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2014.06.26

ブレアー提督の中国観

米国の前アジア太平洋軍司令官、デニス・ブレアー氏は、「中国はcontaining itself」と評している(加藤洋一名の記事『朝日新聞』6月26日付)。これを日本語に訳せば「自ら孤立を招いている」に近いが、ちょっと違う。containには「各国が中国を包囲して封じ込める」という意味合いがあるが、「自ら孤立を招く」には「封じ込める」という感じはないからである。ブレアー氏は、少し解説すれば、「中国は、各国が中国を封じ込めるように自らしている」ということである。中国封じ込めは第二次大戦後の米戦略の要点であった。少なくとも1970年代初頭の中国との和解までは米国の基本方針であった。これに中国は強く反発していたのは当然である。中国にとっては、「米国が日本や各国をけしかけて中国の封じ込めを図っている」からであった。
ブレアー氏はこの経緯を踏まえつつ、今は中国が米国に代わって「中国を封じ込めている」というわけである。その説明としてブレアー氏は、中国がアグレッシブであること、そのため中国以外の各国が連帯を強める結果となっていること、また、中国はただ自国だけの利益の確保に専念していることをあげている。現在の中国、海洋大国になることをひたすら求めている中国、東シナ海および南シナ海で「相手のものは自分のもの、自分のものは自分のもの」的な態度を取っている中国の特徴をよくとらえている。
また、ブレアー氏は「中国の拡張主義には限界upper limitがある」とも述べている。これも面白い評である。とくに中国は、軍事衝突を起こせば経済面で受ける損失が大きすぎて堪えられないからであるという指摘も正しい。
しかるに、そうであるならば、中国はなぜそこまで各国を刺激し、連帯を強めさせる前に自己抑制をしないのかという問いを発せずにはおられないが、そうなると中国軍の横暴、さらには現体制維持という共産党にとっての究極の問題にまで議論しなければならないかもしれない。

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2014.06.25

中国のジブチ進出

紅海からインド洋に出る要衝の地にある小国ジブチに米中両国が積極的に働きかけていることを紹介する記事が6月24日付『朝日新聞』に出ている。人口90万人、GDPは15億ドルくらいであるが、中国は港湾施設運営会社への投資、新港や港湾鉄道の建設などでジブチのGDPをはるかに超える額の金をつぎ込んでいる。それと同時に中国軍も積極的な姿勢を示しており、将来基地を置くことになるとも噂されているそうだ。
米国はすでに基地を置いており、定員3千人だが4500人が駐留している。ジブチ政府は1977年の独立以来親米的で、1990年の湾岸戦争、2001年の米国での同時多発テロ攻撃後の対策にも協力し、2002年には米軍基地を受け入れた。かつてのフランス外国人部隊の基地Camp Lemonnierである。
ジブチの隣国ソマリアはエチオピアとならぶ大国であり、米国はかつてソマリアで苦い経験をしたことがあった。最近は、2012年に成立したソマリア連邦共和国との関係改善が進み、外交関係も回復したが、米ソマリア関係においてこのような変遷があった間、ジブチの米軍基地は米国にとってきわめて重要な役割を果たした。米国のアフリカに対する経済、人道援助はかなりの部分ジブチ経由で行なわれている。なかでもテロ対策にとってこの基地の存在は重要である。
そこへ中国が乗り込んできたが、米国はジブチとの友好関係を固め、2014年には基地の使用延長(30年)について合意を取り付けた。しかし、賃料は年間71千万ドル、ジブチのGDPの約20分の1だそうだ。

中国のジブチへの進出の意味・インパクトを考えてみたい。
○ここでも超巨大国家とミニ国家という基本的図式がある。中国が太平洋の島嶼国家に進出するのと同様のアンバランスがある。中国がジブチのインフラなどの建設のため投入している資金はジブチのGDPを超える規模である。そのインパクトの大きさははかりしれない。
○ジブチの人口は九十万人であり中国が一定の戦略目標を立てて進出してきた場合、現地労働者では需要増を賄いきれない。だから中国人労働者が増加する。
○何人の中国人労働者がシブチに入国しているかよく分からない。中国が興味を持つアフリカの国では万の台の中国人が働いている。日本が百の台であるのに比べ、百倍~数百倍であり、比較にならない。リビアの政変で外国人が避難した時も日本人と中国人の数はそのくらい違っていた。
○米国のジブチにおけるプレゼンスに中国人の数が影響するとは思われない。中国人は専用の宿舎からあまり外出しないだろう。しかし、政府間では中国人労働者の関係でさまざまな措置が必要になる。この影響が米国にもおよんでくるかもしれない。
○中国が軍事的にもジブチに興味を持つのはその近海で行なわれている海賊対策の関係が主であろう。この面では米中、また、日本も共通の利害関係にある。日本は、哨戒機(P3-C)などの活動拠点をジブチの空港に置き、また、海賊対策のための諸活動を調整するための現地事務所を設置している。

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2014.06.24

国家安全委員会とテロ防止活動の関連

インターネットでの「暗戦(暗闇での戦い)」と反テロ闘争が中国の安全に関わる2大問題となっている、などという内容の評論を大公網が報道している(6月24日 『政経生態周報』第十期の記事を転載)。以下はその主要点である。
「インターネットの安全と反テロ活動は密接不可分に結びついている。現在、中央のインターネット安全弁公庁は、インターネット上の暴力・恐怖の影響を除去するための闘争を全国的に展開している。インターネットとテロは織りなして関係しており、政治、国土、軍事、文化、社会、情報化、国民などの安全に関わっている。
各省は、中央のインターネット情報化安全小組に対応する組織を続々と作っている。とくに注意すべきは、軍の将官がそのなかで重要な役割を演じていることである。たとえば、江西省ではその指導者として、江西省軍区司令員の張暁明と参謀長の陳平が名を連ねている。北京、陝西省、吉林省、江蘇省、山東省などでも同様である。」
「各省は、インターネット安全小組の他、反テロ工作小組を設置しており、軍人が同様に重要な役割を果たしており、ほとんどすべての省で軍人が副組長となっている。軍人はその軍区か武装警察の責任者である。その目的は、軍、武警、公安等の部門を統合し反テロの力を最大にするためである。」
「6月9日、新疆ウイグル自治区の反テロ工作指導小組はウルムチで第1回全体会議を開催した。以前は反テロ協調小組であったものが反テロ指導小組に改組されて初めての全体会議である。組長には自治区党委員会書記兼政法委員会書記の熊選国が、副組長には自治区政府副主席兼公安庁長の朱昌傑と新疆軍区副司令員の李発義がついた。」

このような動向も習近平政権の特徴である、現体制の安定を重視し、民主化を許さず、そのためには強権的に言論を封殺することも辞さないという姿勢の一端である。果たしてこのような方法で長く政治を維持できるかが問われる。

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