平和外交研究所

6月, 2014 - 平和外交研究所 - Page 4

2014.06.19

中国軍の腐敗と規律

6月18日の「中国軍網」サイトは中国軍内でも腐敗がなお問題であることを示唆する論評を流した。人民解放軍は歴史的に「清廉」を重視してきたことを強調しつつ、次のように論じている
「軍隊の腐敗はもっとも危険なものである。軍隊が腐敗を容認すれば、失敗を容認することになる。戦争に負けた結果について歴史は血の涙で語ってきた。腐敗が原因で敗れた軍隊は永遠に恥辱の柱に打ちつけられるであろう(注 日清戦争で清国が惨敗したことなどを指すのであろう)」
「中国人民解放軍は中国共産党が作り出し、指導してきた。全身全霊で人民に奉仕することを旨としてきた。創立以来、腐敗に対して零容認であった」
「第18回党大会以来、党中央、中央軍事委員会および習近平主席は厳格に軍を管理し、腐敗撲滅に力を入れ、「虎もハエもたたく」方針を実行し、谷俊山人民解放軍総後勤部前副部長(注 中央官庁の次官級)を逮捕する一方、腐敗反対の計画をしっかり立て、作風を改め制度を厳格に実施し、腐敗を生む土壌の除去に努めてきた。飲酒と奢侈を厳禁する「軍十条」を定め、車を買い替える場合には国産車を購入することとするなど作風と行動の改善を頻繁に実施してきた。この間、不合理な住宅(注 幹部が地位を利用して住宅を買い占めることなどを指すものと思われる)をなくし、公用車を減らし、会議を減らし、行政にともなう支出を大幅に減少させてきた、、、(、、、は原文通り。ここにあげたいくつかのことはいずれも習近平が力を入れてきたことである)。
軍隊巡視制度を開始し、財務制度を規範化し(注 以前はルールなく財務処理をしていたことを示唆している)、監査制度を改善するなど権力の横暴を制約する仕組みを強化した、、、
山が高くても恐れてはならない。我々は現在懸命に登っている。道が遠くても恐れてはならない。我々は現在前進している」
「腐敗したものをつまみだせば軍はさらに純潔になり、強くなる。軍隊内に腐敗分子が隠れるところを残してはならない」

以上が「中国軍網」の主要な指摘である。人民解放軍は、内戦時代は国民党軍が腐敗していたことと比べ清潔であったというのが定説であり、また中華人民共和国成立後はあらたに軍内の士気と規律の向上のため種々の働きかけが行なわれてきた。1960年代の初期に毛沢東が「雷峰同志に学ぼう」と呼びかけ、自己犠牲の精神を称揚したのは有名な故事である。
世界有数の軍事大国となった現在、中国軍人は戦闘能力が高いという印象を持たれているが、その一方でこのような腐敗の問題が根強く存在している。中国軍の透明性がきわめてひくいことに基本的な問題があるが、中国の兵士も他国とそう変わらないと思わせる事実も散見される。
中国初の空母「遼寧」が就役した時、空母内での規律が定められた。そのなかに男女の兵士が、公務以外で同じ場所に居てはならないという規則も設けられた。軍当局は、米国の空母の規則を参考に作ったと説明していた。男女の規律については米軍に倣ったと言わんばかりであったが、奇妙な説明であることは否めなかった。これは余談だが、日中国交正常化以前、日本の覚書貿易事務所の図書室内でも男女の従業員が抱き合っているのが目撃されていた。
また、ごく最近、軍事演習の時に、最近の若い解放軍兵士のなかには音楽を聞きながら参加している者がいると解放軍の機関紙『解放軍報』が嘆いたこともあった。

2014.06.18

高所得中国人の海外逃避傾向

「国泰君安証券」(中国の巨大証券会社)CEOの陳耿はいわゆる「裸官」状態(家族は海外に居住し、本人は一人中国内にとどまっているが、いつでも海外へ逃避しそうな状態)になっていたところ、結局辞職して海外へ出国することになったというニュースが流れ、中国で話題になった。
この件に関連して、6月12日、「心路独舞-捜狐博客」は高所得者の海外逃避を嘆かわしい傾向としつつ、次のように評論している。
2013年の国連移民報告によれば、中国の移民数は930万人に上り、インド、メキシコ、ロシアの次である。また、2014年1月の「フージワーフ」報告(英国人の公認会計士ルパート・フージワーフがまとめた中国富豪ランキング)は、中国から高所得者の出国が増加している理由として次のような統計を示している。この調査は2014年3~4月、高所得者141名を対象に行なった結果である。数字はすべて%
(出国の理由)
教育21 汚染20 食品安全19 社会福祉15 医療11 資産管理8 計画出産4
(出国先)
米国52 カナダ21 オーストラリア9 欧州7 NZ4 シンガポール3 香港2 日本1

2014.06.17

習近平の軍事思想

南シナ海、とくに西沙諸島海域における中国の最近の行動は、軍が前面に出てきていることであるという評論に続いて、『多維新聞』は6月13日に次のような論評を加えている。真偽のほどは確認できないが、参考になる。

第18回党大会以後、南シナ海での中国軍の行動は以前と異なってきている。2013年8月に中国とフィリピンがセカンド・トマス礁で対峙した際、中国は護衛艦と補給艦を1隻ずつ派遣した。今年の5月、フィリピンが内外の新聞記者を招待して同礁の状況を視察させた際、中国の船舶は5隻あり、うち1隻は調査船、1隻は護衛艦、3隻は海警の船であった。そして今回の西沙諸島海域での軍艦の出動である。
党大会以前の2012年4月にスカーボロー礁でフィリピンと対峙した時は、中国は軍艦を1隻も出さなかった。その前の2011年6月にベトナムとの矛盾が激化した際も軍艦は派遣しなかった。
今回西沙諸島への軍艦の派遣と並行して、総参謀長の房峰輝は米国で、外部勢力の干渉は排除する、祖先から受け継いだ土地は寸土といえども防衛するなどと発言し、また、常万全国防部長はベトナムの国防部長に対して一度ならず何度も過ちを犯してはならない、大事に至ると警告するなど強気の姿勢を示した。
第18回党大会後習近平が取った戦略は前任の胡錦濤と明確に違うものである。中央宣伝部に属する理論雑誌『学習時報』の2013年2月号は、次のように述べている。
「新しい歴史条件の下での中国の安全について言えば、全面戦争の可能性は排除してよい。しかし、局部戦争ないし武力衝突が起こる危険性は排除できない。可能性が最も大きいのはある種の危機がより大きな問題に発展することである。」
中国は軍事戦略の重点を南シナ海、または東シナ海での局部的勃発においており、かつ、ベトナムとは戦火を交える可能性を完全には排除していない。
このような中国軍の新戦略は、2013年3月に李克強首相が政府活動報告において国防に関する考えを述べた際、2014年の軍事任務として「軍事戦略指導を強化し、現代的軍事力体系を完成し、日常的な戦備と国境での海空防衛のコントロールを強化する」と述べたことにも示されていた。
習近平は、軍事戦略配置を大幅に調整し、「行動する(有所作為)」から「積極的に行い、主導的に行う」ことに変えた。2012年12月、習近平は南シナ海の防衛視察のため訪れた広東軍区で、「必要あれば直ちに応じる(召之即来)、来れば戦う(来之能戦)、戦えば勝つ(戦之能勝)」ことを強調していた。その時戦闘機にも搭乗し、「主導的防御」のみならず、「主導的威嚇、主導的出撃」の姿勢を示した。

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