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2016.06.06

(短評)アジア安全保障会議(シャングリラ対話)

 恒例のアジア安全保障会議が6月3~5日、シンガポールで開催された。英国の国際戦略研究所(IISS)が主催しており、中国軍の高官と安全保障について意見交換できる場として貴重である。中国軍の実情については透明性が低く、また日本も含め各国の安全保障関係者との接触・交流は少ないからだ。
 この会議には軍と政府の関係者以外にもメディア、研究者などが多数参加し、全体の参加者数は数百人にのぼる。
 アジアの安全保障が会議のテーマであるが、実際には半分くらいが中国に関する話題である。今年の会議では昨年にも増して南シナ海での中国の行動に関心が集中し、カーター米国防長官は、中国の南シナ海での行動は「みずからの孤立を招き、孤立の長城を築くことになるだろう」と警告を発した。
 これに対し、中国の代表である孫建国・中央軍事委連合参謀部副参謀長(海軍上将)は、中国は孤立していないと反論した。
 また、フィリピンが申し立てている仲裁裁判について、孫副参謀長は「領土主権の問題は海洋法条約の範囲外である。フィリピンの一方的な仲裁申し立ては国際法違反で、中国は受け入れない」と中国の立場を繰り返した。
 この会議はよく「中国対その他の代表」という構図になり、多くの出席者が中国の行動について疑問を呈し、中国からの参加者が反駁するのだが、見方によっては、中国は被告人席に立たされることになる。
 しかし、中国としてもアジア安全保障会議にメリットを感じているのであろう。この会議が中国軍のPRになるとは思えないが、中国のいないところで中国が批判されるのは困るという考えはあるだろう。

 この会議と踵を接して6日から北京で、「米中戦略経済対話」が行われる。これは米中両国の政府間会議で、議題の半分は安全保障であり、当然南シナ海の問題が注目されるが、米側からはケリー国務長官とルー財務長官が出席し、カーター国防長官は出席しない。中国側は楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と汪洋(ワンヤン)副首相が出席する。昨年もおなじ顔ぶれであった。この対話に両国の軍のトップが出席しないことに特別の意味はないらしい。

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