平和外交研究所

ブログ

中国

2016.01.09

習近平主席の2本の鞭-その2言論統制

 2015年1月29日、中国教育部の座談会で袁貴仁教育部長は、「西側社会の価値観を広める教材を大学に入れてはならない。党の指導を誹謗する攻撃は決して許さない。社会主義を黒く塗りつぶす言論を大学に入れてはならない」などと発言した。これには、「そんなことを言えば、中国の大学は全部閉鎖しなければならない」などの反論が起こり、一種の言論戦となった。
 袁貴仁は、2009年、前教育部長の周済が、あと2年任期が残っていたが突然罷免された後、部長に就任した。周済の罷免の理由についてはさまざまな説があったが、いずれも決定的ではなかった。当時から教育界はスキャンダルと汚職が蔓延しており、ネットへの書き込みも盛んにおこなわれていた。
 ニューヨークに本部を置く中国語のテレビ局「新唐人」は「中共の官製メディアは2014年11月から、大学の教師を批判する報道を頻繁に出しています。今回の教育部長の発言は、大学でのある種の政治キャンペーンの始まりかもしれないとの見方も出ています」と報道していた。
 一方、人民日報などは1月19日に、党中央弁公庁、国務院弁公室が最近、「各大学の指導部は大胆に管理し処理すべきだ」とする通達を発出していたと報道していた。

 2月、中国の深刻な大気汚染問題(PM2.5)を告発するドキュメンタリー映画「穹頂之下(ドームの下)」を国営中国中央テレビ(CCTV)のニュースキャスターだった柴静が100万元(約1,900万円)を投じて自主制作し、インターネット上で公開した。わずか1日で中国本土での再生回数が1億5,500万回を超えるという注目を集めた。
 公開後数日で中央の指示により閲覧不能になってしまったが、YouTubeでは全編再生が可能だ。日本語字幕版も公開されている。

 2月、中国共産主義青年団(共青団)は「青年インターネット文明志願者」の募集を開始した。彼らには、「社会主義の核心的価値観」をインターネットで伝え、また、問題を発見すれば積極的に報告することが求められている。
 この工作は政府によるインターネット妨害である「五毛」と同じだと指摘されている。「青年インターネット文明志願者」は中央によるインターネットの監視・干渉を強化・拡大するものと考えられる。
 「志願者」と言っても、共青団の全国の各省市区県単位は、中央からの指示に従い、「志願者数を決める」ことが要求されており、また、志願者数は共青団員総数の20%を下回ってはならないと指示されている。これを見ると、実態は「志願者」ではなく「割り当て」に近いようだ。具体的な目標数は1050万3千人(明報4月7日付)。

 7月初め(?)、「中華人民共和国インターネット安全法」の草案が発表された。その目的は「インターネット空間の主権、国家安全、社会の公共の利益を擁護し(維護)、公民、法人およびその他の組織の合法的権益を保護する」ことだ。また、「社会の安全を脅かす突発事件の場合、省級政府は一定地区のインターネット通信を制限できる。違法な情報が流された場合は訂正もできる。違反した者に対しては20万元以下の罰金を科することができる」ことになっている。やはり規制色が強い法案だ。
 この法案について意見があれば、8月5日以前に提出することが求められていた。その後の経緯は不明だが、2016年の全人代で採択される可能性がある。

 「国家安全法」が採択されたのも7月初めであり、3日に全人代常務委員会で承認された。「新スパイ法」として日本で話題になった法律だ。1993年から施行されていた旧国家安全法は、2014年11月、「反間諜法」が制定されるに伴い廃止されていた。
 
 7月9日以降中国公安当局が、全国で人権派弁護士やその関係者30人以上を拘束したり、連行したりしたことが11日分かった(時事通信7月11日)。

 時間は若干さかのぼるが、6月末、創刊から24年、中国改革派の言論のとりでとなってきた雑誌『炎黄春秋』の楊継縄編集長が辞任した。楊継縄が辞任に際し同社幹部らに宛てた手紙では、「当局から海外メディアとの接触を禁じられている。今年掲載した86本の記事のうち、37本は事前検閲を受けるべきだったとする「警告書」を受け取った。また、宣伝部から編集長を辞めるよう圧力を受けた」などと書いたそうだ。この手紙は一部サイトに掲載された。
当面、編集長は杜導正社長が兼務するが、杜導正は90歳を超える高齢であり、実際の仕事は複数の編集者が交代で担う。
 
 9月中旬、『南方都市報』は一面真っ黒の紙面を作った。中央宣伝部の干渉に抗議するためだ。同紙の記者、劉偉は規律検査委員会により調査を受けていた。腐敗など個人的な問題と当局による言論統制とを区別するのは困難だ。

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.