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中国

2017.05.23

南シナ海問題におけるドゥテルテ大統領の動向

 南シナ海において最大の懸念は米中が軍事衝突することであるが、トランプ政権の成立後、両国は北朝鮮問題や経済・投資面での協力に注意を向けており、南シナ海が話題に上ることは少なくなっている。
 この間、米海軍は「航行の自由作戦」を継続しようとしたが、中国との協力関係を重視するトランプ大統領はそれを許可しなかったと伝えられた。トランプ大統領は「航行の自由作戦」を控えることを、中国から協力を引き出す取引材料の一つに使った可能性もある。

 一方、フィリピンのドゥテルテ大統領は、2016年7月に国際仲裁裁判の判決が出た後、習近平主席との間で、南シナ海問題は平和的に解決することで合意した。判決の影響を最小化しようとする中国ペースに乗った感はあったが、ドゥテルテ大統領は中国から巨額の経済協力を獲得したし、また、前政権下で激しくなったスプラトリー諸島(南沙諸島)をめぐる緊張関係が和らいだのでフィリピン国内では高い支持率を維持した。
 しかし、スプラトリー諸島付近ではその後もフィリピン漁船が中国の艦艇によって操業を妨げられる事件が発生しており、それに対する対応を不満とする勢力はドゥテルテ大統領としても無視できない圧力となっている。
 
 そんななか、ドゥテルテ大統領は4月6日、フィリピン独立記念日(6月12日)に同国が実効支配するスプラトリー諸島のパグアサ島(比名。英語名はThitu Island。中国名は中業島)に自ら行き、「フィリピンの旗を立てる」と記者団に語ったが、1週間後の13日、「中国に、今は行かないでほしいと言われた。中国との友情を重んじて計画は改める」と前言を翻した。その際、ドゥテルテ氏は中国側が「(領有権を主張する)各国が旗を立てることになれば問題になる」と発言していたことも明かした。
 しかし、4月20日、フィリピンの漁船が中国の艦艇によって追い払われる事件が起こり、フィリピンでは強い反発が起こったので、翌日、ドゥテルテ大統領はロレンザーナ国防大臣を同島に派遣・上陸させた。この経緯を見ると、南シナ海の問題は今でもかなりデリケートな問題であることがうかがわれる。

 そして4月26日からASEANの年次会議がマニラで開かれ、29日の首脳会議の議長声明で「埋め立て工事と軍事化への反対」について言及するか否かが問題になった。声明の原案には含まれていたので、マニラの中国大使館は削除すべきだと猛烈に働きかけたと言う。これに対し、ベトナムやインドネシアなど4カ国が残すべきだと主張したが、最終的には、「状況の複雑化を招く行為は避けることが重要だ」とやんわり記すにとどまった。議長声明が会議終了の翌日に発表されたのはそのような紛糾があったからだ。
 当然だが、ドゥテルテ大統領は議長として会議をまとめるのに苦労したのだろう。5月1日には、ミンダナオ島のダバオ市を親善訪問中の中国のミサイル駆逐艦「長春」に乗船した。久しぶりの中国艦船の寄港であったが、大統領が訪問するのは異例だ。ドゥテルテ氏の中国に対する気遣いがうかがわれる。中比両国の海軍は今後合同演習を行うそうだ。

 しかし、それから2週間後北京で開催された「一帯一路」会議に出席したドゥテルテ大統領は習近平主席と会談し(15日)、その会談内容について、19日、ダバオ市で次の通り説明した(香港紙『明報』)。

 「ドゥテルテは、「フィリピンはスプラトリー諸島のReed Bank(中国名は「礼乐滩」。フィリピン名は「Recto Bank」)で石油の掘削を行う予定である。同島はフィリピンの排他的経済水域内にある」と言った。
 これに対し習近平は「それはすべきでない。そこは中国のものだ」と言った。そこで、ドゥテルテは「我々には国際仲裁裁判がある」と言ったところ、習近平は「我々には歴史的権利がある。あなたたちのは最近の法律に過ぎない」と言い、さらに「我々は友人だ。私はよい関係を維持したい。しかし、貴方がどうしてもそうするというなら、私も言わざるをえなくなる。我々は戦争するかもしれない、我々はあなた方と戦争するかもしれない」と言った。」

 ドゥテルテ大統領の説明は国内向けに「自分は中国を相手に努力している」ことをアピールする意図が入っていた可能性はあるが、もし、事実そういうことだったのであれば、習近平主席はドゥテルテ大統領を露骨に恫喝したことになる。
 このドゥテルテ発言は外電で広く報道され、このまま放置すると問題になることを恐れたカエタノ外相は22日、記者団に対し「ドゥテルテ・習会談は極めて率直に行われた。相互に尊重・信頼しあっていた。会話は戦争をすると互いを脅したのではなく、いかに対立を回避し地域の安定を実現するかという文脈で行われた」と説明した(ロイター22日など)。
 今回のドゥテルテ発言はこれで一件落着となりそうだが、今後も同氏の言動には注意が必要だ。ドゥテルテ氏は適当と判断すれば仲裁裁判を持ち出す考えなのだと思われる。

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