平和外交研究所

11月, 2015 - 平和外交研究所 - Page 3

2015.11.20

パリの同時多発テロ事件

「パリで起こった同時テロ襲撃事件に関し、要旨つぎのような一文を東洋経済オンラインに寄稿した(「テロに勝つカギは「人・資金・武器」の遮断だ パリ同時攻撃に国際社会はどう対応すべきか」11月19日)。


○事件発生後、各国はフランスを支持する姿勢を鮮明にしている。各国間の協力と連帯の面では、テロへの対応能力(警察力)の強化の他、ISに走る若者への対策、資金源の遮断、武器供給の抑制などの問題ないし課題がある。

○対応能力の強化においては国際刑事警察機構(ICPOあるいはINTERPOL)の活用が可能だ。

○欧州各国から多数の若者がISに参加している問題への対処については、時間はかかるが、経済を活性化し、移民や若者の環境を改善し、国民の間の矛盾と対立を解消させていく必要がある。

○ISへの資金流入を絶つことは比較的短期間に効果を発揮しうる手段であり、石油取引の実態の解明と資金源の遮断は今後の緊急課題である。

○ISへの武器の流入を制限することも必要だ。

○来年の伊勢志摩サミットで、日本は議長国として、ISへの人、カネ、武器の流入を防止する観点から、条約など既存の国際的仕組みが有効であるかの検討、さらにはあらたなシステムづくりの面で積極的な役割を果たすことが期待される。」

2015.11.19

オバマ大統領はシンガポールを訪問すべきだ


 11月18~19日、マニラでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれた。APECは本来経済問題について意見交換する場であるが、今年は南シナ海での中国の行動がホットな問題となっている中で、南シナ海問題がどのように扱われるか注目されていた。中国の埋め立て工事は排他的経済水域に関係してくるので、政治問題として片付けられない面がある。
 米国のオバマ大統領はかねてから各国の指導者に対し、中国に国際法を守るよう促すことを求めており、今回の首脳会談の場でも、あるいは会議の外で、各国の首脳に改めて働きかけたようだ。また、オバマ氏自身、マニラに到着直後、米国が供与し、現在フィリピン海軍が主力艦(旗艦?)として使用しているフリゲート艦に乗り込み、南シナ海の問題を重視している姿勢を強調した。
 オバマ氏は、米沿岸警備隊の巡視船など新たに2隻をシンガポールに供与することを約束し、また、周辺国に安全保障能力の協力強化のため今後2年間で計2億5900万ドル(約320億円)の支援を実施する方針だと伝えられている。
 今回の会議ではフィリピン、ベトナムなど中国と直接南シナ海問題で対立している国、あるいはインドネシアのように米国の方針に理解を示している国との関係でどのような動きがあるか注目されるのは当然だ。

 シンガポールは南シナ海問題ではあまり注目されないが、米国にとって重要なパートナーである。シンガポールは民族的には中国に近いが、国家としては、とくに機能的には米国に近く、米国との友好関係は各分野に及んでいる。
 米国のシンクタンクCSISのMurray Hiebert研究員は11月12日付で、オバマ大統領はシンガポールを早期に訪問すべきだとして、要旨次のように述べている。参考になる論考だ。
○シンガポールは独立以来、自由貿易の促進、安全保障の強化、地域協力の推進、人材養成などの面で米国に最も近い友好国である。
○オバマ大統領は2009年に短時間立ち寄っただけである。時間をかけて公式に訪問し、シンガポール政府高官をはじめ、経済界の指導者、青年、市民社会などと対話し、米国がシンガポールを重視していることを示すべきである。
○オバマ大統領はミャンマーとインドネシアにはすでに2回ずつ訪問している。また、11月中にフィリピンとマレイシアを訪れる。いずれも過去18カ月間で2回目だ。タイには2013年に訪問した。
○2016年は米・シンガポール外交関係樹立50周年であり、ぜひ行くべきだ。ASEAN首脳会議の機会を利用するのもよい。
○シンガポールは米国がアジアで自由貿易協定を結んだ最初の国であり、その協定は数ある自由貿易協定のなかで最も成功したものである。米国のシンガポールへの投資は2014年、1800億ドルに達した。これは対中投資の2倍、対印投資の6倍に相当する。シンガポールからの対米投資もストックで210億ドルに上っている。3600以上の米国企業がシンガポールに進出し、その多くは東南アジア地域の本部となっている。世界銀行の報告では、シンガポールはビジネス環境面でつねに世界一、または二番目にランクされている。
○シンガポールは、フィリピンのクラーク空軍基地とスービック湾海軍基地から米軍が撤退を迫られて以来、安全保障面で東南アジアの最も重要なパートナーとなっている。2005年に締結された両国間の協定に基づき、米軍はシンガポールの施設の利用が可能になっている。米軍は東南アジア地域における活動のため兵站拠点をシンガポールに置いており、また、空軍機と艦船は交代でチャンギ海軍基地を利用している。
○シンガポールは2014年末、東南アジア諸国で初めて米国などの対IS空爆に参加した。アデン湾の海賊対策やアフガニスタンのISAFにも参加している。
○米国はシンガポールに対する最大の武器供給国であり、また、毎年千人以上のシンガポール兵を訓練のため受け入れている。シンガポールは米国が主催する各種の演習に参加している。

2015.11.17

プーチン大統領との平和条約交渉

プーチン大統領の年内訪日が延期された。同大統領との平和条約交渉は今後どのように展望できるか。東洋経済オンラインに「「日ロ平和条約」は、長くて困難な道である 「プーチン訪日延期」の正しい読み方」を寄稿した。要点は次のとおりである。

○これまで日本は、重い大八車=「日ロ号」を坂道を押し上げるように努力してきた。油断しているとすぐに転げ落ちる大八車だ。
○エリツイン大統領時代、「日ロ号」は最も高いところまで押し上げられた。
○プーチン大統領からは、「日ロ号」を下げようとしているかのような発言が、非公式には行われている。
○「日ロ号」がズルズルと落ちている状態で合意を急ぐのは禁物だ。ロシアが本当に日本との条約をまとめる熱意を持つようになり、かつ、強い政治力で交渉できるようになるまで、慎重に、粘り強く対応していく必要がある。
 

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