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2016.01.19

北朝鮮の核実験と核不拡散

  北朝鮮による核実験は核不拡散体制(NPT)の観点からも見ておく必要がある。
 THE PAGEに1月18日、次の一文を寄稿した。

 「北朝鮮の核開発は「核不拡散」の観点からも問題です。北朝鮮は「核不拡散条約(NPT)」の締約国なので核兵器を開発・保有することを禁止されています。しかし、北朝鮮は1993年、同条約から脱退すると言い始めました。NPTの義務に縛られないで核開発を行なおうとしたのです。
 しかし、国際社会としては許されることではありません。北朝鮮のNPT脱退は認められないと明確に否定しました。
 それから10年後の2003年、北朝鮮は再びNPTから脱退すると、今度は断定的に表明しました。それ以来北朝鮮はNPTにまったくかかわらないでいます。

 NPTは1970年に発効してから一度も破られていません。条約に参加した国はすべて核兵器を開発・保有しないという義務を守ってきたのです。義務を守る覚悟がない国、例えば、インド、パキスタン、イスラエルなどは参加しませんでした。
 北朝鮮による核兵器の開発・保有はNPTとして初めての条約違反です。これはNPTとして放置しておけない問題ですが、解決の方法は見つかっていません。北朝鮮は脱退したと言い、国際社会はそれを認めないという平行線が続いています。

 そもそも、北朝鮮はなぜNPTから脱退すると言い出したのでしょうか。冷戦の終結が背景にありました。北朝鮮は、冷戦が終結に向かう中で、韓国が1990年にソ連と、さらに92年に中国と国交を樹立したので強いショックを受けました。ソ連と中国は北朝鮮の存立にとって不可欠の同盟国だったのですが、ともに北朝鮮の仮想敵国であった韓国と友好国になったのです。ソ連と中国が北朝鮮と断交したのではありませんが、北朝鮮は風前の灯火の状態になったと思われたこともありました。
 最初のNPT脱退宣言はそのような状況の中で行われたのです。国際社会からは認めてもらえませんでしたが、北朝鮮としてはこのような厳しい国際情勢の変化に直面して、生存を維持するには自らの防衛力を高めるしかない、そのため核兵器とミサイルを開発・保有する必要があると考え始めました。
 そして、2002年、北朝鮮は核兵器製造に必要なウラン濃縮をすでに進めていることを米国の高官に表明したのです。米国を平和条約交渉に引き込むためだったのでしょう。翌年には前述したNPTからの確定的脱退宣言をしました。最初の脱退表明から10年の間に北朝鮮の核開発はかなり進んでいました。

 しかし、北朝鮮が核兵器を開発・製造に成功したとしても、万の台の核兵器を保有する米国やロシアと比べれば、その何千、あるいは何万分の一でしかありえません。今回の北朝鮮の核実験は水爆だと言っていますが、それについても疑念を持たれています。つまり、北朝鮮の核兵器は米ロなど核大国とは比較にならない規模であり、将来もその差が縮まるとは思えません。したがって、北朝鮮が核兵器を保有しても軍事的には大して意味はないという見解もあります。
 おそらくその見方は、客観的には正しいでしょうが、北朝鮮はどのように考えているかが問題です。北朝鮮は、米国に攻撃を仕掛け、破壊するために核兵器を保有しているのではなく、かりに、米国が北朝鮮を攻撃してきた場合に、米軍の犠牲は大きくなる、米国の都市も安泰でなくなるということをアピールしようとしているのではないかと発想を変えてみることも必要だと思います。確かな材料は少なすぎるので、あまり推測をたくましくするのは危険ですが、西側の常識だけで見るのも危険です。

 北朝鮮の核開発が明らかになって以降、米、中、韓国、ロシアおよび日本は北朝鮮といわゆる6者協議を続けてきましたが、北朝鮮の体制維持に決定的な影響力を持つ米国が本気で取り組むことにはならなかったため、結果は出ませんでした。
 国際社会が同じことを繰り返すだけでは北朝鮮が核を保有するという状態は解消されません。北朝鮮が核保有国だと国際社会は認めませんが、有効な手を打てなければ既成事実化が進むのではないでしょうか。
 もしかしたら北朝鮮はインドのようになりたいと考えているのかもしれません。今はインドと北朝鮮の状況は非常に違っていますが、インドが初めて核実験を行なったときは、国際社会は今の北朝鮮と同様強く非難し、制裁も加えました。しかし、現在インドは米国と原子力協力協定を結ぶところまで状況が変わってきました。北朝鮮がすぐにインドのようになるとは思いませんが、国際社会としては手遅れとならないよう思い切った手を打つことが必要であり、そのためにはやはり米国が直接北朝鮮と交渉する必要があると思います。

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