平和外交研究所

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朝鮮半島

2020.03.08

輸出管理に関する日韓対話

 日韓両政府は輸出管理に関する政策対話を3月10日、テレビ会議で実施すると発表した。ソウルで開くことになっていたが、新型コロナウイルスによる感染問題の影響を受けてテレビ会議に変更された。対話は昨年12月16日に東京で開催して以来約3カ月ぶりである。

 これに先立って、韓国の成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源部長官は3月6日、関係閣僚会議において、韓国は、日本が韓国に対する輸出規制強化の理由として挙げた事項を全て解消したとし、「日本政府に対し(対韓輸出規制強化を発表した)昨年7月1日以前の水準に戻すための措置を取ることを改めて促す」、「今後の輸出管理政策対話で実質的な進展と成果が導き出されるよう期待する」となどと発言した。
 
 日本政府は昨年7月に半導体・ディスプレー材料であるフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジスト(感光材)の3品目の韓国への輸出規制を強化し、同8月には輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」から韓国を除外した。日本側はその理由として、両国間の政策対話が約3年間開かれておらず、信頼関係が損なわれたこと、通常兵器に転用される可能性がある物資の輸出を管理する韓国側のキャッチオール規制の法的根拠が不備であること、輸出管理体制、人員の脆弱(ぜいじゃく)性を挙げていた。
 
 成氏は「この5カ月間、両国の輸出管理当局は課長級会議や局長級の政策対話などを通じて韓国の輸出管理に関する法規定、組織、人員、制度などについて十分に説明し、両国の輸出管理に対する理解を深めて十分な信頼を構築した」、「韓国のキャッチオール規制は正常に作動しているが、これに対する法的根拠をより明確にし、輸出管理の実効性を高めるための対外貿易法改正案がきょう、国会本会議で成立する予定だ」などと説明した。

 輸出管理体制、人員に関しては、昨年に産業通商資源部傘下の専門機関・戦略物資管理院の人員を14人(25%)増員した。同部の貿易安全保障に関する組織も「貿易安保課」から「局」単位の正規組織に拡大再編し、人員を拡充する計画だという。

 韓国政府が、日韓関係についての厳しい国内世論にもかかわらず、日本政府が指摘した諸問題を改善する努力を行ったことは積極的に評価できる。もちろん、韓国政府の説明は両国の専門家同士でよく検討する必要がある。10日の対話がそれに資することを望みたい。

 徴用工問題と日本側の輸出規制強化は関連があるかかねてから問題になってきたが、両国ともそのような関連を認めることなく、輸出管理問題も徴用工問題もそれぞれの分野内で解決を図るべきである。かりに、輸出管理の面で事態が進展すれば、徴用工問題だけが残ることになるが、だからと言って輸出規制問題を解決しないというわけにはいかない。徴用工問題に関し、韓国が日本の企業に対し強制執行に及ぶならば、日本側は報復するしかない。そうなることは決して望ましくないが、他の分野で決着をつけようとするのは、二国間関係の観点からも、また、国際的にも認められない。

2020.02.29

新型コロナウイルスによる感染-日韓比較

新型コロナウイルスによる感染について、日韓両国の状況は類似している面とそうでない面がある。医学的・疫学的な検証が必要な問題だが、両国の状況をざっと比較しておきたい。

中国からの入国規制(水際規制)については、日本と韓国は他の諸国と異なり、中国の地域を限定して入国を禁止している。日本は中国の湖北省(武漢市はその一部)と浙江省、それに加えて韓国の大邱(テグ)市と慶尚北道の一部地域からの入国も禁止している。韓国も湖北省に限定して入国を禁止している。

しかし、国内でとっている感染予防・コントロール措置は大きく違っている。韓国政府が取っている措置は日本政府に比べはるかに厳しい。中国から韓国に入国する人に対して、政府のモバイルアプリケーションをダウンロードさせ、健康情報を毎日報告させるほか、もし2日間、報告がなければ、政府から連絡をかけ、所在を追跡している。感染者は、個人情報を収集されるということを告知され、最近の移動経路の公開などについて拒否することは認められていない。

このような措置は、日本では必要でないと考えられたためか、人権侵害になることを恐れたためか、取られていない。なお、感染者の移動経路を追跡するのは中国などほかの国でも行われているが、韓国政府が国民に公開している情報はより具体的だという。

韓国政府の情報提供は日本よりはるかに詳細である。感染者の性別・国籍・年齢、感染経路、感染が確認された日、感染者のクレジットカードの利用明細、防犯カメラの映像、スマートフォンの位置情報、公共交通機関の利用履歴、出入国情報現在の入院機関、接触した人数まで国の機関のホームページで提供している。

このような詳細な情報提供について、米国の「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」紙は「感染者の追跡に21世紀的なデジタル手段を駆使していて、公衆保健の面で非常に興味深い」と評価する専門家の声を伝えている。ただし、手放しで称賛しているのでなく、ここまで踏み込んだ措置は欧米など多くの国々から「個人のプライバシー侵害」という論争を呼ぶ可能性があるとも指摘している。
なお、同紙は中国政府の対応に強く批判的であり、China is the real sick man of Asiaと過激な題の記事を掲載した。中国政府はその記事に関連して3名の同紙記者を国外追放処分としたので、米国政府は報復する考えを示した経緯がある。

ウイルス検査でも韓国は日本をはるかにまさっている。1日当たりの検査数は5千人~1万4千人であり、2月29日までに計7万8千人が検査を終えている。

日本では、2月18~24日間の7日間で計約6300件、1日平均約900件、検査が行われていたと加藤勝信厚労大臣が国会で答弁した。ざっと、韓国の10分の1以下である。日本の検査があまりにも少ないのは、民間の力を活用しないからであると指摘されており、検査当局の姿勢に問題があるともいわれている。医師が検査が必要と判断しても保健所に問い合わせることが必要という仕組みにも問題があるという。

日本政府は25日、新型コロナウイルス対策本部を開き、感染の拡大に備えた対策の基本方針を決定した。また安倍首相は28日、全国すべての小中学校や高校などに来月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう要請した。が、韓国が取っている措置には遠く及ばない。

新型コロナウイルスによる感染に関する緊急対策費の点でも、日本は153億円であり、 韓国の1800億円(26日時点。防疫など緊急対策費と経済対策費を含む)の10分の1以下である。日本の対策費は後に増額される可能性があるのでこれらの数字だけで完全な比較はできないが、それにしても日本の追加支出は少ない。なお、シンガポールは5000億円、米国2700億円を緊急対策費としている。

しかしながら、韓国では強力な予防・コントロール措置にもかかわらず、感染者数が20日頃より急増した。しかも1日の増加数が29日現在も大きくなっている。つまり、増加傾向がさらに激しくなっているのである。26日には1000人を超え日本(891人)を追い越した。

こうなった原因は、大邱市の新興宗教団体「新天地イエス教会」において感染が急増したためである。この教会と慶尚北道・清道の病院に関連した感染者の数は、27日午前の時点でそれぞれ731人、114人と、韓国全体の感染者数の大部分を占めている。しかし、韓国政府が強力な対策を講じているにもかかわらず、なぜこの教会を中心に感染者が急増したかは今のところ謎である。

2020.02.10

五島列島と韓国

 先日、五島列島へ旅行して、名所旧跡の説明が日本語、英語、中国語、それに韓国語で書いてあるのを見て感心した。日本語以外の言語でも説明する努力は全国的に行われているので珍しいことではないが、今でも日本語だけ、あるいは日本語と英語だけのところは少なくない。しかし、五島列島では、どこでも、生真面目に4つの言語で説明が書かれていた。

 もちろん、中国人や韓国人が多数訪れるからであるが、市町村の役場のほうでも4つの言語で説明するよう指導しているのだろう。そうでなければ、例外なく4言語で説明するようにはならないと思う。いずれにしても立派な「おもてなし」である。

 説明を読んでの感想は中国人と韓国人とでは大きく違っているはずである。名所旧跡の説明には、たとえば弘法大師が唐に渡り学んだことなど中国との関係がしばしば出てくるので、中国人は五島と中国との関係の歴史を知り、興味深いと思うだろう。中華の偉大さを想起する人もいるだろう。

 一方、五島の名所旧跡は韓国と関係がないので、説明に韓国関係の言及はなく、韓国人は第三国のことについての説明を読むことになる。それも興味深く思う韓国人もいるだろうが、自国についての説明を読む中国人とはまるで違った感想を持つだろう。なかには、歴史的怨念を思い出す韓国人がいるかもしれない。

 昔から韓国人は、東アジアで影響力があったのは中国やロシア、また、近代以降は欧米諸国や日本であり、韓国は常に影響を受ける国であったことに強い不満を抱いてきた。そのような背景を持つ韓国人は、五島の名所旧跡で説明を読むと、「また、中国と日本だけか」と思うかもしれないのである。このような韓国人の感覚は日本人には無縁なだけに、注意しておいて損はない。

 かと言って、韓国語の説明を止めた方がよいと言いたいのではない。むしろ逆であり、韓国とのご縁はできるだけ表に出し、アピールしたほうがよいと思う。

 五島と言えば教会群のイメージがあまりに強すぎて、遣唐使や中国との交易の歴史でさえかすんでしまうほどであり、韓国となるとさらにひどくて無関係だと思われているかもしれないが、実は、五島は韓国と無関係でない。

 若松島(上五島)の日島(ひのしま)というところには、中国および朝鮮との交易拠点があった(現存しているのは墳墓群のみ)という。

 15世紀、朝鮮通信使の一行に加わっていた申叔舟(しん しゅくしゅう、シン・スクチュ)は『海東諸国紀』の中で、日島の人が朝鮮と交易していたことを書き残しているくらいなので当時は重要な場所だったのだろう。位置関係を見ると、五島と朝鮮半島の間で交易が行われていたのはごく自然なことである。

 五島では今でも友人のことを「チング」と呼ぶが、これは韓国語だ。これに「ヨ」をつけて「チングヨ」ともいう。「友人です」という意味であるが、「ヨ」をもって「です」の意味を表すのは韓国語で普通の表現である。

 現在、日本と韓国との関係は悪化しているが、将来は何らかのきっかけで五島と韓国との交流が再び盛んになるかもしれない。かりに五島で韓国との関係についての研究が進み、その結果旅行者にも説明できることが出てくれば面白いことになる。韓国と言えば、何と言っても対馬だろうが、五島も韓国に近い。それに、五島ではいわゆる嫌韓意識は全く感じなかった。韓国に対して平常心で臨めるのは、徹底した韓国語での表記と並んで五島のアセット(財産)である。五島には可能性があると思う。

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