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2016.04.26

(短評)慰安婦問題に関する財団の設立

 慰安婦問題解決のための財団を設立する準備を始めたと、韓国政府が4月21日の記者会見で発表した。
 この財団は昨年末の日韓合意に基づき韓国側が設置し、これに日本側は10億円を拠出することになっている。
 元慰安婦の中には日韓合意に反対している人がおり、また、13日の韓国総選挙で勝利した野党には日韓合意に批判的な意見も多いが、そのような状況にもかかわらず財団設立に着手した韓国政府の努力を積極的に評価したい。
 日本政府としても、この難問解決のため、10億円の拠出はもちろん、できる限りの協力をすべきだ。この日韓合意は極めて重要であり、双方とも誠実に実行しなければならない。
 日本の一部には、ソウルの日本大使館前に設置されている少女像の撤去が実現しなければ拠出すべきでないという意見があるそうだ。撤去が早期に実現するよう韓国政府に働きかけていくのはもちろんだが、拠出の条件とすべきでない。
 二つの角度から見ていく必要がある。一つは、日韓合意においてそのようなことは条件になっていないということだ。これは形式論に聞こえるかもしれないが、合意に忠実に従って実行することが重要だ。
 もう一つは、拠出を少女像の撤去に条件づけると問題の解決に役立たないどころか、逆に複雑化させる恐れがあることだ。日本側がそのことを条件とすると、韓国内で今回の合意に反対している人たちに新たな攻撃の材料を与えるという問題もある。
 「韓国政府はゴールポストを動かす」という観念にとりつかれていてはならない。どの国の政府も一貫していることは大事なことだが、異なる国家間では、相手方が一貫していないと見えることがある。日韓間では多少多めかもしれないが、日米間でも起こっている。1960年代末の繊維交渉がその一例だ。日本政府はその時の対応は間違ってなかったと今でも思っているだろうが、米国の大統領が激怒したことも歴史的事実である。国家間ではそのような認識の食い違いが起こる危険を考慮しつつ、幅をもって対応しなければならない。「わが方は正しく、相手方は間違っている」という単純な発想では危険だ。

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