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2018.03.16

中国の武装警察の改革

 中国の武装警察は国内の治安維持を任務としており、国防を担う人民解放軍と兄弟のような関係にあるが、治安維持以外の任務も持っており、その内情はかなり複雑である。在米の華字紙『多維新聞』3月14日付は、武装警察の経緯と今次全人代での改革を紹介している。

 1983年、人民解放軍の国内担当部隊と徴兵制の武装(注 新兵の訓練のことか不明)、辺境の防衛、消防警察などを統合して武装警察隊が編成された。当時、その主要な指導者は国務院によって任命されていた。

 2年後、人民解放軍の「基建工程兵」のうちの水利電力、交通、黄金の部隊が武装警察に編入された(注 中国はもともと金の算出が少なかったので人民解放軍に金の採掘を任務とする部隊を作っていた)。

 さらに、1988年には東北地方の武装森林警察、1999年には「14乙種陸軍歩兵師団」が武装警察に編入された。

 これらの部隊は、武装警察への編入後も国務院の指示を受けていたが、1999年から中央軍事委員会の指示も受けるようになった。

 2015年末の時点で、武装警察は国内部隊、4大警種部隊(黄金、水利電力、森林、交通)、公安部隊(公安辺防、公安消防、公安警衛)などを含め、総員数は数十万人になっていた。

 2015年12月、中共中央は人民解放軍と武装警察について、2017年末までに大規模な人事異動、司令部・政治工作部・総後勤部・装備部・規律検査委員会の大改革を行うという野心的な計画を発表した。この改革が必要とされたのは、武装警察のなかでも特に公安は国務院の公安部と軍事委員会の両方から指示を受けていること、地方政府も武装警察に対して一定程度指揮調整権を持っていることなど複雑な状況になっていたからである。武装警察は政治闘争においても悪用されることが生じていた。

 そこで、2018年1月1日から、武装警察は中共中央と中央軍事委員会の統一指導下に置き、国務院の指図は受けないこととなった。習近平主席は新しい武装警察の任務は国家の政治安全と社会安定を守ること、海上の安全を守ること、および防衛の3つであることを明確化した。
 今次全人代で決定される国家機構の改革では、武装森林部隊と公安消防部隊は国務院の中へ戻されることとなった。
 ただし、公安警衛部隊と公安辺防部隊の指揮命令系統はまだ調整中であり、明確になっていない。公安警衛部隊の任務は、外事活動など警衛であり、公安系統(注 国務院公安部のことか)に戻るとも言われている。
 
 

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