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中国

2013.09.23

薄熙来裁判

薄熙来元重慶市党委書記に対し、済南市中級人民法院は9月22日、無期懲役の判決を下した。
薄元書記は収賄、横領および職権乱用の3つの罪に問われているが、判決自体はともかく、その判断の根拠となった事実関係についてはどうしても不明確さがぬぐえない。また、政治(党の指導)との関係も問題である。
第1に、中国の裁判は共産党の指導下にある。胡錦涛前党総書記も習近平現総書記も形式的には党のトップとして、また実質的には薄熙来の政治局員として地位と影響力にかんがみ、薄熙来の解任と裁判に承認を与えたことは明らかであるが、薄熙来の追求にどの程度積極的な役割を果たしたのか不明である。
第2に、薄熙来は、革命を重視し、特権を持たない人民のための施策に積極的であった(それだけでないのが問題であるが)ために一般の国民の間にかなりの支持者がある。習近平主席は経済建設と革命をそれぞれどの程度重視していくべきか、困難なかじ取りを迫られているが、薄熙来の裁判が二つの路線の微妙なバランスに影響を与える可能性はないか。
第3に、胡錦涛時代の政治局常務委員で政法(司法など)の担当であった周永康が現在腐敗撲滅運動の関係で追及されようとしている(と見られている)。腐敗はいつでもどこでもあり、司法の担当として責任を問われる危険はつねに存在するという意味ではむしろ日常的なことであるが、何らかの事情で、たとえば権力闘争の結果政治局内で支持を失えば、状況は一変する。責任を追及する材料など容易にみつけられる。薄熙来が周永康に頼っていたことも問題になりうる。もっとも、習近平も薄熙来の重慶における業績を積極的に評価していたが、支持者が多いので追及されない。
第4に、重慶市時代の側近であった王立軍元重慶市副市長(以前には公安の担当であった)が米国総領事館へ駆け込み、身の安全を訴えたことは否定も、ごまかしもできない事実として残っている。裁判で王立軍は証言したらしいが、何と言ったのか。王立軍の証言内容がほんとうに明らかになるのは、数年、あるいは十数年の時間が必要かもしれない。


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