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2014.12.18

国際関係・慰安婦問題・ナショナリズム

12月17日、ある講演会で次の趣旨を発言した。

大きな着眼点が3つある。
第1は、先の大戦の処理。
第2は、冷戦の終了
第3は、国際関係が構造的に変化し、個人、NGOなど非国家主体の役割が増大していること。

それぞれが大きなテーマである。慰安婦問題を例として取り上げる。この問題は特殊なケースという印象が一般に持たれているが、この3つに深くかかわっており、典型的な国際問題である。

戦争の中で生じた問題であることは誰でも知っている。
冷戦の終了後、女性や子供の権利擁護についての関心が高くなった。冷戦中も取り組まれていたが、冷戦が終了した後は一段と強くなった。女性の権利を擁護する運動の中で慰安婦問題に光が当てられるようになった。このことに対する認識が日本では著しく低い。
慰安婦問題を含め、戦争中に発生した請求権の問題は政府間で処理される。法的にはこれで解決されるが、それでは満足しない人が関係国に請求するケースが増えている。3つ目の観点である。政府は「法的には決着済み」と言っても納得しない。韓国政府を見ていると、被害者から突き上げられるのを恐れ、日本政府との関係で責任ある態度を取れないことが多くなっているのではないか。

慰安婦問題について日本政府がアジア女性基金を立ち上げ、協力していることに批判的な人たちは、慰安婦問題にこの3つの大きな側面があることを理解していない。日本が悪く言われたり、日本軍の名誉を傷つけられたりしたと言って反対する。単純な発想であり、視野が狭い。

韓国や中国では日本の対応がよくないと言って世論が硬化し、日本を批判する。しかし、下手をすれば日本もそのために感情を害され、反発する。昨年末安倍首相が靖国神社を参拝した。このことについて新聞社が世論調査を行なった。その結果、かなりの数の人が靖国参拝を支持した。とくに若者の間では支持率が高く、6割以上に上った。若者は中韓の批判に辟易しており、それが彼らの気持ちとなって現れる。しかし、彼らは3百万の日本人が犠牲となったことや、そのような戦争を指導した人たちに責任があるのではないかと質問すると、それには同意する。彼らは戦争責任について考える力がある。

中韓両国と日本の間でナショナリズムがいたずらに相手方を刺激すると関係が悪化する。ナショナリズムは心地よいが危険である。慰安婦問題であれ、靖国参拝であれ、国民生活に関係の深い問題だけにナショナリズムを刺激しやすい。日本はもちろん中韓両国もナショナリズムが燃え上がらないよう慎重に対処する必要がある。

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