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2014.09.14

ウクライナ問題に関する米欧の制裁強化

EUと米は9月12日に追加制裁を発表した。銀行、天然ガス、石油、防衛関係の主要企業は米欧で取引をするのが非常に困難になる。資金の調達にも支障が生じるであろう。
さる5日にベラルーシのミンスクでウクライナ東部問題に関する協議が行われ、ウクライナと親ロシア派の代表が停戦に合意した。停戦合意は形式的にはロシアは当事者でなかったが、実質的には深くかかわっており、ロシアの支持がなければ停戦の合意はできなかったであろう。プーチン大統領は自ら停戦の内容について発言していた。
この合意から1週間しか経っていないのに米欧は追加制裁に踏み切ったのである。実質的には停戦の合意直後から制裁強化の準備を始めていたものと思われる。米欧の対応は早く、かつ強硬である。そこまでするのかという感じさえする。
冷戦終結のおぜん立てをしたOSCE(欧州安全保障協力機構)はウクライナ東部の状況を監視するために250人の訓練された要員を派遣している。8日には同機構の高位の人が、「ウクライナの情勢は何とか持ちこたえているが、まだ不安定だ」と語っている。OSCEは無人機も飛ばして監視に努めている。衛星からの監視では夜間の状況は分からないのでこのようなOSCEのプロフェッショナルで組織的な監視は強力である。日本では報道されないことを米欧はかなり知っているらしい。だからこそ今回のような強硬な姿勢を取れるのであろう。オバマ大統領は、“We have yet to see conclusive evidence that Russia has ceased its efforts to destabilize Ukraine,”と述べている。
米欧がプーチン大統領を制裁の対象としないのは、プーチンとはこれからも話したいという考えだからだそうである。プーチンは軍の強硬派や議会の保守派に手を焼いていると見ているのかもしれない。

一方、11~12日、タジキスタンの首都ドゥシャンベでロシア、中国および中央アジア4カ国が加盟する上海協力機構の首脳会議が開かれた。これについて一部の邦字紙は、ロシアがこの会議を利用して欧米に対抗しようとしており、ロシアの影響力拡大を狙っているという見出しの記事を掲載しているが、ウクライナ問題について中国はロシアを積極的に支持することはしない。少数民族の問題に跳ね返ってくる恐れがあるからである。今回の首脳会議で発表された宣言はウクライナ問題について、5日の停戦合意を歓迎するだけであり、米欧の制裁強化を非難することは何もしなかった。ロシア支持の姿勢は打ち出さなかったのである。むしろ7月のBRICs首脳会議よりロシアにとっては後退した内容であったとも指摘されている。
そもそも上海協力機構は中国の思い入れが強く、同機構の本部は上海に置き、かつ初代の事務局長は中国人が務めた。国際機関として異例であり、中国がそれだけ力を入れているのである。
ロシアが軍事力を誇っていることは変わらないが、どうもそれ以外のことではロシアは米欧に押され気味であるし、中国やインドなどと比べても影が薄い印象である。


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