平和外交研究所

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2015.12.09

(短文)核廃絶に関する日本提出決議の採択

 12月8日、国連総会において我が国が107カ国の共同提案国を代表して提出した核廃絶決議案が採択された。我が国は毎年この決議案を提出しているが、今年は一つの特徴があった。
 世界の指導者に被爆地訪問を促していることだ。目的は、被爆地を訪問することにより、核兵器がいかに恐ろしい、非人道的な兵器であるかを理解してもらうことにある。
 日本ではなかなかわかりにくいことだが、世界の人たちは、核兵器が非人道的だということを必ずしも理解していない。軍縮に携わっていても分かっていない人がいる。何回も繰り返して恐縮だが、わたくしは軍縮大使時代、核の非人道性を分かっていない欧州のある主要国の大使と激論を交わしたことがある。

 さる5月、NPT(核兵器不拡散条約)の、5年に1回の重要会議(「再検討会議」と言う)で、日本は同じ文言を会議の結論に入れようと努めたが、中国が猛反対したため成功しなかった。
 しかし、日本政府はそれであきらめることなく、今回の国連総会でふたたび試み、成功した。粘り強い努力のたまものだったと言えるだろう。

 この被爆地訪問と同じく核兵器の非人道性を確認・確立しようという動きが、この決議とは別に過去2年来続けられてきた。非人道性確認国を拡大する運動であり、こちらも賛同国が増加し、また核兵器国も米英仏などはNGOの強い後押しを受けて拒絶反応を示さなくなっていたが、
 他方、運動に参加する国が増加していくと核兵器の使用禁止に発展する恐れがあると警戒心を高めていた。
 国連総会で我が国が主導した決議案に、昨年まで米英仏などは賛成していたが、今回は「棄権」した。半歩後退である。そのように態度を変えたのは、やはり非人道性確立運動に警戒していたからである。
 

2015.12.06

(短評)テロ事件と無人飛行機

 パリにおける同時テロ事件が引き起こした波紋の一つだが、フランス政府は原発の警備を最大限にまで強化することにしたそうだ。フランスの治安機関には1万名のテロ容疑者のリスト(S-ファイル)があるが、EDF(フランス電力)はその最新版を持っていないので、人物確認には限界があると言う。

 本研究所HPはかねてから原発に対するテロ攻撃の危険性、とくに無人飛行機を使った攻撃などに警鐘を鳴らしてきた(2015年10月6日の「(短文)ドローンの危険性」など)こともあり、フランスでのこのような動きにはとくに関心を覚える。

 おりしも、日本ではドローンの競技会が開催されている。米国では、ドローンを使って注文された品物を短時間で配達するネット販売が盛んになっている。どうしてもこのようなことが報道されがちだが、ドローンを悪用した犯罪の危険性について全国民が警戒心を高めるべきだと思う。

2015.11.30

(短評)トルコによるロシア機撃墜

 トルコによるロシア機撃墜事件をめぐって両国関係が悪化し、ロシアはトルコに謝罪を求めるとともに、ISの石油をトルコが購入していると非難している。
 一方、トルコはロシア機がトルコの領空を侵犯し、トルコ側からの警告を無視したと主張し、謝罪に応じないので、ロシアはトルコに対する制裁としてビザなし渡航の停止、トルコからの輸入の制限、文化交流の中止、トルコ企業のロシア国内での活動の制限などを実施する方針だ、あるいはすでに実施したと伝えられている。
 この間、トルコのエルドアン大統領はプーチン大統領との会談を希望しているが、プーチン大統領は応じていない。しかし、パリで開催されるCOP21に両人とも出席するので会談が実現するかもしれないと言われている。
 ロシアかトルコか、いずれの主張が正しいか我々には分からない。ただ、トルコは事件についてNATOで説明しなければならないので、虚偽の報告は困難になる一方、ロシアにはこのような制約はないという違いがあるとは言えるだろう。
 一方、かりにロシア機がトルコ側を挑発したとしても、しょせん十数秒間の侵犯であり、それを撃墜するのは適切であったか疑問であることも指摘できそうだ。

 今回の事件についてはこのようなことを含め、多くの人が様々な感想を抱いているだろうが、私は次のような原則を忘れないことが重要だと考える。
 第1に、上空や海上で起こったことの真相は分からない。日本の領海内でも海難事件が発生することがあるが、当事者の主張が対立するのは珍しくなく、真相の究明は裁判で初めて可能になる。裁判結果が出てもなお疑問が出ることもある。ましてや、国際間で起こった事件については、真相の究明は困難だ。
 したがって、事件にかかわる国の政府は、自国民の行為は絶対正しかったという前提に立たないで真相を究明する姿勢が必要だ。自国民を批判するのではない。誰にでも間違いは起こりうるということを国際間でも忘れないということだ。
 第2に、どの国の政府も国内の(偏狭な)ナショナリズムの突き上げをうまく処理する必要がある。ナショナリズムに迎合する行動をとらないことが肝要だが、実際にはその点で疑問があることがあり、ひどい場合には、ナショナリズムをあおる結果になる行動も見られる。
 第3に、国際の平和と安定を脅かす問題であれば、国連の安保理が取り上げ、事態の収拾を図る。これが国際社会の仕組みなので、それを利用すべきである。安保理以外に法的な判断をする国際司法裁判所、仲裁のための国際仲裁裁判所もある。さらに地域的な安全保障の仕組みを利用できる場合もあろう。今回の事件についてはまだそのような国際的仕組みに頼るまでに至っていないようだ。

 以上のような原則から現在のロシア・トルコ間の紛糾を見ると、双方ともお互いに相手方の要求を一定程度受け入れる余地がありそうだ。プーチン大統領は、トルコ側の謝罪を前提条件としないでエルドアン大統領と会談すべきであるし、エルドアン大統領は、トルコ側に非は全くなかったと突っぱねないで、トルコ側にも行き過ぎがあったかもしれないという前提で対応する余地があるように思われる。
 今回の事件は単独で見るべきでなく、ISとの戦いとの関連、さらにはウクライナ問題に関して西側諸国が制裁措置を取ったこととの関連など事件の背景にある複雑な諸要因についての考慮も必要だろうが、上にあげた3点は両国に当てはまる基本原則だと思われる。

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