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2014.11.08

谷内国家安全保障局長と楊潔篪国務委員との合意

谷内(やち)正太郎国家安全保障局長が6日に訪中し、首脳会談の実現に向けて楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と調整した結果、合意に達し、日中両国はそれぞれ次の合意文書を発表した。

(日本側)
「日中関係の改善に向けた話し合いについて
              2014年11月7日
 日中関係の改善に向け、これまで両国政府間で静かな話し合いを続けてきたが、今般、以下の諸点につき意見の一致をみた。
1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守(じゅんしゅ)し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。」

この合意に関し、日中両国でそれぞれ反応が出始めている。日本では、尖閣諸島に関し日本政府が従来一貫して維持してきた「領土紛争はない」とする立場を変え、譲歩したとする批判や、中国では、この合意では日本側は尖閣諸島について従来からの立場をなんら変えていない、したがって習近平主席が安倍首相に会うのは賢明でないという意見である(7日付の『多維新聞』が紹介している)。

これについてとりあえず気が付く点は次のとおりである。
○この合意により日中首脳会談開催の地ならしが行われたと見てよいが、首脳会談開催を確定したものではなく、予定されている外相会談でもその確定のために協議が行われる。そして実現することが望ましい。
○尖閣諸島に関し「領土問題は存在しない」という日本の立場は変わっていない。そのことは中国側でも明確に認識しているであろう。今後対話と協議が行われるが、「情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避する」ためである。領土問題を話し合うためでない。
○日中間で意見が異なることについては国際法に従って解決を図ることを双方で確認できておれば、今回の合意はよりいっそう良いものとなったであろう。
○全体として、中国側は一定程度譲歩しているとみてよい。


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