものであるが、このような形で示された国防方針から見えてくることは多くない。
しかし、中国軍が抱える弱点はすでに明らかになっている。まず、去る8月の、現役の総参謀長の拘束である。中国の総参謀長は、日本では統合幕僚長、米国では統合参謀本部議長であり、軍のトップである。このような人物が拘束されたことは中国が近代的な軍事建設を目指すようになって以来なかったことであり、国際的に比較するまでもなく中国軍の権威を著しく失墜させる醜聞であった。
習近平主席は、それ以前に中央軍事委員会の副主席であった郭伯雄・徐才厚の両氏を失脚させていた。これら両人は反腐敗運動の標的としては大物(虎)とみなされていたが、胡錦涛主席時代の副主席であり、習近平政権では現役でなかった。これらの者が訴追されたからといってただちに中国軍の規律全体が問われることはなかった。
房峰輝の失脚には、また、権力闘争の面があった。房峰輝は、胡錦濤主席が任期を終える直前の2012年10月に、次の主席となる習近平に断りなく総参謀長に任命したのであり、郭伯雄・徐才厚の両副主席が引退した後の胡錦濤系の代表と見られていた。
しかるに、習氏はこの人物を排除するのに5年近くかかったのである。房峰輝は胡錦濤の代表であることもさることながら、軍人の代表でもあった。習近平といえども、簡単に排除できなかったのは理解に難くない。
房峰輝はすでに拘束されており、中国の常識では同人が失脚することは間違いない。そして第19回党大会となったのだが、房峰輝の系列の人物は軍内にまだかなり(多数?)残っているようだ。そのことを示唆するのが、房峰輝の腹心の部下である中央軍事委員会政治工作部元主任の張陽が11月23日、自殺したことであった。つまり、軍内には房峰輝の拘束に関係する緊張が残っているのである。
軍内で反腐敗運動を進める機関である「中央軍事委員会規律検査委員会」は第19回党大会で中央軍事委員会の直属機関として格上げされた。旧制度では、規律検査委員会は政治工作の一部としての位置づけしか与えられていなかったので、大幅な格上げであった。
その理由は、今後も軍内で反腐敗運動を、また、表には出ないが権力闘争を強力に進めていかなければならないからであろう。今次党大会までに習近平主席が行った人事異動は近年まれにみる大規模なものであったが、習氏が問題と考える軍人を排除し去るにはまだ遠い道のりが残っているのである。中国軍の兵員数は、削減計画が2017年末に完了すると約200万人となる。これだけの規模の軍内に房峰輝が築いてきた人脈が多数残っているのは何ら不思議でない。
軍の改革は2020年までに完了するというのが当初からの目標である。その達成に向けて今後も努力が続けられるであろうが、権力や利権と結びついた中国軍を浄化できるか、常識的には考えられないような事態が今後も発生するのではないかと思われる。
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