平和外交研究所

ブログ

ブログ記事一覧

2019.07.16

対韓輸出規制に関する日韓事務レベル会合

 韓国向け半導体材料の輸出規制強化問題に関し、7月12日、日韓の事務レベル会合が開かれた。その内容を正しく、偏ることなく、隠すことなく伝えることが日韓双方に求められる。

 韓国政府(会合に参加した担当者と関係当局を含む)の姿勢には問題があり得る。というのは、日本の経済産業省は13日、会合後の韓国側当局者の発言が、会合において双方で合意した公表範囲を超えていたり、違っていたりして「遺憾だ」と在日韓国大使館を通じて韓国側に抗議したからである。

 日本側が問題視したことには、今回の会合を「協議」と呼ぶべきか否か、韓国側が規制撤廃を求めたか否かなどが含まれているが、これらは担当者以外にとってはさほど重要でない問題だ。韓国政府の姿勢はWTOなどですでに明らかになっているからである。

 ただし、会合の当事者が発表ぶりについて合意したことは、説明するのでなく、そのまま公表するほうが事実を正しく伝えるために望ましい。日韓双方について言えることである。

 そんななか、以下の韓国側報道には事実を客観的に伝えようとする姿勢が感じられる。ただし、この報道の基礎となった情報が韓国政府からリークされたとすれば問題であるが、報道機関の姿勢としては問題ないどころか、褒められてよい。

「中央日報7月15日付報道
日本政府の韓国に対する輸出規制強化措置に関連し、12日、東京で両国の課長級による初の実務会議が開かれた。この席で日本側は今回の輸出規制強化の根拠として3種類の理由を挙げた。

▼韓国の「キャッチオール(Catch All/戦略物資・民需物資を大量破壊兵器として転用する可能性がある国家に対する輸出規制)」制度が不十分という点、▼過去3年間で二国間協議が行われておらず両国間の信頼関係が損なわれている点、▼韓国企業が半導体材料3大品目に対する納品期限を短く要請していることに伴い、日本の輸出管理が難しくなっている--というのがその根拠だ。果たして合理的な理由だったのだろうか。日本側の主張をファクトチェックした。

◆2003年から16年間適用中の「キャッチオール制度」

まずはキャッチオール制度だ。日本側は会議で韓国のキャッチオール制度の運用が不十分だと主張しているが、その事例に対しては口を閉じた。ただし、フジテレビや産経新聞など日本メディアが、韓国が過去4年間に武器として専用可能な戦略物資を156回にわたり密輸出したと主張したことを考慮すれば、韓国の戦略物資統制の履行が不十分だという主張だと専門家は見ている。

しかし韓国は大量破壊兵器だけでなく在来式武器に対してもキャッチオール制度を適用している。2003年1月に該当の制度を導入して今年で16年になる。戦略物資管理院のリュ・セヒ制裁対応室長は「過去にイランなどに対して工作機械など多数の民需物品に対してキャッチオール規制を適用した事例がある」とし「秘密遵守義務を守る条件で事後調査をするか問題になる物資輸出を返還している」と説明した。

産業通商資源部関係者は「(キャッチオール制度により)輸出以降も民需物資などが武器に転用されそうな兆候が確認された場合、該当国家に再度許可を申請・報告書の提出をさせている」とし「年間10件余り審査を進めるなど日本よりかえってキャッチオール制度運用水準が高い」と明らかにした。

◆日本の経済産業省側と毎年会合…3月以降、二国間協議することで合意

2016年以降、二国間協議が中断されて信頼が損なわれたという主張はどうだろうか。戦略物資統制に関連した二国間協議は2008年から現在までソウルと東京を交互に計6回行われた。最後の協議は2016年6月に局長級で行われた協議だった。しかし2018年2月には日程だけ調整して実際の協議が行われなかった。このため2016年6月以降、二国間協議が実施されなかったという主張は正しい。

しかし韓国政府は「今年3月以降、二国間協議を持とうと昨年末すでに合意をしている以上、協議が中断されているわけではない」とし「これまで協議が行われなかったのは両者が相互に日程を調整したが合わなかったため」と明らかにした。一方の責任と見るのは難しいということだ。

二国間協議は行われなかったが、韓国側は2013~2018年まで毎年アジア輸出統制セミナーを開いて経済産業省と接触してきた。2016年と2018年にもソウルで産業通商資源部の貿易安保課長と経済産業省側が国連安全保障理事会議の対北朝制裁決議に関連して別にセミナーを持った。このため、協議がなくて両国の信頼関係が損なわれたとみることも無理があるというのが政府関係者の説明だ。

◆納期日、韓日企業間の問題…包括許可期間は日本の国内問題

韓国企業の短い納期要請による半導体材料の輸出管理問題は、原因と結果が別々に回っているというのが専門家の分析だ。今回の輸出規制品目に該当するフォトレジスト・高純度フッ化水素・フッ化ポリイミドは包括許可対象だ。政府に個別許可を経なくても日本企業が韓国企業に輸出することができるように日本政府が許可したものだ。更新周期は3年に一度であり、該当の手続きには90日余りを要する。

ところでこの許可は日本企業が日本政府から受けている。戦略物資管理院側は「このため韓国企業が日本政府に許可手続きを早く処理してほしいと求めるというような構図は成立しえない」と説明した。

もし日本側が言及した納期日を韓国企業が日本企業に要請したと解釈しても、これは企業と企業間の問題に該当するため、これを理由にホワイトリスト品目全体を個別許可に転換するのは行き過ぎだということだ。

一方、産業通商資源部は「日本が韓国をホワイトリストから外すための意見取りまとめ日が24日まで」とし「その後、閣議決定を経て公布した後、21日が経過した日から(ホワイトリスト排除が)公式化する」と明らかにした。このために産業部は、24日以前に、両国の輸出統制当局者間の会議を推進中だ。」

 中央日報の報道の引用は以上であるが、日本政府は輸出規制強化の理由として3品目をめぐり「不適切な事案」があったと主張している。これは何なのか。日本側は具体的な内容を明らかにしておらず、12日の会合でもこれまで以上の説明はしなかった。この中央日報の報道でもその点はなお不明である。
 
 一般論として、日本側が「不適切な事案」の内容を公表できないとしても不思議でない。その事案にはあまりにも機微な問題があるかもしれないことはわれわれ一般国民としても理解すべきである。
 
 しかし、韓国政府には説明が必要である。リークの危険もありうるが、「不適切な事案」があったか否かは日本側の措置の適否を左右する極めて重要な問題であり、日韓で問題を共有しなければならない。日本側が「何も説明できないが不適切な事案があった」というだけでは、国際的にも理解は得られない。この点に関しては、日韓双方とも周辺的なことは主張しているようだが、お互いに説得できていない。やはり本丸についての事実関係の共有が必要である。共有できなければ、あるいは共有できるようになるまでは、お互いに一方的な非難は差し控えるべきである。

2019.07.13

ホルムズ海峡をめぐる米・イランの非難合戦

 ホルムズ海峡をめぐって米国とイランの主張が食い違っており、真相はやぶの中であるが、将来自衛隊のホルムズ海峡への派遣問題にも発展する可能性がある、現段階で伝えられている情報を整理しておく。

〇日本などのタンカーへの攻撃。6月13日発生。

 米国は攻撃の責任はイランにあると非難し、革命防衛隊が関与したとする動画や写真といった「物証」を提示した。

 イランは同日、「米国の根拠なき主張を断固として認めない」として、米側の主張を真っ向から否定する声明を発表した。動画と写真については、イラン側は「いつ撮影されたものかもわからず、証拠にならない」などとして関与を否定。

 菅義偉官房長官は14日午前の閣議後会見で「背景も含めて、予断をもって発言することは控えたい」と言及を避けた。

 日本とドイツはイランの犯行である証拠について更なる調査を求めたとの報道もあったが未確認である。

 英国は米国に同調したが、国際的な支持は広がらなかったともいわれている。

〇6月20日、革命防衛隊が米海軍の無人偵察機「グローバルホーク」を撃墜。

 撃墜の場所について、イランは「領空侵犯をされた」とした。

 米国は「公海上空だった」と主張した。

 互いに「証拠」を出し合うも、議論は平行線のままだという。

〇イラン革命行動隊が英国のタンカーを拿捕しようとした?

 米CNNテレビは10日、米当局者の話として、中東のホルムズ海峡でイランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」の武装したボート5隻が同日、英国のタンカーを拿捕(だほ)しようとしたが、英海軍の艦艇が阻止して未遂に終わったと伝えた。
 イランのボートはタンカーに近づくと、航路を変更し、イランの領海付近で止まるよう要求。後方でタンカーの護衛にあたっていた英海軍のフリゲート艦が艦上で威嚇のために銃口を向け、口頭で警告すると、ボートは立ち去った。現場上空を飛んでいた米航空機がその様子をビデオで撮影していたという。
 今月4日にはイランからシリアへ原油を輸送していたとみられるタンカーが英領ジブラルタル沖で見つかり、ジブラルタル自治政府が英海兵隊員らと拿捕した。英国側は対シリア制裁に基づく行動で、イランを標的にしたものではないとしたが、イラン側は英国のタンカーを拿捕して報復することも辞さない構えを見せていた。

 英政府報道官は11日、同国の商業船をホルムズ海峡で、「3隻のイラン船が航路を妨害しようとした」と説明。大筋では報道と一致したものの、船の数が異なるほか、拿捕の意図までは踏み込んでいない。
 
 イラン側は報道や英国政府の主張を完全に否定。現地メディアによると、ザリフ外相が11日、テヘランでの会合で「革命防衛隊が否定すべきことではあるが、英国の主張はくだらないものだ」と強調。革命防衛隊の海軍部門も、「24時間以内に外国船舶に遭遇した事実はない」と発表した。
 
(疑問点)
 英国の発表では、イランのボートは近くに英軍艦がいるのに英国のタンカーに近づいたというが、もしそれだけであれば、イラン革命行動隊の行動はあまりにも幼稚ではないか。敵方の軍艦が近くにいるのに拿捕などしようとするか。
 イラン包囲網を築こうとしている中、イランが事件を起こせばますます国際社会に敵を増やすことになる。この点からもイランがタンカーの拿捕(だほ)を狙ったと断定するのは無理があろう。

2019.07.10

中国軍による南シナ海でのミサイル発射実験

 中国海軍は7月初め、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島周辺の人口施設からミサイルを発射した。米国防総省が提供した情報に基づき、3日の米メディアが報道した。中国政府はそのことを発表していないが、6月29日から7月3日にかけ、同諸島の北側海域で軍事訓練を行うとし、付近の船舶航行を禁じる通知を出していたので発射実験はその間に行ったとみられる。

 中国外務省の耿爽副報道局長は3日の会見で、実験へ直接の言及はしなかったが、「南シナ海に空母を派遣しているのは米国だ。誰が南シナ海の軍事化を進めて、波風を立てているのかは明らかだ」と述べ、米国を批判したという。

 ミサイルの発射実験については、2つの問題がある。

 1つは、発射実験は軍事目的であることだ。中国は南シナ海で陸地の造成や飛行場などの建設を進めた際、軍事目的でないと繰り返し説明していたが、そのような説明は真実でなかったことを今回のミサイル発射実験が証明したのである。

 もう1つの問題は、中国が政治的な意図から発射実験を行った可能性である。

 この点では、さらに2つの問題があり、第1は米国による台湾への武器供与との関連である。米政府は7月8日、台湾にM1A2エイブラムス戦車108両など22億ドル(約2400億円)相当の武器を売却することを承認し、米議会に通知した。
 台湾がかねてから強く欲しがっていた新型のF16V戦闘機についても、トランプ大統領は、非公式ではあるが、すでに売却を承認したという。これが事実ならば、戦車とは比較にならないほど大きな軍事戦略的な意義がある決定が行われたことになる。

 このような米国の動きに中国は強く反発した。中国外務省の耿爽副報道局長は9日の定例会見で「強烈な不満と断固たる反対を米側に伝えた。「主権と領土を守り抜く(中国の)決意を過小評価すべきではない」と発言している。

 第2は、香港で「犯罪人引渡条例案」に関し6月9日以降続いている激しいデモとの関連である。中国は不満であり、必要になれば強い態度で鎮圧することも辞さないことを武力をちらつかせながら香港に示そうとしたのではないか。

 台湾への武器供与も香港での激しいデモもミサイル発射実験とは別問題であるが、関連があるのではないかという仮説を立てることは必要だと思う。中国は1990年代の中葉、台湾の総統選挙の直前、台湾近海にミサイルを発射したことがあった。そのときも総統選とミサイル発射は関連していたのではないかと推測された。それ以来20年以上が経過したが、その推測が誤りであったこと示すものはない。中国が選挙結果を左右留守為発射実験を行ったことは今や常識になっている。今回も同様のケースではないかと考えるのは無理のないことであると思う。

 中国は大国であり、その軍事行動のもたらす影響力は大きい。中国は余計なお世話だと反発するかもしれないが、その行動には慎重であってほしい。

このページのトップへ

Copyright©平和外交研究所 All Rights Reserved.