平和外交研究所

中国

2014.03.08

『明報』と中国の対香港政策

中国で全国人民代表大会(議会のこと)が開催中である。李克強首相が「政府活動報告」を行なったが、香港の扱いが注目されている。香港の新聞『明報』(3月6日付)はつぎの諸点を指摘し、中央の対香港政策に変化があるのではないかと論じている。
○政府活動報告の中に香港・マカオに関する言及は約160字あったが、「港人治港、高度自治」という言葉はなかった。これは過去10年来初めてのことである。
○歴代の首相は李鵬、朱鎔基、温家宝も皆「港人治港、高度自治」に言及していた。
○李克強はただ「一国両制」の方針は必ず貫徹し、「香港基本法を全面的に正確に実行する」と述べただけで、「高度自治」は言わなかった。
○中央政府の香港連絡事務所の主任によれば、「一国両制」は大きな概念であり、何でも含まれる、首相が「港人治港、高度自治」を言わなかったのは紙幅を節約するためであり、「港人治港はすでに含まれている」そうである。
○しかし、昨年の活動報告では香港マカオへの言及は43字であり、今年よりずっと少なかったが、「港人治港、高度自治」には言及していた。

『明報』は香港の新聞でありながら比較的中立の記事を掲載し、このブログでも何回か引用したことがある。しかし、今年の初め、劉進図編集長が解雇され、さらに2月26日に何者かによって刃物で襲われ重傷する事件が起こった。表向き『明報』と事件を結びつけるのは困難かもしれないが、どうも香港の言論空間には黒い霧が立ち込めている印象である。
『明報』をめぐる展開は、中国の対香港政策の観点でも、習近平政権の言論統制強化との関係でも注目される。

2014.03.04

習近平の権力集中

「中央ネット安全情報化指導小組」が2月28日第1回会議を開催したことが報道され、このような組織が作られていること、習近平がこの小組の組長、李克強と劉雲山が副組長となっていることが判明した。(大公網、同日)
習近平は、2012年11月に中国共産党第18回全国代表大会で中央委員会総書記に選出され、翌年3月には国家主席に就任。また軍事面においても事実上新政権の発足と同時に党と国家の中央軍事委員会主席に就任するなど順調に滑り出していた。
そして党大会から1年後の第3回中央委員会全体会議(3中全会)で新設された「全面深化改革領導小組(深改小組)」の組長に就任した。
さらに、同じく新設の「国家安全委員会(国安会)」の主席も兼ねることとなった。国安会は対外的な問題にも関わるが、国内秩序の維持をつかさどる武装警察や公安機関の元締めとなる。関係諸機関間の調整を行なう点では以前からあった中央国家安全領導小組と同様であるが、政策決定も行なう。
かくして習近平は、党総書記・国家主席であると同時に、新設の国政改革を進める機関と内外の安全を確保する機関の長となるなど権力を一身に集めた。
しかるに、今回の「中央ネット安全情報化指導小組」組長就任はさらなる権力集中である。習近平は昨(2013)年来、言論統制の強化を基本方針の一つとして取り組んできており、この小組の新設もそのためである。

2014.02.19

中国雑記 2月19日まで

○腐敗取締関係
海南省副省長の冀文林が調査を受けている(人民網0218)。
陝西省政治協商会議(非共産党系諸党派や団体をふくめる民意代表会議)副主席の祝作利も調査されている(新華網0219)。
なお、副部長(大臣)級以上で調査の対象になっている者はこの他にもいる可能性が大きい。
○年末から年初にかけ、北京、済南、瀋陽、南京、成都、蘭州各軍区、さらに海軍、第二砲兵隊(ミサイル部隊)、などでも大幅な人事異動があった(新京報2月18日など)。
○同じ頃、党中央でも組織部(人事を担当)、中央弁公庁(わが官房にあたる)、中央党校、中央党史研究室、中央文献研究室、中央编訳局(マルクス主義の研究や翻訳をつかさどる)などでも大幅な人事異動があった(大公網0213)
○1953-54年に起こった高崗事件について、最近出版された張明遠の『我的回憶』は今でも隠されてきたことを伝えているが、この事件について分かっていることは氷山の一角に過ぎない(共識網0214)。
○曽慶紅の息子曽偉はオーストラリアで巨額の投資をし、移民のビザを取得した。

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