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中国

2015.07.03

米「国家軍事戦略」を中国はいかに報道したか

 7月1日、米統合参謀本部は4年ぶりに「国家軍事戦略」を発表した。中国については、ロシア、イラン、北朝鮮と並んでserious security concerns、すなわち「深刻な安全保障上の懸念」であるとの認識を述べている。前回2011年の戦略では中国の宇宙やサイバー、海洋活動などに「憂慮」を示しつつ、「中国と建設的、協力的、包括的な関係を追求する」としていたが、今回はより批判的なトーンである。
 一方、中国の新華社電7月1日付は、同報告が「ロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国を名指しで米国および全世界の安全に巨大な脅威となっている」と指摘しているとしつつ、別の文章で、同報告は「中国の軍事力は米国にとって「一定の脅威」となっていると解説している。また、「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる(原文は「支持」)」と記載している。
 しかし、同報告の原文は、中国とロシア、イランおよび北朝鮮の3カ国と中国をあたかも別のカテゴリーであるかのように扱っておらず、続けて、つまり中国は北朝鮮のすぐ後に記載している。
 新華社電が指摘している「中国が国際社会の安全を維持するために協力するパートナーとなることを望んでいる」は原文にもあるが、叙述の順序を入れ替えることにより全体を穏やかなトーンにしている。報告の原文は中国にとってもっときびしい内容であり、中国の行動を「アジア太平洋地域で緊張を高めている」「南シナ海のほぼ全域に対する領有権の主張は国際法に反している」「国際社会による問題を強制でなく、協調的に解決してほしいという要請にもかかわらず、中国は大胆に(aggressive)土地造成を行なった」などと述べている。
 同報告が中国を「一定の脅威」としているというのは事実でなく、新華社電の解釈に過ぎない。
 北朝鮮への言及のすぐ後に出てくる原文の中国関係部分は次のとおりである。
We support China’s rise and encourage it to become a partner for greater international security. However, China’s actions are adding tension to the Asia-Pacific region. For example, its claims to nearly the entire South China Sea are inconsistent with international law. The international community continues to call on China to settle such issues cooperatively and without coercion. China has responded with aggressive land reclamation efforts that will allow it to position military forces astride vital international sea lanes.
None of these nations are believed to be seeking direct military conflict with the United States or our allies. Nonetheless, they each pose serious security concerns which the international community is working to collectively address by way of common policies, shared messages, and coordinated action.
As part of that effort, we remain committed to engagement with all nations to communicate our values, promote transparency, and reduce the potential for miscalculation. Accordingly, we continue to invest in a substantial military-to-military relationship with China and we remain ready to engage Russia in areas of common interest, while urging both nations to settle their disputes peacefully and in accordance with international law.

 このように見てくれば、新華社電の報道が米統合参謀本部の「国家軍事戦略」をかなり歪曲しているのは明らかである。中国の国有通信社である新華社は中国国内向けにそうしたのであろうが、米国が中国に対する批判的姿勢を強めていることをぼやかして何の利益があるのだろうか。

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