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2016.05.16

(短評)ドゥテルテ・フィリピン新大統領をどう見るか

 来る6月30日にフィリピンの新大統領に就任するドゥテルテ氏は過激な発言で知られている。米国の大統領選でやはり過激な発言を武器に支持を拡大し、共和党の候補にほぼ確定しているトランプ氏によくなぞらえられているが、両者の間にはかなり違っている面があると思う。
 ドゥテルテの発言は、単に「過激」なだけでなく、たとえば、「私が大統領になれば、血を見る機会が増える」「犯罪者は殺す」と言ったり、同氏が女性を侮蔑する発言をしたので米国とオーストラリアの大使が非難したのに対して、「黙れ、両国と関係を切ってもいい」と言い放ったりするなど、「常軌を逸した」と評するほうが適切な感じがするくらいだ。
 女性を侮蔑する発言は、1989年にダバオで起きた刑務所暴動でオーストラリア人修道女が強姦殺人された事件について、自分が先に強姦しておけばよかったと冗談で言ったものであり、これは絶対許されないはずだ。ドゥテルテは後で謝罪したが、そんなことで切り抜けられるような問題ではないだろう。
 トランプもえげつないことを口にするが、ドゥテルテには及ばないようだ。

 外交政策においてはもっと顕著な違いが見られる。
 トランプの場合は、「偉大な米国を復活させる」ことを重視すると同時に、メキシコ、韓国、日本などに対する一方的認識、思い込みに基づいた攻撃的な注文をするところに特徴がある。
 一方、ドゥテルテは、他国に対する一方的な認識や判断は、少なくとも今のところ、見られない。前述した「関係断絶発言」も特定の国に対するものでなく、批判をされたのに対する反撃だった。常軌を逸する内容だが、特定国を攻撃したのではなかった。

 ドゥテルテの対中政策がどうなるか、これはとくに注目されている。フィリピンは南シナ海で中国と争っており、国際仲裁裁判所に提訴している。
 ドゥテルテは、裁判では南シナ海問題は解決できず、中国との話し合いが必要との考えであり、その理由は「祖父が中国人だから」だという説もある。
 しかし、ドゥテルテは、中国と領有権を争っている「スカーボロー礁に行って旗を立てる」とも発言している。話し合いについても、中国と2国間で行うという意味でなく、多国間で協議すると言っている。これは中国が嫌うことだ。このようなことから、ドゥアルテははたして中国に融和的か、強硬か、よくわからないとも言われている。

 ドゥテルテ新大統領には、今後官僚機構や専門家のアドバイスを受けてバランスの取れた外交政策を策定していくことを期待したい。トランプのような思い込みがないのであれば、それは可能だと思われる。
近く公表される(はずの)南シナ海に関する仲裁裁判の結果に対しドゥテルテ政権がどのように対応するか。その外交姿勢が問われることになるだろう。
 

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