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2014.10.20

日米防衛指針の中間報告2

日米両国政府は10月8日、「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告」を発表した。
10月5日に本ブログに掲載したコメントに加え、同報告が「日米同盟はグローバルな性質を持つ」と複数回指摘していることも注目される。
「日米同盟」とは、常識的には日米安保条約により結ばれている日米間の関係、すなわち安全保障に関する日米の関係とみなされているであろう。この条約はもともと日本がサンフランシスコ平和条約で独立を回復するのに際し日本の安全を確保するために結ばれたものである。これが一体いつの間にグローバルな性質を帯びるに至ったのかと疑問を抱かれても不思議でない。それどころか、今回の指針見直しの最大眼目である、両国間の防衛協力を世界全体に拡大するために都合よく待ちだされた説明であると思われるかもしれない。
一方、外務省は「日米同盟」を必ずしも安全保障のための協力に限ってはいないようである。外務省のサイトに掲げられている「日米同盟:未来のための変革と再編(骨子)」では、「日米同盟は、日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に対処する上で重要な役割を果たす」とし、日米同盟の重点分野として次の2つを示している。
•日本の防衛及び周辺事態への対応(新たな脅威や多様な事態への対応を含む)
•国際的な安全保障環境の改善のための取組

つまり、日米同盟には両国の問題に限らず国際的な面があると外務省は言っているのである。では、この「国際的な安全保障環境の改善のための取組」とは何か。外務省のこの説明資料からは明確でないが、米国とともに多国籍軍として協力することなどは日本はできないはずである。一方、政治的な協力あるいは技術面での協力などはありうる。
いずれにしても、今後は「グローバルな性質の日米同盟」とは何かを明確にしておかなければならない。そのプロセスを経ることなく、「グローバルな性質の日米同盟」という御旗だけで日米両国の安全保障面での協力が世界全体に拡大されてはならない。2国間の関係を超え、国際的に日米両国が協力できることは何か、また、日米両国は多国籍軍などで協力できるかいなか、できるならばどのような協力かを先に明確にすることにより、「日米同盟」の内容が決まってくるはずである。

米国の一部プレスからは、想定された範囲内であるが、日米間の防衛協力に関する中間報告はあいまいな表現で偏っているとする指摘が出ている。米国の期待は、日本が米軍の軍事行動に協力することにある。これは米国として至極もっともなことである。しかし、日本はそうではない。日本は国際的に協力すべきであり、何でもカネで済ますのは許されないが、軍事面で協力できないことは厳然とある。それをなし崩し的に認めてしまおうとしてはならない。また、そのためには、今後の日本の防衛のあり方について透徹した分析に基づく検討が必要である。

2014.10.05

日米防衛指針の中間報告

政府は、年末に予定されている、日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)に関する中間報告において、1997年に策定された現行の指針が日米の防衛協力を日本の周辺(「周辺事態」)に限っていた制限をなくすそうである(『朝日新聞』10月4日付)。政府は、関連法案が国会で審議される際、「周辺事態」は必ずしも地理的概念でないと説明していたので、新指針についての報告が行われ、「周辺事態」の概念がなくなっても自衛隊の行動範囲を変更するのではないと説明するかもしれないが、「周辺事態」とは、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重大な影響を与える事態」と法律で定義されている。「周辺事態」という区分がなくなれば、地理的限定がなくなることは明らかであろう。7月に決定された集団的自衛権等に関する閣議決定で、他国に対する武力攻撃が行われた場合にも一定の要件を満たせば自衛隊が出動することが可能になったこととあいまって、自衛隊が米軍と協力する範囲について限定がなくなれば、たとえば中近東で米軍が行なう活動に自衛隊が参加することが可能になることを意味している。
そうなると、米国が要請してくれば、イラク戦争のような場合に自衛隊が米軍に協力すべきか問われることになる。しかるに、閣議決定された新方針に従えば、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」などの要件が満たすことが条件であるが、自衛隊を派遣することはできる。さらに、日米間で合意された(現時点ではまだ合意前であるが)日米防衛協力のための指針でも自衛隊を派遣できるわけである。
日本は協力を拒否できるか。法的には、集団的自衛権を行使するか否かは日本の権利であり義務でないので拒否できるが、法的に可能であるにもかかわらず拒否するのはよけい困難であろう。
米軍の活動に自衛隊が参加する場合に実態的に何が問題となるか。米軍は紛争のあるところでも活動する。イラクもそうであったし、シリアについても米議会では軍事介入すべきであったという意見は強い。世界政治における米国の在り方から見て、紛争があり、それに巻き込まれるから行動しないというのはありえないことである。もっとも米軍は問題があれば必ず出動するのではない。米国が軍事介入の是非を検討したが、結局しなかった例はいくつもある。北朝鮮との関係でも検討したがやめたことがあった。しかし、米軍が行動しない理由は紛争に巻き込まれるからではない。成功の可能性がどのくらいあるか、米軍のこうむる損害の大きさなど諸般の事情を勘案した結果である。
日本の状況は大きく異なっている。紛争を起こしてはならない、紛争に巻き込まれてはならないというのは、日本国憲法の根幹であり、またそのような制限を自らに課すことについては、大多数の国民が支持している。「絶対的平和主義」と揶揄されるような硬直した考えを取らない人も、自衛隊の積極的意義を認める人も、また、国連の平和維持活動には自衛隊も他国と同じように参加、貢献すべきであるという考えの人も、紛争に巻き込まれてはならないことを心底から受け入れるのではないか。
この重要な国民的規範を閣議決定の新方針や日米間防衛協力の新指針が変更するのは認めるわけにはいかない。これこそ憲法を改正して自衛隊が米軍と同じように行動できるようにすべきか、国民に十分な議論の機会を提供し、その意見を聞くべきことである。

2014.10.03

日朝協議9/29

9月29日に中国の瀋陽で日朝協議が行なわれ、その後10月1日に日本政府から拉致被害者家族に対する説明が行なわれた。日朝協議で北朝鮮の宋日昊大使は伊原アジア大洋州局長に対し、「日本側が平壌を訪問して特別調査委員会のメンバーと面談すればより明確に聴取できるだろう」と語った。
これに対し家族からは日本の担当者が訪朝することに反対する意見が大半を占めたそうである(『朝日新聞』10月2日付)。北朝鮮側の対応に対する疑念、平壌に行けば相手の思惑にはまるおそれがあるという懸念はまことにもっともであるが、一方、次のようのことを考慮すれば、平壌に行くのがよいと思う。
○日本政府は対北朝鮮制裁を続ける一方、日朝間で担当者が交渉するというこれまでの方式では大きな進展を得るのは困難ではないかと思われる。この方式では、北朝鮮側が誠実に対応しているか、判断しようにも交渉に出てくる北朝鮮側の担当者の説明しかないからである。
○日本政府の担当者が平壌へ行けば、日本側の要求、考えなどを、人を介することなく、特別調査委員会に対して直接伝えられる。また、北朝鮮側の状況を、北朝鮮側の担当者の説明よりよく知ることができる。
○金正恩第1書記の考えを知る上で参考になる可能性もある。

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