平和外交研究所

オピニオン

2014.02.24

中台関係③

「PRCと台湾以外の国は「中国は1つ」を認めているか」

PRCも台湾も「中国」は1つであると認めている。
PRCは古くから「中国」は1つであると主張しており、とくに国連で「中国」を代表するのは台湾政府でなく、PRC政府であることを認める国が増えていく過程で、PRCは「中国は1つ」であることを明確に認めるよう各国に要求した。このいわゆる中国代表権問題に決着をつけた国連総会決議(1971年、第2758号)は直接そのことには言及せず、PRCの代表がthe only legitimate representatives of China to the United Nationsであると認めた。つまり、この決議は国連内部のことに限ってPRCが「中国」を代表すると認めたのであった。

翌年のニクソン米大統領の訪中の結果合意されたいわゆる上海コミュニケでは、「中国は1つ」に関し合意できず、それぞれの見解を表明することとなり、PRCは「PRC政府は中国の唯一の合法政府であり、台湾は中国の1省であり(中略)「1つの中国、1つの台湾」「1つの中国、2つの政府」「2つの中国」および「台湾独立」を作り上げることを目的とし、あるいは「台湾の地位は未確定である」と唱えるいかなる活動にも断固として反対する」と表明した。
これに対し米国は、「台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ1つであり、台湾は中国の1部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論を唱えない」と応じた。
両者の見解には重要な違いがあった。PRCの表明は、「中国」とは何かについて一定の認識があることを前提とする表現になっていたが、米国は自らはその認識を共有するかしないかは明確にせず、両岸の中国人がそう言っていることには異論を唱えないと言ったにすぎない。米国としては「中国」とは何かよく分からないと、直接は言わなかったが、この表現ではそういう立場であったかもしれないのである。端的に言えば、PRCは「中国」を明確なものと観念する一方、米国は中国人がそう思っていることに異を唱えないが、米国自身としては主体的に認める立場にないという考えであった。

これより7ヶ月後の日中共同声明では、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」(第2項)、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」(第3項)となった。
この文言は米中共同声明と微妙に違っており、PRC政府が「中国」の唯一の合法政府であると認めているので、「中国」とは何か分かっているとの前提に立っているように読める。
しかし、「中国は1つ」であると表明したのではない。なお、1971年の国連決議は、国連で中国を代表するのはPRCということであり、日中共同声明は、そのような場の限定はなく、一般論としてPRC政府が「中国」の唯一の合法政府であると認めた。

1979年、米中両国は国交を樹立した。そうなると、米国としてもPRC政府を正式に認めなければならない。国交樹立を発表したコミュニケでは、米国も日本と同様、「PRC政府は中国を代表する唯一の合法政府である」ことを認めた(第2項)。
しかし、「中国は1つ」問題については不明確さが残った、このコミュニケの英文はPRCの「中国は1つ、台湾は中国の一部である」という立場を「認識している(acknowledge)」とだけ表明したが、PRC側の発表では米国は中国の立場を「承認した」となった(『人民日報』1978年12月17日付)。米国側のチェックが甘かったのかもしれない。詳しいことは茅原郁生・美根慶樹『21世紀の中国 軍事外交篇』朝日新聞出版2012年(21頁)を参照されたい。


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