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2013.11.11

イランの核問題に対する日本の協力」

イランの核協議は、イランの核開発の縮小と引き換えに同国への制裁を緩和するという第一段階は合意に近いと思われていたが、9日と10日の協議で合意は成立しなかった。しかし、交渉は決裂したのではなく、イラン側も米国やEUの代表も今回の協議で重要な進展があったと述べるなど積極的な意義があったことを認めており、20日には協議が再開されるそうである。
このように第一段階は進展しているが、イランの核協議が最終的な合意に到達できるか、この点についてはまだ不透明、というより、明らかな違いがある。米欧は、兵器に使われる高濃縮ウランの製造はもちろん、医療用などに利用される低濃縮度のものもすべて禁止されるべきだという考えであるのに対し、イラン側は低濃度のウラン製造を禁止される理由はない、原子力の平和利用は主権国家が有する権利であり誰にも奪われないと主張している。
ジュネーブでの協議と同時期に岸田外相がイランを訪問し、ロハニ大統領と会談した。日本はイランの核協議に参加していないが、イランの核開発には強い関心を抱いている。また、イランは日本の原子力平和利用、とくに国際的に核サイクルを認められていることに関心を持ち、イランは日本のようになりたいとさえ言っている。そのような事情があるので、日本としてイランの核開発問題の解決に協力する用意があるとの姿勢を示すことは重要なことである。
注目すべき点は2つある。岸田外相がロハニ大統領に対し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准を促したのは、イランは核兵器の開発はしないことを関係国に理解させるために一つの有効な手段となりうるとの考えからである。この条約は平和利用の問題は全く扱っておないので、低濃縮ウランに関するイランの主張の是非を問題にすることなく、核兵器は開発しないというイランの主張を国際社会に理解させるのに役立つわけである。
もうh1つのポイントは、国際原子力機関(IAEA)による査察に対しどのように対応するのがよいか、国際社会に理解してもらうにはどうすればよいかについて日本には経験とノウハウがあることである。これは核兵器国には分からないことであり、現在イランと核協議している国のなかではわずかにドイツでけが日本と同様の状況にあるが、ドイツはEUの一員であるため、日本のようにイランとの協力関係には立てない事情があり、したがって査察に対しどのように応じるかという肝心の問題について日本は独特の立場にある。
イランは今後長期にわたってIAEAの査察を受けることになるだろうが、日本の経験とノウハウが役立つのであり、イランが日本の例に見習うことが望ましい。また、日本としても岸田外相が述べたように、イランとIAEAとの交渉でイランを支援する用意があることを示すことも重要である。
イランの核協議が次の段階にまで進むには、査察について明確な合意が作られ、実行していくことが鍵となるだけに、日本が協力する余地は増大していくのではないかと思われる。


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