平和外交研究所

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2017.03.24

核兵器禁止条約交渉に日本は参加すべきだ

 国連では3月27日から核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約の制定をめざす交渉が始まる。報道によれば、米国のNSC(国家安全保障会議)のフォード上級部長は、3月21日、同条約について要旨次のように発言した。

 「核兵器禁止条約は世界をいっそう危険で不安定にする。核禁止条約ができても一発の核兵器の減少にもならず、加盟しない核保有国には新しい法的義務を課すことにならない。禁止条約は米国と欧州やアジア太平洋地域の同盟国との拡大抑止を意図的に弱めようとしているようだ。国際平和を長く下支えしてきた戦略的な安定を損なう。禁止論は非現実的な期待に根ざしている。
 核兵器なき世界という目標が今の安全保障環境に照らして現実的か再検討中だ。」
 
 日本の立場は難しい。政府は、核保有国が参加しない交渉には実効性がないとの考えであり、条約交渉に参加するかどうか、3月22日の時点でも「検討中」だと別所国連大使が説明している。

 日本はどの国よりも核兵器の廃絶を望んでいる。しかし、核の抑止力に依存せざるを得ないのも事実であり、核を禁止すればこの矛盾が解けるのではない。また、条約で禁止してもすべての国が順守する保証はないし、条約に参加しない国には禁止の効果は及ばないという問題もある。

 ただ、条約交渉には参加すべきだと思う。条約名は「核兵器禁止条約」と言っても、具体的な内容はこれから交渉して決めていくのであり、日本の立場を害さないで条約ができる可能性はあるかもしれない。すくなくとも、この重要な問題については条約内容が明確になるまで日本として最大限の努力をすべきだと思う。

2017.03.23

(短文)教育勅語の非国際性

 教育勅語が話題になっている。すでに失効しているが、あらためて国際性の観点から見なおしてみた。
 
 そもそも教育勅語は国家、天皇(家)、国民(「臣民」と表現)の美徳、教育理念、義務などを述べたものであるが、すべて日本のことであり、世界の教育を論じたものでない。
 ただ、末尾で、「これらのことは天皇の祖先からの遺訓であり、国民が順守すべきである。このことは昔も今も変りがなく、かつ国の内外を問わない」と述べていたので、国際的な観点を完全に無視してはいない形になっていた。
 しかし、外国は勅語の内容を知らないし、内容に賛同することもないだろう。勅語のような考えの外国人がいるかもしれないが、それはあくまで例外である。とすれば、日本について述べていることが「内外を問わず正しい」というようなことは言えないはずであった。
 
 教育勅語が発布されたのは明治23年(1990年)、日本が西洋から近代文明を取り入れて富国強兵につとめ、国力が急上昇している時であった。我が国の「国体」や精神を高らかに歌い上げたいという気持ちは分からないではないが、今から考えれば、採用された「内外を問わない」という言葉は勅語の主旨にも合わないし、また事実でもなかった。

 ちなみに、五箇条のご誓文は、そのうちの一つが「智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ」、すなわち、「知識を世界から学び、天皇が国を収める基礎を築いていこう」というもので、教育勅語よりはるかに国際性に配慮していた。

 戦後制定された教育基本法の第二条は教育の目標として、やはり5つの項目を掲げており、そのなかに(第5項目)「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」が含まれていた。

教育勅語を参考までに掲げておく。
「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ俱ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト俱ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽」

2017.03.22

(短文)日露2+2

 日本とロシアの外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)が3月20日、東京で開催された。
 2プラス2は、米国との間では歴史が古く、ほぼ毎年開催されている。日本にとってこれに次ぐのは豪州との2プラス2であり、2007年に始まり、これもほぼ毎年開かれている。
 ロシアとの間では、2013年、安倍首相とプーチン大統領との合意に基づき初めて2プラス2が開催された。その時議題となったのは部隊間交流、演習へのオブザーバーの相互派遣、アデン湾での共同訓練、サイバー攻撃への対処などであった。
 しかし、次の年にクリミア併合が起こり、そのため2プラス2は開かれなくなっていた。
 ロシアは日本だけでなくほかの国とも類似の協議を行っているが、いずれもクリミア併合の影響を受け開催されなくなっており、再開するのは今回の日ロ協議が初めてだそうだ。
 
 今回日本がロシアとの2プラス2を開催することとしたのは、日ロ間の信頼醸成を強化し、ひいては平和条約問題への地ならしとなることを期待してのことだろう。今回の協議でこの問題がどの程度話し合われ、進展したか。発表では、北朝鮮の核・ミサイル問題については双方が連携する方針で一致したが、ロシア側は北朝鮮を念頭に置いた米国のミサイル防衛(MD)システムに懸念を表明し、日本側はロシアの北方領土へのミサイル配備に抗議したそうだ。
 このような意見の違いは今回の協議開催前から予想されていたことであり、新味はない。それより大事なことは安倍晋三首相とプーチン大統領の会談を来月下旬、ロシアで行うことを確認したことであった。
 要するに、今回の2プラス2を開催したことの意義は、両国間の信頼関係を強化することもさることながら、首脳会談のおぜん立てをすることにあったようだ。
 米国でトランプ新政権が発足したことにより米ロ関係が改善される可能性が出てきた。このようなことも日露間での首脳会談や2プラス2を後押ししている。

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