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2014.09.26

金正恩の動向と最高人民会議

北朝鮮は9月25日、第13期最高人民会議の第2回会議を開催した。最高人民会議代議員選挙(我が国の総選挙)は5年に1回行われることになっているが、金正日時代は遅れ気味であった。金正恩第1書記の下で初めての第13期選挙は前任の任期が終了後の今年3月に規則通り開かれ、4月に最高人民会議が開催された。この会議は通常1年に1回開催されるが、北朝鮮労働党の指導が優先するのでラバー・スタンプ会議とみなされていた。しかし、今回は第13期として2回目であり、異例のこととして注目されている。
香港の大公報と文匯報は、この問題に関して韓国聯合通信が、崔龍海人民軍総政治局局長が4月26日解任されて黄炳誓に代わり、崔龍海は最近国家体育指導委員会委員長という閑職に追いやられたので、金正恩体制の中でこれら両人の地位がどのように変化したのか、黄炳誓が今次最高人民会議で国防委員会副委員長に就任するか、朴奉珠首相は留任するかなどが注目されると報道したことを転載している。
崔龍海は、金正日の葬儀時の序列は第18位であったが、その後急上昇し、国防委員会副委員長兼人民軍総政治局局長となり、金正恩の側近として実質上ナンバー2になっていた。しかし、去る5月には序列が下がり、黄炳誓の下位になっていたことが北朝鮮側の発表により明らかになっていた。病気が理由で、権力の中枢から遠のいた可能性もある。しかし一般的に、玉石混交の北朝鮮関係報道を中国の新聞が転載する場合は比較的確度は高いので、今回大公報紙や文匯報紙が報道したことは注目される。
また、『多維新聞』は、金正恩はこの重要会議に出席しなかったのみならず、9月9日の朝鮮民主主義人民共和国成立66周年記念中央報告大会にも出席しなかった、金正恩は6月には17回、7月には24回、8月には16回視察が報道されたが、9月には3日に李雪主夫人とともに牡丹江楽団の公演に出席して以来20日間報道されていないとコメントしている。
これらは事実らしい。ただし、昨日の北朝鮮中央テレビが放映した記録映画では、金正恩が「体が不自由にもかかわらず人民の指導を行っている」旨のナレーションがあったことが確認されている。病気か怪我かであろう。
この確認をしたのは日本のラジオプレスであるが、新華社もラジオプレスを引用して報道した(26日)。

2014.09.25

ウクライナに対するロシアの軍事的脅威

東部ウクライナでの親ロシア派とウクライナ政府の対立は現在も続いている。ウクライナのValeriy Heletey国防相は最近(8月末か9月初め)、ロシアは非公式のチャネルを通じてウクライナに対し、親ロシア派に対する攻撃を続けるならロシアは戦術核を使う用意があると何回か脅してきたとフェースブックに書き込んだ。9月1日のニューズウィーク誌等の報道である。
9月5日に停戦が成立したが、ロシアの脅威はまだくすぶり続けており、停戦合意違反の攻撃も行なわれている。同国防相は9月14日の記者会見で、ロシアの脅威に再度言及し、ウクライナとしてはNATO、とくに米英の軍事支援を必要としていると訴えた。そのなかで、十分な支援が得られなければウクライナとしては核兵器の開発を考慮せざるをえないという趣旨の発言をしたと報道された。ただし、この報道は一部の通信社に限られており、大手の通信社は取り上げていないようである。同国防相としてはNATOなどの支援が必要であることを強調するのが趣旨であったことは明らかであり、核開発に関する発言は弾みで出たものと取られたのであろう。
ウクライナの核開発はともかくとして、ウクライナがロシアから引き続き軍事的脅威を受けていることは明らかであり、ロシアがウクライナに対し非公式チャネルで核兵器を使用する可能性を伝えている可能性は高い。そうであれば、ロシアはこれまでウクライナに軍事介入をしていないと言い張ってきたが、みずからそれを否定しているのと変わらないのではないかと思われる。

2014.09.22

習近平の訪印

習近平主席の訪印に関し、インド、中国 英国などの諸報道をまとめてみた。要点は次のとおりである。

○モディ首相は8月30日から9月3日まで訪日して大きな成果を上げた後、9月17日から3日間、中国の習近平主席をインドで迎えた。モディ首相はさらに9月末、米国訪問を予定しており、5月に就任して以来積極的な外交を展開している。
○モディ首相は前任者のシン首相より外交活動を活発化させている。シン前首相は優秀な経済官僚・学者であったが政治力が弱く、与党の国民会議は外交センスに欠け、中国を恐れるあまり日本や米国など重要な国との関係がしっくりいかなかった。
○5月の総選挙でモディが勝利すると中国では中印関係の改善を期待する声が上がり、モディ新首相はインドのニクソンとも称された。つまり、ニクソン大統領が米中関係を打ち立てる礎を築いたように、モディ首相に期待感が高まった。中国は選挙直後からモディ首相に積極的に働きかけた。その背景には、米国が戦略的なリバランスを進め、中国に対して各国との連携を強めようとしているなかで、インドがそのなかに取り込まれるのを防ぐねらいがあった。
○習近平主席はこまやかな気配りを見せ、モディ首相の64歳の誕生日である9月17日から、しかも同首相の地元であるグジャラート州から訪問を開始した。習近平は、胡錦濤や江沢民が訪印したときと異なり、夫人とともにリラックスした雰囲気であった。
○モディ首相はグジャラート州の首相時代から中国に強い関心を持ち、5回訪中したことがある。これは他のどの国よりも多かった。しかし、中国に傾倒しているのではない。モディ首相が特に重視しているのは経済面での関係改善である。中国はインドにとって最大の貿易相手国であるが、対中赤字が近年拡大し400億ドルに達していた。シン前首相は中国からの投資受け入れに消極的であったが、モディ首相は一変して、「中国からの投資を獲得するためには全力を挙げる」と発言するなど積極果敢な姿勢を示した。
○中印関係の改善のためには経済関係が重要であることを中国側もよく認識し、習近平主席は100人以上のビジネスマンを帯同した。
今次訪印の結果、両国は12の合意を結んだ。中国は今後5年間に200億ドルの投資を行なうことに合意したが、この額については、2007年から2013年までの累積赤字である1690億ドルと比べ少なすぎるという見方もある。
○中国は今後、インドにおける鉄道の改善のために高速鉄道建設と鉄道駅の再開発のフィージビリティ調査を行なう予定である。両国の関係当局は行動計画を作成することになっている。
○経済面での関係改善が必要であるが、インドはその代償として軍事戦略面で態度を緩和することはない。インド内務省によれば、今年に入ってから216日の間に、中国兵によるインド領への侵入が334回起こっており、モディ首相が中国を「拡張主義」と呼んだこともある。インドは中国の軍事的影響を食い止めるためにもろもろの措置を取っている。スワラジ外相はごく最近、アルナーチャル・プラデーシュ(インドの最北東で中国と接する。インドが実効支配しているが、中国と争いになっている)に対するインドの主権を中国は認めるべきだと主張し、「インドが一つの中国に合意するなら、中国は一つのインドを再確認すべきである」とも語っている。
○インド洋における中国海軍のプレゼンスの増大はインドにとって懸念すべき問題となっており、中国はインド洋沿いに拠点を設けて「海のシルクロード(真珠の首飾りとも言われる)」の確保に力を入れている。習近平主席は訪印に先立ち、モルディブとスリランカを訪問し、両国の協力をとりつけた。インドにも協力するよう誘っているが、インドはまだ態度を決めかねている。
○両国は宇宙の平和利用のため協力することとなり、覚書を結んだ。

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