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2014.02.06

台湾人意識

昨年(2013年)末台湾を訪問し、友人に助けてもらって何人かの要人との面会が実現した。非常に限られた範囲の会話であり、安易に一般化すべきでないが、台湾では「中国人」と区別して「台湾人」でありたいと考える人が増えていることが強く印象に残った。
昨年8月初旬に実施された(発表は8月12日)台湾の世論調査によると、「台湾人と呼ばれたいか、それとも中国人と呼ばれたいか」という質問に対して、82.3%が「台湾人」と答え、「中国人」と回答したのはわずかに6.5%であった。
この調査は、2012年4月に設立された「台灣指標調查研究股份有限公司」、略して「台灣指標民調」、英文の略語はTISRによって行なわれたものである。この会社が設立される以前は、テレビ局や雑誌(「遠見雑誌」)などによって2003年から調査が行なわれており、TISRの調査は会社設立以前(2003年以降)のデータと比較が可能となっている。ただし、質問の仕方がまったく同じかなど、確かめる必要はある。
TISRによる世論調査はかなり客観性を追求しようとしていることが窺われる。台湾人の帰属意識については、同じ調査で、「台湾人96.5%」「中華民国人85.3%」「中華民族74.1%」「アジア人72.3%」「華人69.8%」「中国人43.5%」「中華人民共和国人7.5%」という結果になっている。全部足すと100%をはるかに超えるのは、複数の回答をしてもよいことになっていたからであるが、台湾人は複数の帰属意識を持っているので、このように質問するのは事実をそのまま反映させるのに有効である。この複数回答は政治的にも興味深い内容を含んでおり、本格的な研究に値するが、今日はこの問題に入らない。
この調査にはもう一つ、「台湾人とよばれたいか、中国人と呼ばれたいか」という質問があり、複数の回答は認めず、二者択一的に回答するよう求めていた。これはよく考えた結果であると思う。「台湾人」であり、また同時に「中国人」であるという認識を持つ人は多数いるので、前段のようにそれを調査結果に反映させることができ、客観的である。しかし、その帰属意識は「一つの中国」論や、共産党や国民党の主張など政治の影響を受けている。他方、後者の質問のように複数の帰属意識を持つ者に対しても選択を強要してどちらがよいかを選ばせるのは、政治や経済の影響はともかく、心理的、文化的にはどちらがよいか態度表明を求めるものであり、まさにこの点は台湾問題のカギであり、台湾人のほんとうの感情を反映させるには有効な方法であると思われる。
ちなみに、この質問の直訳は「台湾人、中国人の呼称のうちより感情があるのはどちらかを問われると(当詢及民衆対台湾人、中国人哪種称呼比較有感情時、、、」であった。
さらに、この世論調査は、この質問に対して「台湾人」と答えた者が2003年には61.5%であったのが、2013年は上記のように82.3%に増加していることを指摘している。これまた興味深い事実であり、なぜ増加したのかが問われる。
中台関係を大きく変化させたのは中台経済関係の進展であるが、この関係で2003年から2013年の間にはさほど変わったことはなさそうである。
一方、政治的には、2003年は第1期陳水扁政権の後半で、スキャンダルなどが噴出したことが台湾人の意識に影響し、台湾人であることを表に出すのに抵抗が生まれていた可能性がある。
他方、2013年は国民党が民進党から政権を奪い返して間がない時点であり、その意味ではむしろ「中国人」意識が強まっても不思議でないと考えると、上記に紹介した世論調査の結果は逆になっている。もしそうだとすれば、それはいかなる理由によるのか。このようなことも含め、台湾人の意識変化には今後一層の注意を払う必要性がありそうである。今回あった台湾の人たちも、この調査結果に強い関心を示しつつ、その背景理由については格別の説明はなかった。

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2014.02.05

江沢民派と胡錦涛・習近平の争い

2月4日の多維新聞は、習近平が力を入れている反腐敗運動の背景に中共政権内部、とくに胡錦涛と曾慶紅など江沢民派の間の権力闘争があることを、以前に報道されたことなどをまとめて紹介している。一部の内容については事実か否か疑問の余地もあるが、この種の問題については即断することなく時間をかけてフォローしていくべきものと思われる。

○前政治局常務委員の周永康はすでに死に体である。規律検査の第1号はその背後の大物、曾慶紅とその家族である(注 このことは昨日の「中国雑記」にも紹介した)。
○2007年、第17回党大会に際して、曾慶紅とその「政治仲間(政治朋友。注 江沢民であろう)」は、第1期の任期を終える胡錦涛は留任せず、曾慶紅に譲るべきだと主張したため、争いが生じた。
○曾慶紅は2002年の第16回党大会後、政治局常務委員と中央書記処書記の地位を利用し、胡錦涛に立てつき、指示を出すのを妨害した。胡錦涛はこれを問題視して曾慶紅を攻撃することにした。胡錦涛は曾慶紅の家族による汚職の事実を調べ上げ、党内で味方を増やして曾慶紅にその要求を諦めさせた。
○曾慶紅が要求を諦める代わりに出した条件は、賀国強と周永康を政治局常務委員に入れることであり、9人の常務委員のうち江沢民派は呉邦国、賈慶林、李長春、賀国強、周永康の5人となり多数を占めた。
○この結果胡錦涛・温家宝コンビは重要問題について政令が出せなくなり、国内では「胡温政令不出中南海」と揶揄された。
○胡錦涛が軍権をほんとうに掌握したのは第18回党大会近くになってからである。
○17回党大会では、江沢民派は薄熙来を常務委員にしたかったが、党内で支持が弱く実現しなかった。その代わりの妥協として習近平を認めた。江沢民や曾慶紅には、いずれ時が来れば習近平に迫って権力の明け渡しを要求する、場合によっては武力を行使してでもそれを実現しようという考えがあった。
○習近平は腐敗問題で曾慶紅や周永康をきびしく追及しており、三中全会で最高権力機関である「国家安全委員会」を設立したのも江沢民派の牙城であった「政法委員会」を徹底的に破壊するためである(注 胡錦涛もこの委員会を解体しようとしたと言われていた)。

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2014.02.04

中国雑記 2月4日まで

○香港の雑誌『開放』によると、中央規律検査委員会の「第1号専案」として調査の対象になっているは温家宝前首相でなく、「石油閥の王者」と綽名されている曾慶紅前国家副主席であり、習近平と王岐山は温家宝を極力かばったそうだ。
「2号専案」は周永康関係である。これを担当している小組では500人が使われており、そのトップは公安部の傅政華副部長である。
(多維新聞2月1日)
(注 温家宝前首相はその夫人が噂に上っている。周永康に関する報道、噂は数知れない。)

○中央組織部(注 人事を担当)は最近、頻繁に条例や指示を発出している。1月15日には「幹部任用条例」を、21日には「幹部任用工作の監督の強化に関する意見」である。後者の「意見」は幹部を任用する場合に、不正を正さなければならないことを厳しく命じている。
(注 すでに任用された者の汚職が問題であるが、任用する際から公正に人事を行なうべきだということであり、習近平政権が力を入れている反腐敗運動の一環である。)

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