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2016.02.04

中国は北朝鮮に働きかけたが

 中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表が2日、平壌に到着した。1月6日、北朝鮮による核実験があり、また近く「人工衛星」と称するミサイルが発射されるというタイミングであり、その間にケリー米国務長官が訪中して、中国が北朝鮮に対する働きかけを強化することを要請したことを受けての北朝鮮訪問だった。
 ところが、武大偉代表の平壌訪問と同じ日、北朝鮮は問題の「人工衛星」ミサイルの発射を2月8~25日の間に実施すると発表した。武大偉代表の面子は丸つぶれではないか。武大偉代表の平壌訪問も「人工衛星」ミサイルの発射発表についても一定の準備が必要であり、同日となったことには偶然の要素もあろうが、ずらそうと思えばできることである。やはり北朝鮮は、中国が何と言おうと「人工衛星」ミサイルを発射する予定は変えないという強い姿勢で臨んでいる。

 ここまでは多くの人が等しく感じることだろうが、問題はこの一連の経緯をどう読むかだ。
 北朝鮮が、国際社会の要望や国連安保理決議を無視した(あるいは、無視している)ことは誰の目にも明らかだが、北朝鮮が核実験や「人工衛星」ミサイルの発射について中国が中止を求めても応じないことは予想通りだったと思う。北朝鮮に賛同しているのではない。単に予想通りだったということだ。
 では、中国は、北朝鮮に中止を求めれば従うと思っていたか。中国もやはり北朝鮮は聞き入れる公算は極めて低いと思っていただろう。しかし、中国は、北朝鮮が核実験や「人工衛星」ミサイルの発射をしないほうがよいという考えである。この点はもちろん北朝鮮と異なっており、中国はそのような立場を平壌で直接表明することが望ましいと判断したのだろう。
 北朝鮮に要望しても聞き入れない公算が高いのに、なぜ特別代表が行ったのか。どうしてそのような判断をしたのかであるが、一つの理由は、北朝鮮があまりに気ままに振る舞うことに対するけん制だ。
 もう一つの理由は、ケリー長官の要請だ。同長官に対して中国側は、米側の考えに賛成できないとしつつも、まったくゼロ回答ではなく、「できる限りのことはする」という程度のことは言ったはずである。つまり、武大偉代表の平壌訪問は、米国との関係では、努力したことを示す「アリバイ作り」だったのだ。

 米国は、北朝鮮と中国がこのような反応を示すだろうとは思わなかったのだろうか。これまでの経緯にかんがみると、米国としても楽観的になれないはずだが、それでも米国が中国に強く求めるのは、安保理決議は忠実に実行すべきだ、中国もその決議に賛成した、北朝鮮としても国連の一員であり、決議に拘束されるという点で米国の主張に理屈があるからだ。
 では、米国の主張に従えば、北朝鮮の核実験や「人工衛星」ミサイルの発射を止めることができるかと出発点に立ち返って考えてみると、やはり悲観的にならざるを得ない。
 北朝鮮にとって安保理決議に従うか否かは、残念ながら二次的なことで、最大の問題は、いわば、生き残るか崩壊するかであり、安保理決議は生き残りの妨げになるとみなしている。中国もそのことを一定程度理解し、完全否定はしない。
 一方、米国は、北朝鮮が存続できるか否か、どちらでも構わない、もしつぶれるのなら、それは北朝鮮が誤った政策を取っているからだという考えではないか。
 
 安保理決議一本やりではこの溝は埋まらない。北朝鮮の地位と安全について米国と北朝鮮が交渉し、合意をさぐることも必要になっている。

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