平和外交研究所

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朝鮮半島

2015.04.13

日韓安保対話の再開

THEPAGEに13日掲載された。

 きたる14日、5年ぶりに日本と韓国の安全保障対話が行なわれることになりました。これには両国の外務省と防衛省の担当局長などが参加します。
 これとは別に、わが防衛省と韓国国防部の間の対話・交流があります。実は、日韓安保対話が開催されなかった5年間においても両国防衛省間の対話・交流は継続されており、たとえば、防衛次官級の会談は2014年3月、その前は13年11月とほぼ毎年行なわれていました。また、両国の防衛省は海上の安全維持(海難救助、捜索)、テロ対策、海賊対策、平和維持活動(PKO)などについて共通の関心を有しており、日韓両国と同盟関係にある米国を含め3カ国で共同訓練や演習を毎年行なっています。
 一方、外交当局者と防衛当局者がともに参加する安全保障対話においては、より広い観点から、北朝鮮問題のような安全保障と密接に関連している外交・国際政治を含めて話し合いが行われます。東アジアの平和と安定に大きな責任を有する日韓両国はこのような対話を通して情勢を正しく分析・把握し、適切に対応していくことが必要です。両国間の関係が悪いからといってこのような努力を怠ると、お互いの理解、信頼関係が損なわれていく恐れがあります。

 日韓両国間の安保対話は1998年に始められて以来毎年開催されてきましたが、慰安婦問題などを巡る両国関係悪化の影響を受け、2009年を最後に開かれなくなりました。
 しかし、その間に中国の軍事力の大幅増強、ロシアではメドベージェフ首相による国後島訪問、北朝鮮で金正恩第1書記の登場など大きな変化が生じ、国際情勢は複雑化しており、日韓両国が緊密に連携し、協力して対処していかなければならないことが増大しています。
 また、日韓両国は米国との同盟関係を維持するために情報の保護を強化する必要があり、そのための協定を2012年6月に締結する予定でしたが、直前になって韓国側から要請があり、延期されました。韓国国内で反対意見が強くなったためだと思われます。このような状況は一刻も早く是正する必要があります。
 おりしも今年は日韓国交正常化50周年であり、両国間の関係を将来に向かってさらに発展させていくための基礎を固めるのに節目となる重要な年です。
 これらの諸事情を背景に、さる3月に開かれた日韓外相会談で、安保対話の再開に向けて調整することが合意され、ソウルで外務・防衛両省の局長級対話が再開されることになったのです。また、その後には、日韓両国の防衛相会談が予定されていると報道されています。両国の指導者が、国内の消極的意見が強い中で冷静に、かつ積極的に行動した結果であり、非常に意義深いことと思われます。

 再開される安保対話において、韓国側は、日本政府が現在進めている新しい安全保障関連の法案準備の状況や、日米両国が4月末に(27日とも言われています)改定する予定の「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)に強い関心を示し、日本側に説明を求めてくるものと思われます。
 また、北朝鮮関係の諸問題も今回の安保対話の主要議題になるでしょう。北朝鮮の核・ミサイル問題は依然として解決しておらず、北朝鮮は最近も盛んにミサイルの発射実験を行なっています。米国は北朝鮮の脅威に備えるため、新たに高高度迎撃ミサイルシステムを韓国へ配備することを検討していると伝えられています。
 日本側はこれら核・ミサイル問題や金正恩第1書記の指導体制の安定性について韓国側の見解を聴取し、また、日本側の考えを説明するでしょう。
 さらに、日朝関係の現状と今後の対応方針なども説明するものと思われます。とくに韓国は、多数の家族が南北に分断されている関係もあり、日本の拉致問題に強い関心を抱いています。

2015.03.06

慰安婦問題は日韓両首脳の直接会談で打開を図るべきである

 朴槿恵大統領は3月1日の「独立節」記念式典で演説し、日韓関係の重要性を指摘しつつ、慰安婦問題の早期解決を日本政府に促した。 
 日韓関係全般については、国交正常化50周年の意義を認め、日韓両国は重要な隣国であり、正常化後の交流、協力の成果は「驚くほどだ」と認め、さらに「より交流できるようにするのも国がすべきことの一つ」と語るなど朴槿恵大統領は非常に積極的であった。友好的であったとも言えるだろう。ある日本政府関係者は「国交50周年を意識し、必要以上に日本を刺激しないという意思を感じる」と語ったそうである。
 2月22日の、島根県での竹島の日式典に内閣府の政務官が出席したことについて韓国外務省が抗議した直後であった。韓国では支持率アップのために竹島問題が利用されるおそれがあるが、朴槿恵大統領の今回の演説にそのようなことは見られなかったことは留意しておきたい。
 この間、日本外務省はホームページ上の韓国紹介文から「自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する」という表現を削除し、「最も重要な隣国」とだけ表現していた。韓国が日本にとっても最も重要な隣国であることを再確認したのは適切なことである一方、基本的価値を共有すると言い切るには疑問がありすぎるということであろう。日本の新聞記者に対する対応などにかんがみればやむをえない修正であると思う。

 一方、慰安婦問題について朴槿恵大統領は、「必ず解決すべき歴史的な課題」「(元慰安婦の)平均年齢は90歳に近く、名誉回復の時間はいくらも残されていない」などと早期解決を重ねて求めた。これまでと同じ姿勢である。
 この問題については、安倍首相が朴槿恵大統領と直接話し合うのがよいと思う。安倍首相はこれまで未来志向の話には応じる姿勢を示しているが、慰安婦問題については度重なる朴槿恵大統領の要請にまったく応えていない。それには理由があるのだが、そこで止まっているだけでは両国関係はよくならない。そこから一歩を踏み出すことが必要であり、そのために両首脳は直接話し合い、交渉するのがよいと思うのである。
 かりに両首脳が話し合うこととなると、安倍首相から話すべきことは次のとおりである。
①日本政府は正式に謝罪した。橋本首相の謝罪の手紙を慰安婦の方々に届けた。この他歴代の首相も謝罪した。このことを知っているか。知っているとすれば、韓国はなぜ謝罪を要求するのか。
②日本政府は慰安婦となった方々に対し、国民的な償い事業を行ない、償い金をお渡しした。日本政府はこの償い事業に資金面でも可能な限りの協力を行なった。そのことを知っているか。知っているならば、そのことについて韓国はどのような見解をもっているか。
③日本が慰安婦問題は法的には解決済みとしているのは、日韓基本条約で、請求権は条約締結までに判明している請求権も、また将来持ち出されるかもしれない請求権も解決済みであると両国が合意したからである。
 韓国政府が理由としている韓国憲法裁判所の判断と日本政府の法的解釈は異なる。日韓間で解釈が異なる場合、外交ルートで解決を求め、それでも解決しなければ仲裁手続きを求めることとなっているが、韓国政府は外交ルートで解決を求めただけではないか。

注 (イ)日韓請求権協定第2条1項は、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」と規定している。
(ロ)条約の解釈について意見が異なる場合、まず外交ルート、それで解決できなければ仲裁によるという解決方法を定めているのは請求権協定3条である。韓国の憲法裁判所の決定は2011年8月30日に下され、その理由とされたのは「日韓会談では協議されていなかったので未解決だ」ということであり、その際、同裁判所は「韓国政府が、日本政府と解決のための協議を行わないでいるのは、政府に国民の人権を守る義務を課している韓国憲法に違反する」と述べていた。日本政府は、韓国憲法裁判所の決定とは異なり、請求権の問題は複雑で長年交渉してもらちが明かなかったので、日韓両国が関係を正常化するに際して、協定2条のように「完全かつ最終的に解決された」ということで合意したのであり、条約交渉において議論されたか否かは問題とならないという解釈である。
(ハ)仲裁については、韓国政府も検討しているという話もあるが、まだ踏み切っていない。

④韓国政府が慰安婦問題は日韓基本条約の対象でないと主張するならば、その根拠は何か。いわゆる徴用工の問題についても韓国は日韓基本条約の対象外だと主張するのか。もし、例外を広げるならば、日本側にも請求権がありそれを持ち出す請求をする可能性もあるが、韓国側は応じる用意があるか。
⑤韓国側の「解決せよ」という主張だけでは内容が明確でない。韓国側は一方的に要求し、日本側が具体的に実行するということはありえない。日本が行動するには日韓政府間で合意が必要であるが、韓国政府は日本政府と正式に合意できるか。また、この合意では徴用工の問題はどのように処理するか。

 ①から④までは、これまで外交当局間でさんざん議論されてきたことであるが、韓国の大統領がこれらの重要事実をどの程度理解しているか、失礼ながら疑問なしとしない。さらに言えば、韓国にとって都合の悪いことは韓国外務省から上げていないのではないかという疑念もある。⑤は、韓国国内から、あるいはその一部から突き上げを受ける恐れがあると韓国政府としては日本政府と合意できないのではないかと思われるからである。
 慰安婦の方々には日本人の一人として心からお詫びするが、韓国政府にはしっかり対応してもらう必要がある。日本の行動から発した問題だが、その解決のため日本政府が行った努力を認めようとしない、あるいはそれでは不十分だと言うならば、韓国政府は自らも関わるべき問題としてとらえ、責任を持って対応する必要がある。韓国政府は観客席から日本に要求するだけでは当事者になれない。そのような姿勢はまさに韓国の憲法裁判所が問題視していることなのではないか。
 両国の首脳が事務方の調整を飛び越えて直接会談するというのはもちろん異例であり、不可能に近いかもしれないが、この問題の特殊性にかんがみれば、常識的でない方策も検討に値するのではないか。

2015.02.08

日韓国交正常化「50年」関係改善なるか 新談話の行方は?

今年は日本と韓国が1965年に正式の国家間関係(外交関係)を結んでからちょうど50年目に当たります。第2次世界大戦は1945年に終わりましたが、それから20年たってようやく日本と韓国の関係が正常化されたのは次のような事情からでした。
 日本は1910年に韓国(当時は「大韓帝国」)を併合し、統治を始めました。一方、日本は、米国、中華民国などいわゆる連合国と戦争し、1945年にこの戦争は終結しました。この時、日本の朝鮮統治も同時に終了しました。
日本と連合国の間の戦争状態の法的処理は1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約(以下、単に「平和条約」)で行なわれました。朝鮮は日本と戦争状態にあったのではなく連合国でありませんでしたが、連合国の側では戦争中から朝鮮の問題についても関心を持ち、1943年、米英中3国の首脳がカイロで行なった戦後処理に関する宣言では、「前記三大国(注 米英中のこと)ハ朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シ軈テ(注 「ヤガテ」と読む。意味は「間もなく」)朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス」と謳いました。要するに、連合国は朝鮮を独立させると宣言したのです。そして、平和条約はカイロ宣言に基づき、「日本国は、朝鮮の独立を承認して、済洲島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と定めました(第2条(a))。
カイロ宣言や平和条約が想定していた「朝鮮」とは朝鮮半島全体を統治する国家のことですが、日本が戦争に敗れると朝鮮半島の南部には連合国が、北部にはソ連が進駐して南北に分かれました。1948年、南部では「大韓民国」が、北部では「朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」)」が成立し、両政権は統一朝鮮の実現を目指しましたが、進展しませんでした。それどころか2年後には朝鮮戦争が勃発し、南北の対立は決定的になってしまいました。
日本が統一国家としての「朝鮮」を承認する見込みは遠のいてしまいましたが、ともに自由陣営に属する「大韓民国」とは関係を正常化することが必要だったので、1965年、日本と韓国は基本条約を締結して外交関係を樹立しました。
一方、北部の北朝鮮と日本の間では関係がないままの状態が、戦争が終わって70年になるのに続いています。韓国と北朝鮮が将来統一国家を樹立するか、それは両国の問題ですが、日本と北朝鮮は国交正常化を実現し、諸懸案を解決するための努力を一層強化していくことが必要です。

日韓関係正常化後、韓国は長足の経済成長を実現し、1996年には「先進国クラブ」と言われるOECD(経済協力開発機構)にも加盟しました。世界でも有数の、経済発展の勢いがある国として「タイガー」と呼ばれたこともありました。今や韓国はいくつかの分野で世界のトップクラスにあります。日本はこのような韓国経済の発展に協力してきました。現在、両国間の経済関係は緊密です。
文化面では、韓国は以前日本文化の流入を強く警戒し、制限していましたが、今は開放的になっています。また、日本側でも「韓流ブーム」がおきるなど、韓国に対する関心は高まっています。このような文化面での関係緊密化は経済関係とともに、両国関係を進展させる重要な要因となっています。
一方、歴史問題、とくに慰安婦問題などをめぐって日韓関係は非常に悪化しており、安倍首相と朴槿恵大統領の首脳会談は一度も行われていません。両国は植民地支配を終結させ正規の国家間関係を結びましたが、韓国人の国民感情には過去の歴史の影響を払しょくできない面があることを加害者であった日本として忘れたり、過小評価したりしてはなりません。慰安婦問題を解決するため日本はこれまでに努力を重ねてきましたし、韓国にはそのことを正しく理解してもらいたいのは当然です。それと同時に、日本は国際社会の状況にも注意しつつ、今後もこの問題の解決のため誠実に対応していかなければなりません。
日本と韓国は長い歴史を持つ隣国どうしであり、また、アジアの平和と安定に大きな責任を負っており、一刻も早く関係を改善することが必要です。韓国の朴槿恵大統領は、歴史問題について厳しい姿勢を維持しつつも、日本との関係改善を前向きに考える姿勢を示しています。安倍首相の側でも関係改善の糸口を探ろうとしており、両国の首脳が今後積極的に一歩を踏み出すことが期待されます。
今年は終戦70周年なので安倍首相は新しい談話を発表する考えです。20年前の50周年に村山首相は談話を発表し、戦争をしたのは誤りであった、日本は植民地支配と侵略によって多くの国に多大の損害と苦痛を与えた、反省しお詫びする、という極めて重要な表明を行ないました。これらのことは、今後日本が韓国を含め近隣諸国と善隣友好関係を増進していくのに不可欠の基本認識です。今年行なわれる安倍首相の談話においては、このような認識とともに、日本が戦後一貫して平和国家として歩んできたこと、また、今後アジア太平洋地域や世界に貢献していくことを示すことが期待されます。

(THEPAGEに2月7日掲載)

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