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中国

2018.11.29

中国の、外には見えない緊張感

 最近、中国の政治状況は緊張感が増しているという見方がある。危機的状態に陥っているというのではない。かねてから、中国崩壊論と呼ばれる言論が出ては消え、消えては出ていたが、そのようなものではなさそうだ。中国の政治体制は基本的には強固であり、民主化運動の爆発を抑える武装警察は安泰だ。
 問題は中国共産党の官僚主義にある。これまで目覚ましい経済発展を支えてきたのは官僚だが、腐敗で国家に大損害を与えているのも同じ官僚だ。当然、共産党には厳しい目が注がれる。
 民主化運動が爆発することはなさそうだが、官僚や格差に対する不満は内に向かって沈殿していく。中国がかかえる病根は根が深そうだ。

〇11月21日付の『多維新聞』(在米の中国語新聞)の論評。

「2018年以来、中国の内外の環境は不安定化している。経済成長の鈍化、将来への不安など新旧の問題が集中的に噴出した感がある。
 
 中米貿易戦争はさらに激化する傾向にある。経済への影響だけでなく、外交面でも従来の戦略・方針に疑問が生じている。
不安感は臨界点に近づいている。何か小さいことでも、それがきっかけとなって大問題に発展することがある。

「国進民退論」「重慶大学入試政治審査問題」「メディア規制のさらなる強化」などは社会の感情的爆発に発展する危険がある。いずれも習近平主席が介入しないと収まらないのは問題だ。
(注 「国進民退」とは国有企業が強くなり、民間企業が弱くなるという意味である。
   「重慶大学入試政治審査問題」とは、11月初旬、重慶市の大学入試において「政治審査」、つまり政治傾向が審査の参考とされることとなって始まった紛糾である。)

 中国を支え、動かしている実務官僚に問題が発生している。
 第1に、実務官僚は中央の政治を見ながら仕事をし、あるいは手を抜くなどしている。さる7月に起こった「梁家河大学問」の研究がその例である。「梁家河」はかつて習近平が7年間滞在した場所であり、現在全国の注目を浴びている。陝西省の社会科学連合会は最近「梁家河」をキーワードとして、習近平思想との関連を研究することを呼びかけた。そのため官僚たちは中央の政治的雰囲気を探ろうとして躍起になっている。しかし、このような傾向に対し、逆に、個人崇拝に対する激しい批判が起こり、大問題となった。
 
 第2に、官僚は「左寄り」を装う保身傾向を生んでいる。「右寄り」と見られると危険だからだ。

 第3に、「出すぎると批判される恐れがあるので、何もしないほうがよい」という傾向を生んでいる。同じく保身のためだ。

 これらは官僚に限ったことでないが、実務を担う彼らの間でそのような傾向が生じると影響は大きい 中央の政策も正しく実行されなくなる。「官僚は新しい混乱の原因になっている」と指摘する者もいる。」

〇文化革命の再評価
 文革において盛んに使われた大字報(壁新聞)を積極的に評価しなおそうとする動きがある。

 北京ではさる11月17日、数十枚の新しい大字報が現れた。地方でも同様のことが起こっており、たとえば、河南省鄭州の人民広場でも多数の大字報が張り出された。それには「鄭州毛沢東思想宣伝隊」の署名が入っていた(注 文革時にいわゆる紅衛兵などはこのような形で活動した。今でも恐ろしい記憶として残っている)。
 この夏、深圳の工場でも左派系の労働者がいわゆる「維権(権利擁護)」を掲げ、共産党の官僚に反対するデモ行為を行った。鄭州毛沢東思想宣伝隊も参加した。

 文革を再評価すべきだとする運動は歴史教科書にも影響を及ぼし、文革が混乱をもたらし、破壊的行動であったなどの傾向を薄める修正が行われた(場所は鄭州か)。

 文革を再評価する人たちは、腐敗の蔓延を問題視し、汚職官僚の非合法的所得を公にしようなどと呼び掛けている。
 
 中国の一部では「ポスト鄧小平」から毛沢東に回帰する傾向が出てきており、「揚毛抑鄧」とか、「非鄧小平化」などと呼ばれている。ただし、中国の状況は複雑であり、いまのところこのような傾向が全国に満ちているわけではない。

〇北京大学での学生逮捕
 最近(『多維新聞』11月17日による)、警察が北京大学に入り、深圳の「維権」運動に参加した学生を逮捕したので大騒ぎになった。北京大学党委員会書記に新しく就任した邱水平が、学生に不穏な動きがあるとして強くコントロールしはじめた結果である。北京大学の党委員会は「巡査弁公室」と「内部統制管理弁公室」を設け、統制を強化している。インターネット上で学生が発表する記事も監視している。

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