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朝鮮半島

2017.05.06

北朝鮮と米国-現実とイメージ(その3)

(その1)では北朝鮮の、(その2)では米国の対応をとりまとめた。その後も注目すべき動きが続いている。

(米国側)
 4月29日、トランプ大統領はCBSとのインタビューで北朝鮮についての考えを語った。日本では部分的に引用されたことはあっても全体的にはあまり注目されなかったが、トランプ氏の考えがよく表れていた。特に次の発言だ。

○金正恩委員長に対する評価
 「人は金正恩を狂人と言うが、私は知らない。私がこう言うと多くの人が嫌うのだが、彼が父親の後継者になったのは26才とか27才の時だった。彼が相手にしているのは、軍の将軍など大変な人たち(very tough people)だ。多くの人が金正恩の権力を奪おうとしたのは確実だ。かれの叔父であったかも、あるいは他の人だったかもしれない。しかし、かれはそれをできた(He was able to do it)。彼はかなり賢い男(a pretty smart cookie)だと思う。しかし、長い間続いている北朝鮮の状況は放置しておけない。率直に言って、この問題は、オバマ政権、ブッシュ政権、クリントン政権によって処理されるべきだった。」

注 金正恩が困難な環境の中でしてきたことやその能力を理解する発言だ。また、叔父の張成沢を処刑したことについても頭から非難するのでなく、金正恩が指導者になる文脈の中で語っており、聞きようによっては肯定的に語っているとも解される話し方である。
 トランプ氏のような発言をする人は他にいないと言っていることも注目される。よく計算した上での発言ではないか。
 金正恩氏側の反応はまだないが、腹の中ではおそらく歓迎していると思われる。

○米朝直接対話について
 5月1日のトランプ氏の「私にとって適切なものであれば、当然、会談をすることを光栄に思う」との発言は(その2)に記した。
 それに引き続いて、3日、ティラーソン国務長官は国務省で、「米国は北朝鮮の政権交代を求めない。今後北朝鮮に対して話し合いを進める開放的な態度で臨む。一方、制裁をさらに進める準備も行っている」と発言(新華社電同日)。

○北朝鮮に対する強気の姿勢
 米国は4月26日に続いて5月3日、ICBMの実験を行った。

 同日、マティス国防長官は下院公聴会で、特殊作戦部隊を朝鮮半島に駐留させていることなどを証言。
 同じく同日、ティラーソン国務長官は、米国が北朝鮮に課している制裁の強度は20~25%程度であると述べ、さらに強化する可能性もあることを示唆した。

 4日、米議会下院は新制裁法案を通過、上院へ送付。内容は、北朝鮮の船舶が米国の水域に入ること、埠頭を利用することなどを禁止。北朝鮮で「強制労働」により製造された製品の米国への持ち込みを禁止。90日以内に、北朝鮮を「テロ支援国家」と指定するか否か、議会への報告を義務付けることなど。

注 米国は一方で米朝直接対話の可能性を示唆しつつ、同時に圧力をかけ続けるという硬軟両様の方針だと思われる。

○中国への期待
 トランプ氏は中国が北朝鮮に対する圧力を強めるよう強く要請し、習近平氏との会談では当初中国が協力の姿勢を見せなかったので不満を表明していた。しかし、その後トランプ氏は1カ月もたたないうちに習近平氏の努力を認めるようになり、CBSとのインタビューでは「私は習近平氏を好きになり尊敬している。習主席は北朝鮮に圧力をかけている(And I will tell you, a man that I’ve gotten to like and respect, the president of China, President Xi, I believe, has been putting pressure on him also)」と表現を変えた。

注 この発言以降、トランプ氏は習近平氏が米国と協力して動いていることを何回か発言している。北朝鮮が孤立していることを強調する意味を込めていたのだろう。.

 トランプ氏は中国についてCBSとのインタビューで次のようにも語った。「中国はかなり強い力を持っていると思う。しかし、究極の力ではないかもしれない(China does have reasonably good powers over North Korea. Now, maybe not, you know, ultimate, but pretty good powers)」。

注 究極の力(ultimate power)とは何か。北朝鮮がすでに保有している核兵器を放棄させる力のことだと思われる。つまり、北朝鮮の非核化を完全に実現する力は中国にはないことを認めている発言であり、興味深い。推測だが、それを実現させうるのは米国だけだということを自認しているのではないか。極めて正しい見方である。

(北朝鮮側)
 硬軟両様の米国に対して、北朝鮮は一方で米韓演習や米国の軍事力の誇示に対し、「北朝鮮は恐れない。いつでも破壊できる」という趣旨のことを口汚くアピールしている。その批判は特に新味はないが、米国の行動の不当性を訴える狙いの論評を次々に出している。
 
 「金哲」氏の3日付、「朝中関係の柱を切り倒す無謀な言行をこれ以上してはいけない」と題する論評は初めて中国を名指しで批判しており(5月3日朝鮮中央通信)注目された。
中国が北朝鮮に対する圧力を強めていることを示すものと考えられる。

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