平和外交研究所

ブログ

オピニオン

2019.11.06

日韓間の現状を打開しようという動き

 悪化している日韓関係の改善を図ろうとする試みが韓国政府からいくつか出てきている。まだ、本格的な関係改善の動きが始まったわけではないが、日本政府としても前向きの姿勢を示すことが望ましい。

 タイで行われているASEANの関連首脳会議で、11月4日午前、安倍首相と文在寅大統領が、約11分間、一対一の会談を行った。控室で、文在寅大統領が安倍首相に「座って話し合おう」と促し、対話が急きょ実現したという。
 具体的にどのような話をしたか。日韓双方が流している情報は一部一致していないが、それは大きな問題でない。文大統領からの誘いであったことは確実なようだ。

 文喜相(ムンヒサン)韓国国会議長は、さる2月に米メディアに対し問題発言を行い不必要な摩擦を生じさせた経緯があったが、10月4日に東京で開催される20カ国・地域(G20)国会議長会議を前に、朝日新聞とのインタビューで、「(自分の発言により)心が傷ついた方々に、申し訳ないとの心をお伝えしたい」と謝罪した。文議長は、「慰安婦問題は心の問題だと思っている。日本から心のこもった謝罪の言葉が一つでもあれば、解決できると考えている」とも述べており、全面的に悪かったと言っているのではないが、今回の発言は積極的に評価できる面があった。

 さらに文喜相氏は5日、早稲田大学での講演において、徴用工問題について日韓両国の企業と国民による寄付と、慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づいて日本政府が「和解・癒やし財団」に拠出した10億円のうち使われなかった残金を財源に基金をつくり、原告に「慰謝料」を払う法案をまとめたと表明した。

 鄭景斗国防相は4日、韓国国会で、23日に失効する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、「われわれの安保に少しでも役に立つなら、維持されなければならないという立場だ」と述べた。ただし、同相は日本側がとった輸出規制の強化措置の撤回が条件だとの趣旨も述べたと報道されているが、鄭国防相の発言は前向きの印象を与えるものであった。

 GSOMIAについては、日韓の事務方が水面下で協議していると報道されている(東亜日報)。
 また、米国は韓国が翻意することを強く望み、国務省のスティルウェル国務次官補を派遣し韓国に翻意を促している。米国がGSOMIAに関する現在の状況に強く不満であることは明らかだ。

 韓国側からの動きに対し、日本側では、安倍首相が韓国側が国際法違反の状態を解消すべきであることなど厳しい見解を維持しつつも、先般の天皇の即位礼に参列した李洛淵(イナギョン)首相との会談でも、また、今回の文大統領との会談でも日本側として関係改善を望んでいる姿勢は示した。

 GSOMIAについては菅官房長官は6日、「賢明な対応を求めていくことに変わりはない」と発言したが、日本としては米国と同様、GSOMIAを維持したほうがよいという方向性を示したほうがよいので、たとえば河野防衛相から「日本としてGSOMIAを維持することに異議はない」とだけでも発言しておく方が得策だと思われる。
2019.10.31

オリンピックのマラソン・競歩開催地問題

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの準備状況に関する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と大会組織委員会、東京都などとの合同会議が10月30日、東京都内で始まった。3日間の予定だという。

 最大の問題はマラソンと競歩の開催地であり、IOCは、猛暑の中で走る選手への配慮を理由に東京から札幌に移すことを決定したと発表しており、今次合同会議にIOCを代表して出席したコーツIOC副会長は、その決定について東京都に説明し、理解を得たいとしている。

 これに対し東京都の小池百合子知事は、冒頭のあいさつで「東京都民1400万人の代表」と前置きの上、約10分にわたって英語と日本語で訴え、「一方的に札幌開催が発表されたことに都民は衝撃を受けた。都をはじめ、都議会にも事前に説明がなかった。開催都市の長として、都民の代表として東京開催を望みたい」と熱弁をふるった。

 日本中が本件問題に注目し、メディアは連日報道するとともに、論評を加えている。その中ではIOCの権限、バッハ会長の考え、国際陸上連盟(特にコー会長)の意向、選手の受け止め方、札幌に変更された場合の追加費用の負担、さらには小池知事が来年知事選挙を控えていること、森組織委員会会長との確執、カジノ誘致問題などとの関連も指摘されているが、それらについてはよく分からないことが多いので、本稿では一点だけ、国際的な視点から論じたい。

 メディアで論評している方々の中には、日頃すばらしい論評をしている人が何人もいるが、本件に関しては、小池知事の姿勢と発言が「感情的だ」とか「小池知事はかたくなだ」とか「落としどころを考えないで追加費用を払わないと言っている」などとコメントをしている。

 しかし、国際的な視点で見ると、これらのコメントは説得力のあるコメントか疑問である。

 第1に、「1400万都民を無視した」ということは感情的なことでなく、国際社会でも通用する指摘である。IOCがこの点を無視すると、国際社会は黙っていないだろう。したがって、また、バッハ会長もコーツ副会長もそのことに頭を悩ましているのは間違いない。コーツ氏は、東京の了解を得られなければバッハ会長のもとへは帰れないと言っていると伝えられている。そうだろうと思う。

 第2に、IOCがいったん決定したことは変えないというのは思い込みに過ぎない。国際社会では決定をし直すことはいくらもある。スポーツにおいてもルールの修正が行われている。最近日本で急激に人気が出てきたラグビーもルールが変更された。たとえばトライの場合の得点であり、修正を重ねて多くの人が楽しめる競技となったのである。

 小池知事の反論は国際的に説得力があると思う。日本では、「落としどころを考えて行動すべきだ」とよく言われるが、国際的に通用する論理で主張を展開することは非常に重要である。今回の場合に、「札幌は選手の安全を考えれば当然だ」という意見が多いが、札幌は安全、東京は危険」というのはあまりにも単純な思考であり、国際的に議論されれば容易に崩れる主張だと思う。かといって、札幌より東京が安全だというのではないが、国際的に説得力のある主張が必要だ思うのである。
2019.10.28

自衛隊の中東派遣に関する発表

 さる18日、菅官房長官は、日本政府が自衛隊を中東地域へ派遣することを検討することになったと発表しました。
しかし、その発表内容は大変問題があります。ザページへ寄稿した一文をご覧ください。

こちらをクリック

アーカイブ

検索

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.