平和外交研究所

2014 - 平和外交研究所 - Page 40

2014.07.08

習近平主席の韓国訪問 2

この時点で習近平主席が韓国を訪問したのは、中国からイニシャチブを取ったのか、それとも韓国か分からないが、朴槿恵大統領の外交面での積極姿勢をあらためて印象づける出来事であった。韓国国内では客船の沈没事故の余波がまだおさまらず、辞任を表明した鄭烘原首相に代わる新首相として指名された文昌克氏は、朝鮮民族を侮辱し、日本の植民地支配を認める発言をしたと国民から批判されたために首相就任を辞退し、結局いったんは辞意を表明した鄭烘原が引き続き首相にとどまることになった。これに限らず、韓国の内政はかなりたいへんなようである。
中国の国家主席の韓国訪問は、日本からはもちろん、米国や北朝鮮からも注目された。もっとも米国と北朝鮮の場合注目したのは政府だけだったであろうが。日本では中韓両国は日本に対して「共闘」しているとも報じられた。
朴槿恵大統領の前任の李明博、その前の盧武鉉両大統領とも、支持率が低下するに伴って対日強硬姿勢に転じたではなかったか。朴槿恵大統領は、日韓関係が大きく発展する可能性を認識しつつも、とくに歴史問題に関して日本に厳しい姿勢で臨んでおり、そのため大統領へ就任早々から日本に対して強硬な態度を取ってきた。日本との関係がこれ以上悪化しようがないくらいのところまで来ているかもしれないが、それにしても朴槿恵政権の外交姿勢はかたくなである。
先般の河野談話の調査結果は、調査自体は懸念されたが、内容は客観的であり、日本の慰安婦に関する姿勢に傷をつけないで済んだと胸をなでおろしたが、韓国はかなり厳しく批判している。その矛先は調査をしたことだけでなさそうである。もし韓国政府が、この調査によって慰安婦問題の解決に関し日本政府から協議を受けていたことを日本側が発表したことに不満なのであれば、また話は違ってくる。韓国政府は日本政府の解決方針、この場合慰安婦の聞き取り調査を行なうこと、に対し理解を示したと国内で批判されるのを恐れているのではないか。そんなことはないと思いたいが、今回の調査の何がよくないのかよく分からない。
韓国は米国からみても懸念される外交姿勢を取ってはいないか。韓国は自由世界の重要な一員であり、また、冷戦構造が完全に消えていない東アジアで自由で民主的な体制を守る最前線に立っている。その韓国に、米国も日本も甘えてはいけないが、期待するところ大である。韓国はこれまでは個別の問題では米国ともぶつかることはあったが、大筋においては米韓の認識がずれることはなかった。その韓国が日本との関係を強化するのは米国にとっても好ましいことであっただろう。
しかし、中国との関係緊密化を米国はどう見ているか。中韓が、日本の歴史問題にかんする姿勢についてともに厳しい態度を取るのは米国も理解し、さらに共鳴くらいはあろう。しかし、米日韓の緊密な関係が東アジアの安全保障の要である。韓国が中国との関係を発展させるのはよいことなのであろうが、現在の韓国の姿勢を見ていると、米国との関係でも疑問がわいてくる。韓国からすれば、余計な御世話だろうが。

2014.07.06

習近平主席の韓国訪問

習近平中国主席が7月3日、韓国を訪問し、朴槿恵大統領と会談した。
中国の国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問するのは歴史上初めてであり、北朝鮮としては当然面白くないであろう。しかし、中国と北朝鮮の関係は習近平の韓国訪問より以前からぎくしゃくしていた。中国としては、金正恩が金正日の後継者となってから一度も中国を訪問していないではないかと言いたいかもしれない。中朝関係は金正恩が親中派の張成沢を処刑したことでさらに悪化した。
しかしながら、北朝鮮はこれまで中国にとって緩衝国であり、中国は何と言っても最後は北朝鮮が現体制を維持することを望んでいたはずである。1992年に中国が韓国と国交を樹立して以来、北朝鮮と中国との関係には大きな隙間が生じたが、それでも基本的な関係は維持していたことが想起される。
今回の習近平主席の韓国訪問は、北朝鮮にとって1992年以来の不愉快な出来事であろう。従来、中朝両国をつなぎとめる最強の紐帯は北朝鮮の中国に対するエネルギー面での依存であったが、ロシアからのエネルギー供給を受けることになれば、これまでの中国の地位をロシアが一定程度代替することはありうる。もっとも、北朝鮮の日本海沿岸にロシアの協力で作られた石油関連施設は今も休眠状態だそうだが、これからは新しい感覚で注目していかなければならない。
中朝関係の行く末は日本にとっても関係がある。韓国が中国と「共闘」して日本に対抗する状況を北朝鮮はどう見ているだろうか。金正恩第1書記が日本との関係を重視していると即断すべきでないが、日本との関係はいくつか拾い上げることが可能である。

2014.07.04

日中間の緊急連絡体制

THEPAGE(7月1日)に掲載された一文。

「最近、中国機が日本の自衛隊機に異常接近する事例が相次いで起こっています。また中国海軍艦艇による海上自衛隊の護衛艦に対する大胆な行動も起こっています。このようなことは日中間の問題にとどまらず、東アジアの平和と安全にとっても懸念すべき問題です。
日中両国は不測の事態が起きないよう努めなければなりません。また、発生してしまった場合には事件の拡大を防止し、迅速に鎮静化させることが必要です。このために両国間に緊急連絡体制、つまりホットラインを設置することが検討されています。
日中間では、事件もさることながら民間航空機事故、自然災害、環境などの面で協力しなければならないことが増えており、そのためにも緊急連絡体制の早期構築が望まれます。
日中両政府間では2007年、安倍首相と来日した温家宝中国首相との間で、中国国防部長の訪日や艦艇の相互訪問の早期実施、海上における両国間の連絡体制設置について議論していくことなどが合意されました。さらに、2011年7月の防衛次官級協議で緊急連絡体制を早期に構築することで意見が一致しました。その頃まで両国間の話し合いは順調だったのですが、翌年、尖閣諸島の関係などで日中関係が悪化し、連絡体制の設置についての話し合いも中断してしまいました。
21世紀の今日、国家間の戦争が起こる危険は少なくなっていますが、誤解により偶発的に紛争が起こる危険があります。緊急連絡体制は、事件が起こった場合に、相手国政府の意図を早く確認するのに役立ちます。また、事件の事後処理においてもおたがいに状況や処理方針を確認しあうことは重要です。
中断している日中間の協議を復活しなければなりません。日本側はいつでもこの協議を再開したい考えであり、たとえば2014年5月末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)でも、小野寺防衛大臣は中国側の代表に対し早期設置に向けた協議の再開・促進を呼びかけました。また、安倍首相はこの会議で「危険な遭遇を歓迎しない。交わすべきは言葉です」と発言しました。
これに対し中国側は、今は話し合いを進める状況にないと言っていますが、関係のよくない時にこそ緊急連絡体制が必要であるというのが日本側の考えです。
 冷戦中に米軍とソ連軍との間で何回も起こった衝突や対立は、その後両国間に協定ができて状況は改善されたと言われています。これ以外の国でも偶発的に起こった事件の拡大を防ぐ手立てが講じられています。日本と中国との間でも、危険の発生を未然に防止し、事件が起きても拡大しないよう協議するメカニズムの構築が待たれます。」

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