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2019.01.23

政府の信用失墜

 1月13日付の共同通信は、12~13日に実施した全国電話世論調査によると、厚生労働省の「毎月勤労統計」の不適切調査問題を受け、政府統計を「信用できない」との回答は78.8%に上ったと報道した。
 2日前の11日、厚労省において不適切な統計が作られていたことを根本匠厚労相が認めた問題である。「毎月勤労統計」とは、賃金や労働時間の動向を把握するために行われている調査の結果をまとめたものであるが、調査は法令で定められている方法では行われず、手抜きで数字が集められていたという。厚労省はそのような不適切な調査が行われていたことを平成8年には把握しており、実情を調べていたというから驚きだ。

 共同通信の世論調査に現れた政府の統計に対する厳しい意見は、「毎月勤労統計」の不適切調査問題だけが原因でない。省庁による事実関係の隠ぺいや汚職が最近一層ひどくなっている。

 昨年の9月には、各省庁が障害者雇用の数を水増ししていたことが発覚した。法定雇用率を達成するためそういうことをしたのだと言われている。問題を起こしたのは33行政機関で、その中には、内閣官房、内閣府(宮内庁、公正取引委員会、消費者庁を含む)、総務省、法務省(公安調査庁を含む)、外務省、財務省(国税庁を含む)、厚生労働省、農林水産省(水産庁を含む)、経済産業省(特許庁を含む)、国土交通省(海上保安庁、観光庁、気象庁、運輸安全委員会を含む)、環境省、防衛省(防衛装備庁を含む)、人事院、会計検査院などが含まれていた。要するにほとんどすべての中央省庁がやっていたのである。

 問題を起こしたのは中央省庁に限らない。府県も37、また、政令指定都市は2都市同じことをしていた。「政令指定都市」とは日本全国で一番大きい都市から20番目までの大都市である。

 これでは国家機能はゆがめられる。まことに嘆かわしい事態である。各省庁は所管の問題について最もよく状況を把握しており、国民に対し提供する情報は正確でなければならない。役所は堅いとか、気が利かないとか言われるが、そんなことより各省庁がだれに対しても責任をもって、公平に接することが重要である。自己の利益のために数字をごまかしたり、改ざんすることなどもってのほかである。

 今回の統計調査に関して、厚労省では「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」と説明しているそうだが、そんな説明はナンセンスだ。「淡々と間違った方法で調査している」とか、「統計を改ざんする意図はなかった」など、よく言えたものだ。

 しかし、担当者や現場だけの責任でない。これだけの数の政府機関が同じような問題を起こしたのは偶然の結果ではありえない。文書では証拠が残っていないかもしれないが、手抜きで調査しても構わないということが政府機関内で共有されていたことは明らかであり、各省庁が責任を問われるべき問題である。

 政府や国会はこのようなことを防止しなければならないのに、みずから悪い手本を示したのではないか。実情をもっともよく知っている係官を在外勤務にして手が届かない状態にしたり、国会に改ざん文書を提出した高官を厳しく処罰していない。一時的には積極的に評価したことさえあった。政府はよく、「丁寧に説明する」というが、実際には事実関係の究明を妨害しているのではないか。「丁寧に対応している」と言い張るなら、その担当官を直ちに帰国させるべきだ。念のために記しておくが、その担当官を在外発令したのは、その人物の証言が必要とされているさなかであった。

 沖縄では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の賛否を問う県民投票(2月24日投開票)をめぐり、県内の一部自治体(宮古島、宜野湾、沖縄、石垣)の首長は「不参加」を表明したそうだ。この関連で自治体に投票を忌避するよう求めた文書があるという。そして、この文書には、自民党本部や官邸の意向が反映されているともいわれているそうだ。

 そんな噂を立てられては清廉潔白な自民党も迷惑であろう。早速徹底した調査を行うべきである。自民党を不利に陥れるフェイクニュースとは断固戦うべきであるが、ただ否定するだけではとても信じてもらえない。

 ともかく、政府も国会も各省庁も、与党も野党も、「全国民の8割近くが信用できないと回答している」ことの重みをよくかみしめるべきだ。抽象論、一般論、単純な否定でなんとか乗り切れると考えるのは大間違いだ。日本の将来を危うするその場しのぎの対応は即刻辞めてほしい。

2019.01.21

外交文書の公開

昨年末行われた外交文書の公開について一文をTHE PAGEに寄稿しました。

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2019.01.15

「北方領土問題は第二次大戦の結果」と言うが

 1月14日、モスクワで行われた日ロ両国の外相による平和条約交渉において、ラブロフ・ロシア外相は冒頭、「問題は第二次世界大戦から引き継がれた」と語ったという。これまでの、「(北方四島は)第二次世界大戦の結果としてはロシアの領土の一部になった」との主張を維持する考えであると受け取られている。
 しかるに、「第2次大戦」の結果とは具体的にどういうことか明確にしておく必要がある。

 日本の領土は、第二次大戦の結果、連合国によって再画定されることとなった。1945年8月14日、日本が受諾したポツダム宣言は、米英中ソの4ヵ国(宣言を発出した時点では米英中の3ヵ国であったが、後にソ連が加わった)が日本に対して降伏の条件を示すために発出したものである。そのなかで日本の領土については、「日本国の主権は本州、北海道、九州および四国ならびに我らの決定する諸小島に局限せられるべし」とした。これにより、本州、北海道、九州および四国は日本の領土であることが確認されたが、その他の島嶼については、北方領土を含め、どれが日本に残るか、米、英、中、ソ連の4ヵ国が決定することとなったのである。

 日本の領土を日本自身が決めることは認めないという恐ろしい条件であったが、日本はこのような宣言を受け入れざるをえなかった。ポツダム宣言を受け入れないという選択肢はなかったのである。

 一方、連合国では終戦処理の一環としてソ連が「千島列島」を「占領」することが認められた。しかし、「占領」と「領有権」の有無は別次元の問題であり、連合国はそのことを確認している。ソ連が「千島列島」を「領有」できるかは、ソ連が決められることでなく、連合国が決めることであった。

 ポツダム宣言に基づいて連合国の意思を具体化したのは1951年のサンフランシスコ平和条約であり、これによって日本の領土が正式に確定された。「千島列島」や「台湾」などについては、日本はすべての「権利を放棄」した。「千島列島」の「領有権」をソ連に認めたのではなかったのである。日本が「放棄」した後の「千島列島」の領有権は米国が獲得することも法的には可能となったのであった。

 同条約が旧日本領について最終的な処分を決定しなかったのは、ソ連が、自らの判断で同平和条約に参加しなかったからである。当時、東西の対決は厳しさを増していた。
 要するに、「千島列島」の領有権は連合国によって決定されることになっていたが、実際にはそうならなかったのである。

 一方、「第二次大戦の結果を認める」だけであれば日本として問題ない。第二次大戦の結果とは、ポツダム宣言とサンフランシスコ平和条約であり、それは日本も認めている。
 そして、「第二次大戦の結果」を忠実に受け入れるかぎり、日本は「千島列島」に対するロシアの領有権を認めることはできない。その理由は前述したとおりであり、日本は「千島列島」を放棄することしかできず、その帰属を決定するのは連合国だったからである。

 なお、法的な解釈とは別に、ロシアは戦争に勝ったのだからという理由で、負けた日本から領土を取り上げることは当然だと考えているともいわれているが、この考えも成り立たない。全く同じ理由からであり、日本から領土を取り上げることができるのはロシアでなく、「連合国」だったからである。

 なお、ソ連が勝ったと言っても、ソ連は日本との中立条約を一方的に破棄して参戦したのであり、また、数日だけの参戦であったが、そのことは本稿では触れない。

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