平和外交研究所

5月, 2014 - 平和外交研究所 - Page 2

2014.05.26

米国による中国軍人の起訴

米国司法省は19日、違法なサイバー攻撃を行った嫌疑で5人の中国軍人を起訴すると発表した。中国政府はこれに対し激しく抗議し、サイバー攻撃問題に関する両国の作業部会を停止すると反発した。米国と中国は、かねてから南シナ海や東シナ海における中国の行動を巡って意見を異にし、米国は中国を批判していた。米司法省の今回の決定により、両国間の不協和音はますます大きくなった印象がある。

今後どうなるか。中国政府が起訴された軍人を米国に引き渡すことはありえないので、米司法省の決定は米国としての姿勢を示す以上の意味を持ちえないと言われているが、それでも米国として中国に対し、事態を深刻視し、将来強い措置をとることも排除しないというメッセージを送る意味合いはあろう。

中国はどのように対応するか。中国のインターネットには、米国がどのようにして5人の軍人をつきとめたかを分析する意見も現れている。

一方、中国政府は「国家インターネット情報化弁公室」を中心に、インターネットの安全確保のための制度樹立を米国に提案することを検討している可能性がある。インターネットが悪用されてはならないということについては米中両国としても異論はないだろう。今回の中国軍人によるサイバー攻撃もインターネットを悪用した行為である。しかるに、一言で安全を確保すると言っても、具体的に何の安全を図るかで実際に意味するところは大きく違ってくる。たとえば、米国としては違法な行為の取り締まりが目的であろうが、中国としては、国家の安全や公共の利益の確保を重視するであろう。そうなると、中国で民主化運動に利用されているインターネットには強い制限がかかることになり、ひいては中国に進出している米国の企業がヒットされる公算が大きい。つまり、このような制度が打ち立てられると中国が要求する安全基準に合致しない米国企業は糾弾され、中国から追い出されることにもなりかねない。実際、Cisco Systems、IBMおよびマイクロソフト社にはそのような危険があると言われている。
インターネットを強い監督下に置くという中国の考えは、中国軍人の起訴に対する報復であるととともに、国家の秩序が乱されるのを防ぐという一石二鳥の効果を狙っているのではないか。
習近平主席はオバマ大統領との会談で、中国もサイバー攻撃の被害者であることを強調した。米国の非難をかわすためにそう発言したきらいもあるが、中国としてもサイバー攻撃の問題を抱えているのは事実であろう。「中国国家互联网应急中心」の最近の発表では、2014年3月19日から5月18日までの間に、2016の米国内のIPから中国国内の1754のサイトに対して侵入があり、5.7万件のサイバー攻撃があったそうである。(中国政府の検討については5月22日付『多維新聞』によった)

2014.05.22

尖閣諸島に関する米国の立場

オバマ大統領は訪日の際、尖閣諸島に関して日本に紛争解決のため行動するよう促しつつ、同諸島には日米安保条約が適用されることを明言した。そのことは米国の高官がすでに何回も述べてきたことであるが、大統領として初めての発言であり、その意義は大きい。
しかし、米国は領有権に関してどちらが正しいと言うのではないことも断っていた。これは第三国間の領土紛争に関して米国がかねてから取ってきた基本方針であるが、尖閣諸島については、米国は特殊な立場にあり、いわゆる第三国ではない。
戦後日本の領土を再画定したサンフランシスコ平和条約は、日本が放棄する領土を第2条で規定し、放棄しないが米国の統治下に置かれる「琉球諸島」を第3条で規定した。
尖閣諸島は、第2条の対象か、それとも第3条の問題か、どちらかで日本の領土でなくなるか、依然として領土であり続けるか決定的に変わってくる。
しかるに、「琉球諸島」の統治を始めるに際し、米国は「琉球諸島」の範囲を緯度・経度で明確に示し、他の条約締約国に異議がないか確かめた。異議はどの国からも提起されず、「琉球諸島」の範囲が確定した。かくして尖閣諸島は平和条約第3条の「琉球諸島」に属していることが確定した。米国は尖閣諸島の法的地位の確定に際し主導的な役割を果たしたのであり、いわゆる第三国でなく、当事者だったのである。

以上の趣旨の一文を本22日付の読売新聞に寄稿した。

2014.05.19

中国の土地問題②

現在の土地住宅制度は多くの問題を惹起しており、中国経済は非常に大きな危険にさらされている。

第一に、我々は農民の搾取と、住宅を購入するのに精いっぱいの人たちに対する税金で都市化を進めている。国民党は台湾へ移って以降土地改革を行ない、地主の土地を強制収用し、農民に与えた。農民は後に、土地を売買すること、賃貸に出すことが可能となり、政府は税を徴収した。価格上昇が100%の場合40%、200%なら50%などと税を賦課したが、一定程度農民に残したので、農民は手元に残った資金で企業を立ち上げることができた。台湾には多くの中小企業があるが、こうして形成された土地資本の基礎の上で企業を設立した。また、農民は金があるなら都市で住宅を購入することもできた。

中国の都市には年若い農民が3億人いるが、多くは高等学校(高中)を卒業後直ちに農村から出てきており、農村には帰れない。45歳以上の農民は30年後、40年後には寿命となる。結局、農村の住居は誰も住まなくなり、農村は衰え、消滅する。過去20年間ですでに100万の農村が消滅した。今後20年に、さらに100ないし200万がなくなると見られている。現在都市に滞在している3億人の農民のなかで自己の住居をもっているものはごく少数であり、大部分は工場の寝床、「城中村(都市の中の村)」、地下室、鳩小屋のようなところで暮らしている。今後20年、30年にさらに3億人が都市に流入するだろうが、住むところはない。一方、5年前、あるいは10年前に1平米5千元で購入した住宅が、平米5万元に値上がりしても税は取られない。政府は財を持つ者はそのままにしておいて貧しい人から税を徴収している。

政府はいつまでも土地を売り続けることはできない。都市化はいずれ終る。たとえば、ある都市に対し、中央は30平方キロの土地処分を許可したとする。5年間に、書記や市長は15平方キロを売り出した。次の5年間に次の書記や市長が15平方キロを譲渡した。全部処分したところで、中央はそれ以上の土地処分は許可しないだろう。どうなるか。
企業にとっても深刻な問題がある。50年の使用権を購入して起業したとする。50年後、その企業は貸与手続きを再び行い、一定額を納めなければならない。最初に購入した時は3万元、あるいは5万元であったものは20年もたつと大変値上がりしているであろう。そのとき購入費を負担できなければどうなるか。

土地使用の期限が切れると国有に戻るというのが法律だが、巨大な政治的・社会的危険がある。70年後 本来政府は人民のために奉仕するはずである。住居費が高騰すれば政府は貯蓄から経費を払って賄うべきである。もし、低下しすぎていれば政府は儲けている農民から貯蓄を取り上げればよい。これが農民を保護することになる。現在政府がしていることはその正反対である。価格が高騰していると飢餓売却をする。土地の価格が入札しても目標価格に達しなければ、政府は土地を渡さない。農民の土地は保護するのでなく、略奪している。

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