平和外交研究所

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朝鮮半島

2018.01.17

南北高官会談は朝鮮半島「非核化」につながるか

 南北両朝鮮の会談は足元がしっかりしないところもあるようだが、北朝鮮のオリンピック参加は実現する方向で進んでいる。THE PAGEに以下の一文を寄稿した。

「■対北朝鮮「融和」と「対立」の歴史
 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が新年の辞で、北朝鮮は平昌五輪に参加する用意があると発言したことから南北間の協議が始まり、9日には北朝鮮の五輪参加が合意されました。この結果、朝鮮半島では3月まで平穏な日々が続くことになったと思われます。

 そもそも南北間には「統一国家の実現」という究極の目標がありますが、現実の対話では、離散家族の再会、人道支援、スポーツ面での協力、南北の境界付近で発生した紛争の処理などが話し合われてきました。実際には対話と対立の繰り返しだったと言えるでしょう。たとえば、金大中(キム・デジュン)大統領は相手を温かく包む「太陽政策」で南北交流を進め、開城(ケソン)工業団地の設置、北朝鮮へのコメ支援などを行い、また、現代グループは北朝鮮と共同で金剛山の観光事業を開始しました。さらに、金大中氏は韓国の大統領として初めて平壌(ピョンヤン)を訪問し、金正日委員長との共同宣言では南北統一原則の確認をはじめ、離散家族、親戚の訪問なども合意しました。

 廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も北朝鮮との関係改善には熱心で平壌を訪問しました、しかし、李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵(パク・クネ)両大統領の時代はむしろ対立が目立ち、金剛山観光事業は中断され、また、開城工業団地も閉鎖されるなどしました。

 文在寅氏は廬武鉉大統領時代の側近であり、北朝鮮に対する政策面でも廬武鉉大統領に近いと言われています。

■北朝鮮の安全問題は解決できない中ロ
 9日の南北協議は北朝鮮のオリンピック参加問題が主たる議題でしたが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日の記者会見で、「私の任期中に北朝鮮の核問題を解決することが目標だ。朝鮮半島の非核化は、決して譲れない韓国の基本的な立場だ」などと非核化問題にかなり踏み込んだ発言をしました。これに北朝鮮は強く反発し、平昌オリンピックに参加しないこともありうることを示唆しました。

 北朝鮮は、韓国とは非核化の問題について話し合いをしようとしません。1950~53年の朝鮮戦争以来の経緯から、韓国でなく米国が主要な相手だと見ているからです。今回の文氏の発言については、やはり韓国を相手にしないことを、牽制の気持ちを込めて確認しようとしたのだと思います。

 北朝鮮は、北朝鮮の国家の存亡や安全保障を脅かしている米国に対抗するために核兵器やミサイルが必要という考えです。実際に米国が脅威か否かは議論があるでしょうが、米国は日本とともに北朝鮮を承認していないので、北朝鮮がそのような立場であるのは理由のないことではありません。また、北朝鮮は、米国がイラク戦争のように攻撃してくることを恐れていると言われています。つまり、北朝鮮の核問題はその安全をどう確保するかにかかっており、その問題についてカギを握っているのは米国だけなのです。

 北朝鮮の非核化を実現できるのは中国だという考えもありますが、中国はロシアとともに北朝鮮を国家として承認しており、北朝鮮にとって脅威でありません。中国やロシアは北朝鮮に対して非核化の説得をしたり、原油禁輸など経済制裁の強化により圧力をかけたりすることはできるでしょうが、北朝鮮の安全問題は解決できません。それは北朝鮮と米国との間の問題だからです。

■1992年に南北で朝鮮半島の非核化宣言
 韓国の場合は、中国やロシアと少し違っている点があります。1992年に、韓国は北朝鮮と共同で、朝鮮半島を非核化するという宣言をしました。この時、北朝鮮はまだ核を保有していませんでしたが、将来に向かって核を持たないと宣言したのです。しかし、その後、米国との関係は悪化し、北朝鮮は核開発を本格化させました。このように状況が変化したこともあり、北朝鮮は非核化問題について韓国と話さなくなったと思われます。

 しかし、米国は今回の南北会談に注目していました。一部では、南北間では非核化の話をしてもらいたくないという声が上がったこともありましたが、トランプ大統領は文在寅大統領から電話で説明を受け、上機嫌だったと報道されました。米国の姿勢はまだはっきりしない面がありますが、国連決議の実施の妨げとならなければ、南北間の関係が進むのはかまわないという考えだと思われます。

 今後については、容易に楽観的になることはできませんが、3か月間、緊張状態が緩和されることは最近なかったことであり、非核化に向けてもなんらかの進展につながることが期待されます。個人的には、米韓合同演習はオリンピック・パラリンピックが終了後ただちに再開するのでなく、可能な限り延期し、また、北朝鮮は核・ミサイルの実験を控えるのがよいと思います。

2018.01.11

慰安婦合意、韓国は何に反発しているのか?日本の今後の対応

THE PAGEに寄稿した後に韓国政府は新方針を発表しました。以下は、そのことを踏まえ加筆したものです。

「 慰安婦合意とは、長らく両国間の懸案であった慰安婦問題について、2015年12月28日、当時の岸田外相と韓国の尹外相との会談で達成された合意です。主要点は次の通りでした。

(日本側)
〇安倍首相が元慰安婦であった方々に、「心からおわびと反省の気持ち」を表明。
〇日本政府は、「全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる」ために10億円を拠出(すでに実行済み)。

(韓国側)
〇韓国政府は日本政府に協力(後に、韓国政府は慰安婦のために基金を新設し事業を開始)。
〇在韓国日本大使館前の少女像については、尹外相が、「韓国政府は,日本政府が公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」と表明(これはまだ実現していません)。

(両国)
〇この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認。
〇今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

 ところが、文在寅大統領は2017年5月に就任後、日韓合意の成立経緯を検証する作業部会を設置しました。韓国内の強い世論に押されたからです。具体的には、元慰安婦を支援する韓国挺身隊問題対策協議会などが中心になって対日批判の運動を広げ、形成された世論です。
 検証の結果は12月27日に発表されました。文在寅大統領はその翌日、日韓合意は「手続き上も内容上も重大な欠陥があったと確認された」とし、「両首脳の追認を経た政府間の公式的な約束という重みはあるが、この合意では慰安婦問題は解決されない」などと表明しました。さらに、康京和外相は、1月9日、新方針を発表し、「2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実は否定できない。日本政府に再交渉は求めない」としつつ、「韓国政府は10億円を基金に拠出し、日本政府が拠出した10億円の処理方法は日本政府と協議する」と説明し、さらに、「日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する。被害者の女性が一様に願うのは、自発的で心がこもった謝罪である」と述べました。

 このような韓国政府の対応は日本として承服できません。日本政府は韓国側に抗議するとともに、菅官房長官と河野外相は、合意の内容は変更してはならないこと、合意に従って解決を図るべきであること、国と国との約束は責任をもって実施しなければならないことなどをあらためて強調しました。

 韓国政府は、残念ながら、慰安婦問題に限らず前政権の決定を繰り返し批判・否定した過去があります。1965年の日韓請求権協定で両国民の請求権問題は解決されていたのに、元慰安婦に対する補償を求めてきました。また、米国との間でも、朴槿恵前政権が合意した高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備について変更を求めようとしたため米国を怒らせました。
 このようなことが起こるのは、韓国では世論の強い圧力を受けて政府が既定の方針を変更するからです。韓国政府は国民から信頼されていないと言わざるを得ません。

 韓国政府の新方針において、「日本政府に再交渉は求めない」と言いつつ、日本が拠出した10億円の取り扱いについて日本と協議するというのはまったく首尾一貫しない態度です。また、日韓合意で安倍首相が「心からおわびと反省の気持ち」を表明しているのに、さらに謝罪を求めています。このような韓国側の矛盾に満ちた態度に対して、日本政府としては、韓国政府がさらにどのような態度をとるか注目しつつ、合意に従って行動するほかありません。国家間の合意を順守するのは韓国の現政権にとっても利益であるはずです。

 慰安婦合意に関する韓国政府の対応には明らかに問題があり、日本は有利な立場にありますが、力で相手をねじ伏せるような姿勢は禁物です。慰安婦問題がある国は韓国だけでありません。また、米国などは直接の関係がなくても強い関心を抱いています。日本がバランスの取れた対応をしなければ、国際社会は一変して日本に批判的になるでしょう。
 日本では、かつてのように、駐韓大使を一時帰国させる考えが出てくる可能性もありますが、間違っている相手を正すのに何が最良か、国際的な感覚を失わずに慎重に検討する必要があります。」


 

2018.01.09

トランプ大統領の「対話」発言ーその3

 トランプ米大統領は1月6日、北朝鮮の金正恩委員長と直接対話をすることについて、「私は対話は良いことだといつも思っており、全く問題ない」と発言した。

 南北朝鮮間では、9日、ハイレベルの対話が行われ、平昌オリンピックへの北朝鮮の参加問題などが話し合われる。一般には非核化問題にも好影響を与えるかもしれないといった期待感が、どのくらい大きいかはともかく、広く持たれているようだが、南北対話から非核化問題が進むことはありえない。「南北対話」と「北朝鮮の非核化」は別の土俵で起こっていることであり、明確に区別して見ていく必要がある。したがって、また、米国の一部高官のように心配したり、韓国に警告したりする必要もない。

 トランプ大統領の発言は非核化に直接かかわってくる。しかも、日本の外交にとって深刻な問題になりうる。

 トランプ氏が、北朝鮮との対話について前向きの姿勢を大統領として語ったのは、今回で3回目である。最初は昨年4月末のCBSとのインタビューで、2回目はアジア歴訪中の11月、ベトナムでの記者会見であった。
要するに、トランプ氏は安倍首相に対しては「日本の立場を100%支持する」と言いつつ、他の場所では「対話」について前向きの姿勢を示しているのだ。しかも、今回は「対話は良いことだといつも思っている」と述べ、同氏の発言はその場限りのことでないことを明言した。

 一方、安倍首相は「圧力」一本やりであり、「対話は時期尚早」である。しかもこの立場は一貫している。
トランプ氏のように発言がコロコロ変わるのは決して褒められることでないが、外交のためには幅のあるほうが有利だ。状況に応じて臨機応変に動けるからだ。

 ともかく、トランプ氏は今後も北朝鮮の非核化問題に関する「対話」について発言するだろう。日米の立場は、日本政府の説明と違って、大事なところで違ってきつつあるのではないか。

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