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2020.03.13

新型肺炎問題への中国の対応についての米メディアによる批判

 米国のメディアは、新型コロナウイルスによる感染問題への中国政府の対応に強く批判的な報道をしており、2月19日には、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者3人が国外退去処分を受けた。

 ワシントンポスト紙3月11日付は中国の宣伝工作について、要旨以下のような記事を掲載している。

 「中国の情報操作に関心が集まっている。中国政府は問題を克服できるというイメージを作り出し、世論の支持を集めようとしてきた。よいニュースは政府が適切に対応した結果であると印象付け、政府に対する非難をかわそうとした。

 中央テレビ(CCTV)や人民日報など政府系のメディアは、政府がウイルスとの「人民戦争」を戦っているという記事ばかりを報道し、新しい政策や規則の実施、資源の配分、状況の改善、危機に対応するのに中国の政治体制が有効であることばかりを強調している。

 中国の政府系メディアは新型コロナウイルスによる感染を自然災害のように報道するだけで、次のような重要問題を探求する姿勢に欠ける。
〇中国の権威主義的システムのために、社会秩序の維持が優先され、病気と闘うことよりも上司に気に入ろうとする風潮が生み出されているのではないか。
〇早期警戒システムが中央に届くのが遅れたのはなぜか。
〇初期対応においてトップの指導者はどのような役割を果たすべきであったか。
〇自由な情報が伝達されず、李文亮医師の警告が見殺しにされるなどしてウイルスの拡大につながったのではないか。

 また、中国の報道やインターネットは医師や看護師の英雄的な行動と犠牲、ボランティア活動など中国の団結を示すショーケースになっている。英雄的行動があったのは事実であるが、この種の報道ばかりをすると政府のアカウンタビリティについての疑問から目をそらすことになる。

 ある高校の教師は、生徒たちに「称賛ばかりではならない。疑問を忘れてはならない」「冬を春の始まりのように見なしてはならない」とスピーチをしたという。これはまさに中国の宣伝機関が行ったことに他ならない。彼らは失敗を反省するのでなく、災害を自画自賛の機会にしてしまった。

 一部のメディアは空虚な宣伝だけでなく、事実関係に基づいた報道をした。政府の権威主義的な宣伝でなくソフトな宣伝であり、ある程度説得力があった。多くの中国人はウイルスと闘った中央政府を誇りに思うようになった。怒りは武漢市と湖北省政府に向けられた。中国の人たちは、初期段階で感染をコントロールできなかったのはなぜかという問題に注意を向けなかった。

 中央の推奨を受けて2月26日に出版された『大国戦役』と題する本は、習近平主席がウイルスと戦うのにいかに情熱を注いだか、政府の戦いがいかに優れていたか、中国共産党のシステムがいかに優れていたかを誇示するだけの内容であった。しかし、この本は数日もたたないうちに引き上げられた。勝利を祝うのは早すぎる、また、あまりに厚顔無恥の自画自賛だとネットで批判されたためであった。

 ネットでは、武漢の新書記が、武漢市は「感謝の教育」をし、また共産党と習総書記に感謝しなければならないと発言したことに批判があふれた。多くのコメンテーターは、死亡者に対する弔意を表明し犠牲者の家族の忍耐に感謝するのが先だと論じた。武漢市書記の発言はその後記録から削除された。習近平主席は武漢を訪問した際、武漢の人びとに感謝すると述べた。ネットでの批判を意識した発言であった。政府が行う宣伝には限界がある。

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